「医療提供体制」警戒レベル1段階引き下げ「新型コロナ感染拡大傾向なし」東京都
2月2日、東京都は新型コロナウイルスの感染状況の分析などをもとに、医療提供体制の警戒レベルを最も深刻なレベルから1段階引き下げることを発表しました。このニュースについて郷先生にお話しを伺います。
監修医師:
郷 正憲(医師)
医療提供体制の警戒レベル引き下げとは?
今回、東京都が発表した医療提供体制の警戒レベルの引き下げについて教えてください。
郷先生
2月2日、東京都は新型コロナウイルスの「感染状況」と「医療提供体制」について、専門家によるモニタリング項目の分析結果を発表しました。東京都によると、新型コロナウイルスの新規感染者数は3週間連続で減少しており、拡大状況ではないとのことです。また、入院患者数も継続して減少傾向であるとのことです。これらを踏まえて東京都は、医療提供体制の警戒度を4段階のうち最も高い「医療体制がひっ迫している」から、1段階低い「体制強化が必要な状況である」に引き下げました。同レベルになったのは、2022年12月中旬以来、およそ1カ月半ぶりになります。
医療機関のひっ迫状況は?
現在の東京都の医療機関のひっ迫状況について教えてください。
郷先生
東京都の新型コロナウイルスによる入院患者数は、2月1日時点で2498人でした。1月25日の3161人から663人減少しています。しかし、新型コロナウイルスによる入院患者数は減少傾向にあるものの、一般の救急患者の受け入れなどもあり、救急医療は未だひっ迫状況にあります。
なお、東京都は1月31日に新型コロナウイルスの確保病床数を約7300床から約5000床に減少させています。特に冬の時期は、ほかの季節と比べて救急搬送が多くなりやすい傾向にあるため、新型コロナウイルスと通常医療のバランスを図りながら、医療提供体制を整えていく必要があります。
医療提供体制の警戒レベル引き下げについての受け止めは?
今回発表された医療提供体制の引き下げについての受け止めを教えてください。
郷先生
医療体制の変化は、これまでも感染状況に合わせておこなわれてきました。「感染者が増加している、あるいは増加すると考えられる場合にはレベルを引き上げる」「感染者が減少している、あるいは減少すると考えられる場合にはレベルを引き下げる」という対応を繰り返しています。
今回の引き下げも、これまでのように感染者数の減少を根拠に決められたものです。たしかに、現時点では感染者数が減少しており、入院を必要とする患者数は減少しています。しかし、毎年冬は心筋梗塞や脳梗塞をはじめとする心血管系疾患を筆頭に、様々な救急疾患が増加する時期でもあります。
これまでのコロナ禍での冬の時期は、外出が制限されていたため救急疾患も減少していました。しかし現在は、外出制限もなく多くの人が元通りの活動をしているため、救急疾患も過去の患者数程度まで増加すると考えられ、医療提供体制を新型コロナウイルスばかりにリソースを割くわけにはいかないという事情もあります。
実際、数週間前までは新型コロナウイルスによる発熱患者の増加に加えて、救急患者も増加したため、救急搬送や救急受け入れが危機的なほどひっ迫していました。新型コロナウイルスに対する医療体制を少し緩和して通常医療を拡大することで、ひっ迫を緩和する効果が得られると考えられます。少しでも多くの人の命を救うため、医療を適切に供給するための方策と言えるでしょう。
なお、今回のこの決定は2023年5月に予定されている、新型コロナウイルスの感染症法上の分類5類への変更とは無関係です。5類になったとしても感染力や重症化率が変わるわけではありませんから、その時点で必要な医療体制がどのようなものになるのかは今後検討されることになります。
まとめ
東京都は、最新の新型コロナウイルスの感染状況・医療提供体制をもとに警戒レベルを最も深刻なレベルから1段階引き下げることを発表しました。救急医療は未だひっ迫状況にあることから、今後も新型コロナウイルスと通常医療とのバランスを図っていくことになりそうです。