新型コロナ後遺症、約20人に1人が発症から1カ月経っても継続「ワクチン接種でリスク減少」
12月14日、大阪大学と豊中市などは新型コロナウイルスに感染した対象者4000人についての後遺症に関する調査データを報告しました。このニュースについて郷先生にお話しを伺います。
監修医師:
郷 正憲(医師)
新型コロナウイルスの後遺症とは?
新型コロナウイルスの後遺症の症状について教えてください。
郷先生
新型コロナウイルスの後遺症は、正式には「罹患(りかん)後症状」と言います。新型コロナウイルスに感染した後、感染性は消えたものの一部の方に長引く症状がみられるケースがあります。「罹患してから咳などの症状がずっと続く場合」「回復した後に脱毛などの症状が出る場合」どちらのケースも、ほかに明らかな原因がなければ罹患後症状(後遺症)であると考えられます。
後遺症の症状は人によって様々ですが、代表的なものとして倦怠感、息苦しさ、嗅覚異常、脱毛などが挙げられます。 また、新型コロナウイルスの後遺症については、世界中で研究がおこなわれています。現時点では不明な点も数多くありますが、多くの場合は時間経過とともに後遺症の症状は改善していくと考えられています。
新型コロナウイルスの後遺症の調査データから分かることは?
今回大阪大学などが発表した新型コロナウイルスの後遺症の調査データからは、どのようなことが分かったのでしょうか?
郷先生
12月14日、豊中市、大阪大学大学院医学系研究科、Buzzreachの共同調査による新型コロナウイルスの後遺症についてのデータが発表されました。この調査は、豊中市民を対象に、新型コロナウイルスに感染した4000人についての後遺症データを集めたものです。
この調査で「後遺症(自宅療養や隔離期間が解除になった後の何らかの症状)があった」と回答した人は47.7%にのぼりました。また、発症後1カ月経っても症状が続いた人は5.2%、100日で2.5%となりました。発症後1カ月経っても続いていた症状として、最も多かったのは「倦怠感」でした。次いで「日常生活に支障」「脱毛」「咳」などの症状が挙がっています。
ほとんどの人は時間の経過とともに症状が改善したことが分かりますが、発症から1カ月経っても20人に1人が辛い後遺症に悩まされているという事実は軽視できません。
新型コロナウイルスの後遺症を防ぐためには?
新型コロナウイルスの後遺症になりやすい人にはどんな特徴があるのでしょうか? また、後遺症を防ぐことはできるのでしょうか?
郷先生
豊中市の調査データによると、新型コロナウイルス感染後に重症だった人は軽症だった人と比較して、約5倍も後遺症を経験しやすいことが分かりました。さらに、軽症の人でも後遺症が現れている人が一定程度いることが判明しています。これはワクチン接種後の後遺症を発症している人より圧倒的に多い人数でもあります。
さらに、一度後遺症がおさまっても数年後に後遺症を発症する遠隔期の後遺症についても、まだ分からない部分があります。例えば、麻疹ウイルスは、発症後数日で状態が改善してもワクチン接種をしていなければ5~10年後に「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という脳炎症状を引き起こします。新型コロナウイルスが同じような遠隔期の症状を起こさないということは保証できませんから、やはり「ただの風邪」ではなく、「かからないに越したことはない」感染症であることには間違いありません。そのため、予防に努めることが非常に重要であると言えます。
基本的感染対策をおこなうことはもちろんですが、重要なのはワクチン接種です。今回の調査でも、ワクチンの接種回数に応じて後遺症リスクは減少する傾向がみられました。これは海外の調査報告とも一致しており、後遺症のリスクを下げるためにはワクチン接種が有効であると考えられるでしょう。もちろん感染しないことが一番ですので、基本的な感染対策を続けながら、ワクチン接種により重症化リスク・後遺症リスクを下げることを推奨します。
まとめ
新型コロナウイルスの後遺症は時間の経過とともに症状が改善していくケースが多い傾向にあります。しかし、約20人に1人は発症から1カ月経っても辛い症状に悩まされていることが今回のニュースで分かりました。新型コロナウイルスの後遺症を防ぐためには、基本的な感染対策を継続してできるだけ感染を防ぐこと、そしてワクチン接種により重症化リスク・後遺症リスクを下げることが重要です。