「アストラゼネカ製コロナワクチン」使用期限を迎え接種終了 約1350万回分が廃棄
厚生労働省は、9月30日に供給を受けたアストラゼネカ製の新型コロナワクチンの使用期限を迎えたとして、同日に接種を終了すると発表しました。このニュースについて武井医師に伺いました。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
アストラゼネカ製の新型コロナワクチンの接種終了について
厚生労働省が発表したアストラゼネカ製の新型コロナワクチンの接種終了について教えてください。
厚生労働省は供給を受けたアストラゼネカ製の全ての新型コロナウイルスワクチンが使用期限を迎えたことを受けて、9月30日で接種を終了したと発表しました。アストラゼネカ製のワクチンの購入契約は1億2000万回分でしたが、厚生労働省は半数にあたる約6230万回をキャンセルしており、代金は必要経費を差し引いて返金される予定とのことです。国内へ供給された約5770万回分のうち、約20万回分は自治体に、約4400万回分は途上国を中心とする外国に無償提供され、残りの約1350万回は廃棄されており、そのほとんどが国内で接種されませんでした。
アストラゼネカ製ワクチンの接種が広まらなかった理由は?
国内でアストラゼネカ製のワクチンがあまり接種されなかった理由について教えてください。
国内では、2021年8月からアストラゼネカ製ワクチンの接種が開始されました。当初は1、2回目のワクチンとして接種されていましたが、副反応で血栓症が起きたという海外の報告を受けて、アレルギーで他社のワクチンが接種できない人や原則40歳以上の希望者に接種が限定されました。これまでの報告によると、ワクチン接種の約10~25万回に1回という極めて稀な頻度で血栓症が生じています。血栓症はワクチン接種後1カ月以内に起こり、男性よりも若い女性に多くみられました。一般的な血栓症は下肢の静脈に起こりやすいですが、アストラゼネカ製ワクチンの接種後に生じた血栓症は、脳やお腹の静脈に生じ、前者では脳出血も併発しやすいことが報告されています。
今回のニュースに関する見解は?
アストラゼネカ製のワクチンは、その大部分が廃棄や海外提供となりました。今回のワクチンの供給に関して、先生の見解を教えてください。
アストラゼネカ製のワクチンの大半が破棄および譲渡されることとなった背景としては、ファイザー・モデルナのような安全性が十分に確認されなかったことが要因の1つだと考えます。多数のメーカーのワクチンが乱立することは、日本では好ましくない事態ですし、安全性・副反応の少なさを求める日本の風土では、副反応の頻度が低いノババックスのようなワクチンの方が非接種者の受け入れは良好でした。
まとめ
9月30日、厚生労働省はアストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンが使用期限を迎えたことで、接種終了を発表しました。迅速なワクチン供給が求められる中、ワクチンの一部が廃棄や海外提供となるのはやむを得ないといえるでしょう。