新型コロナワクチン接種後死亡 59~89歳の男女10人が新たに救済認定
2月10日、厚生労働省の分科会は新型コロナウイルスワクチン接種後に死亡した男女10人について、国の救済制度に基づいて死亡一時金などの支給を決定しました。救済制度が認められたのは、今回の決定で合計30人となりました。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
今回のニュースの内容は?
厚生労働省の分科会が新たに認定したワクチン接種後に亡くなった人への一時金支給についての内容を教えてください。
甲斐沼先生
厚生労働省の分科会は2月10日に分科会を開催しました。分科会では、新型コロナウイルスワクチンの接種後に死亡した59歳から89歳の男女10人に対して、新たに国の救済制度の対象とすることを決めました。救済制度による死亡一時金の支給が認められたのは、今回の決定で合計30人となりました。
死亡した10人のうち、59歳の女性は「くも膜下出血」を発症して死亡しました。この女性に基礎疾患はなかったとのことです。また、そのほかの9人は、ワクチンの接種後に「脳出血」などで死亡したとのことです。9人のうち7人は高血圧症や糖尿病などの基礎疾患があり、厚生労働省は死亡診断書やカルテの記載などを踏まえて、因果関係が否定できないと判断したとしています。
亡くなった人たちが接種したワクチンの種類や接種回数などについては、明らかになっていません。また、厚生労働省は死亡例も含む接種後の健康被害について、2月10日現在で合計6219件の請求を受理しており、そのうち1622件で医療費の支給を認めています。
新型コロナウイルスワクチンの救済制度とは?
新型コロナウイルスワクチンの救済制度について教えてください。
甲斐沼先生
新型コロナウイルスワクチンの救済制度は国の予防接種健康被害救済制度に基づくもので、ワクチンの副反応によって健康被害を受けた場合、ワクチンと健康被害の因果関係が審査会で認められたときに救済がおこなわれます。
救済内容は、健康被害の度合いやワクチンの区分によっても異なりますが、今回は死亡例だったため死亡一時金の給付となります。また、死亡一時金のほかに、医療費の支給、障害年金、遺族年金の給付などがあります。
ワクチンによる健康被害救済の申請は、接種を受けたときに住民票登録をしている市町村でおこないます。申請には、各種書類のほかにワクチン接種前後のカルテなどが必要になる場合があります。
今回のニュースへの受け止めは?
新型コロナウイルスワクチン接種後の死亡について、「因果関係が否定できない」として死亡一時金が認められた人数が合計30人になりましたが、こちらの受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐっては、接種した後に死亡した人について因果関係が否定できないと国が認定した場合において予防接種法に基づいて死亡一時金が支給されます。これまでに20代から90代までの男女20人が認められてきました。2023年2月10日、厚生労働省は新型コロナウイルスワクチン接種後にうっ血性心不全やくも膜下出血、突然死などで亡くなった59歳から89歳の男女10人に関して救済対象とすることを新たに決定しており、対象者に関しては死亡一時金(4420万円)と葬祭料(21万2000円)の請求が認められる結果となりました。
新型コロナウイルスワクチンの健康被害を審査する厚生労働省の「第156回疾病・障害認定審査会 感染症・予防接種審査分科会」はワクチン接種に伴う救済認定にあたって、それぞれの事例ごとに厳密な医学的な因果関係までは必要としないという立場をとっています。基本的には、「ワクチン接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も救済対象となり得る」との考えに基づいて審査しているため、今後も救済認定される事例が増加する可能性も想定されます。
まとめ
2月10日、厚生労働省の分科会は新型コロナウイルスのワクチン接種後に死亡した男女10人について、国の救済制度に基づいて死亡一時金などの支給を決定したことが今回のニュースでわかりました。既にワクチン接種は普及しつつあるので、今後は後遺症や副反応についての情報も引き続き注視する必要がありそうです。