酒が弱い人の飲酒は危険!? 胃がんリスク高める【国際共同研究】
国立がん研究センターなどの研究グループは、「アルコールを体内で分解しにくい体質の人が飲酒をすることで起きる遺伝子の変異が、びまん型胃がんの発症リスクを高める可能性がある」と発表しました。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
研究グループが発表した内容とは?
国立がん研究センターなどの研究グループが発表した内容について教えてください。
甲斐沼先生
今回紹介する研究は、国立がん研究センターや東京大学などの研究グループが、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)における国際共同研究としておこなったものです。
胃がん全体の3割を占める「びまん型胃がん」について、日本や中国、韓国などの胃がん患者1457人を対象に大規模な遺伝情報の解析をおこない、胃がんと関連のある遺伝子の変異を探しました。その結果、アルコールを体内で分解しにくい体質の人が飲酒をすることで「SBS16」という遺伝子が変異し、びまん型胃がんの発症リスクを高める別の遺伝子の変異と関連していました。なお、びまん型胃がんと飲酒との関連が遺伝情報の解析で示されたのは世界で初めてです。
研究グループは「今後、飲酒と関連するゲノム異常がどのように発生するのかを詳細に検討することで、びまん型胃がんの予防につなげていくことが期待されます。これらのデータは、今後日本人における胃がん治療法開発や予後改善に貢献することが期待されます」とコメントしています。
研究がおこなわれた背景は?
今回の研究がおこなわれた背景について教えてください。
甲斐沼先生
胃がんは病理組織学的に、大きく「腸型」と「びまん型」に分類され、内視鏡や手術による切除や細胞障害性抗がん剤治療に加えて、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤によって治療がおこなわれています。今回紹介した研究の対象になったびまん型胃がんは、未だに予後が不良で、有効な治療法の開発が望まれていました。また、びまん型胃がんの発症要因についても明らかになっておらず、予防に向けた原因解明が強く期待されているのが現状です。
今回の研究は、国際がんゲノムコンソーシアムにおける国際共同研究の一環としておこなわれ、大規模ながんゲノム解析によって、新たな治療薬や発がん要因の同定を進める研究が実施されました。胃がんや肝臓がん、胆道がんといった日本やアジアに多いがんについては、これまで日本の研究チームから多くの研究成果を発表しています。
発表内容への受け止めは?
今回、国立がん研究センターなどの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
国立がん研究センターの柴田龍弘分野長らのグループは、世界各国およそ1500人の胃がん患者を対象に大規模な遺伝情報の解析をおこないました。飲酒をすることで起きる遺伝子の変異が発症リスクを高める遺伝子の変異を誘発して、びまん型胃がんにつながる可能性が示されたと報告しました。
びまん型胃がんと飲酒との関連が遺伝情報の解析で示された今回の研究内容は世界で初めてであり、本研究の結果がびまん型胃がんの予防法や新たな治療法の開発につながる可能性があります。
また、実際にびまん型胃がんの発症予防に活かすためには、具体的にどれくらい飲酒をすると危険なのかなどの観点を明らかにすることが重要であり、そのために更に詳細な解析を実施して深く研究精度を追究して進めていくことが期待されます。
まとめ
国立がん研究センターなどの研究グループが、「アルコールを体内で分解しにくい体質の人が飲酒をすることで起きる遺伝子の変異が、びまん型胃がんの発症リスクを高める可能性がある」と発表したことが今回のニュースでわかりました。胃がんは日本でも患者数が多いがんなので、今回の発見は注目を集めそうです。