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新型コロナによる臨時休校明け、子どもの「睡眠時間」に変化 夜型タイプの子どもは特に注意

 更新日:2023/03/27
臨時休校から学校再開することで子どもの睡眠習慣が変化

東京大学の研究グループは、新型コロナウイルスの流行によって臨時休校になった子どもたちを対象に調査を実施した結果、「学校が再開したことにより、子どもたちの睡眠習慣が大きく変化していた」と発表しました。こちらのニュースについて濵﨑医師に伺いました。

濵﨑 秀崇 医師

監修医師
濵﨑 秀崇(医師)

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東京大学理学部卒業、広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院、国府台病院勤務を経て、2017年4月より「濵﨑クリニック」に勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本体力医学会評議員。

研究グループが発表した内容とは?

今回、東京大学の研究グループが発表した内容について教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

今回は、東京大学のグループが「臨時休校から学校再開後の小中学生の睡眠習慣と食事摂取量の変化」と「臨時休校中の睡眠と食事の時間的パターンの違いによる変化」を調べることを目的におこなった研究について紹介します。研究対象は、全国14都道府県の47の学校・団体に所属する8~15歳の小中学生4084人になります。

研究グループの分析により、子どもたちは起床と朝食の時刻による4つのパターンに分類されました。6時頃に起床して6~7時頃に朝食をとる「非常に早い」グループ、7時頃に起床して7時頃に朝食をとる「早い」グループ、7~8時頃に起床して8時頃に朝食をとる「遅い」グループ、8~10時頃に起床、9~10時頃に朝食をとる「非常に遅い」グループに分けられました。

休校中と学校再開後を比較すると、起床時刻は休校中より1時間早くなり、睡眠時間は0.94時間短くなりました。また、食事摂取量は、チアミン、ビタミンB6、カリウム、果物類、乳製品類で増加がみられ、砂糖・菓子類、清涼飲料類で減少がみられましたが、変化はそこまで大きくありませんでした。休校中に起床と朝食の時刻が遅いパターンの子どもの起床時刻、睡眠時間、清涼飲料類の摂取量の変化は、より大きい傾向がみられました。

研究グループは「感染症や災害などによる長期の休校が起きた後に学校が再開すると、夜型に近いタイプの子どもは睡眠習慣の変化に大きな影響を及ぼす可能性が示唆された」と述べています。

発表内容の受け止めは?

今回、東京大学の研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

研究の限界として著者らも述べていますが、被験者はウェブサイトやソーシャルメディアを使ってリクルートされた子どもたちで、本研究の結果がほかの子どもたちに一般化できるかは不明です。また、子どもに対して質問紙を使った調査をおこなっており、種々のバイアスが研究結果に影響を与えている可能性もありますので、結果の解釈には注意する必要があります。

その一方で、「学校に通う」という子どもたちにとって当たり前のことが睡眠習慣の変化と関連していることを日本発のエビデンスとして示したことは、非常に有意義だと思います。パンデミック時に学校閉鎖をおこなうことの是非に関してはまた別の議論があると思いますが、子どもたちの生活リズムに大きな影響を与え得るイベントが起こった際、参考となる知見だと考えます。

臨時休校時、子どもの健康維持に重要なことは?

新型コロナウイルスなどで学校が臨時休校になってしまった場合、家庭で子どもの健康維持をするために重要なことはなんでしょうか?

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

最近のシステマティックレビューでは、パンデミックによって子どもたちの睡眠時間が短くなることに加え、就寝時間が遅くなり、睡眠の質が下がることが報告されました。(※1)また、学校閉鎖やロックダウンによって子どもたちの食習慣が悪化して、スナック菓子や清涼飲料水の摂取量が増えることも報告されています。今回のパンデミックのように、いつ新たな感染症が流行して学校閉鎖などの処置が取られるか分かりません。親世代が子どもたちの生活習慣の変化に注意して、彼らの健康を守る必要があります。家族で就寝時間を決めるといった工夫と取り入れ、夜は早く寝るようにしたり、スナック菓子や清涼飲料水を家に置かないようにしたりしましょう。さらに、パンデミックによって子どもたちの運動量が減ることも分かっています。(※2)「体に良い食事を摂り、家の中でもよく動き、夜はぐっすり眠る」、そのようなライフスタイルを日ごろから心がけましょう。

(※1)J Sleep Res. 2023;32(1):e13720. doi: 10.1111/jsr.13720.
(※2)JAMA Pediatr. 2022;176(9):886-894. doi: 10.1001/jamapediatrics.2022.2313.

まとめ

東京大学の研究グループは、新型コロナウイルスの流行によって臨時休校になった子どもたちを対象に調査を実施した結果、「学校の再開により子どもたちの睡眠習慣が大きく変化していた」と発表したことが今回のニュースで明らかになりました。今後も新型コロナウイルスなどの影響で学校が休校になる可能性はあるので、こうした研究は参考になりそうです。

この記事の監修医師