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「医療用大麻」解禁へ 大麻取締法改正の方向性を厚生労働省が取りまとめ

 更新日:2023/03/27
「医療用大麻」解禁へ 厚労省小委員会が取りまとめ

厚生労働省の大麻規制検討小委員会が9月29日に開かれ、「医療用大麻」の解禁など大麻取締法などの改正に向けた方向性を取りまとめました。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助 医師

監修医師
中路 幸之助(医師)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

大麻規制検討小委員会が取りまとめた内容は?

厚生労働省の大麻規制検討小委員会が取りまとめた内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

厚生労働省の大麻規制検討小委員会は、2022年5月25日に第一回の会合がおこなわれて以降、すでに3回会合を開き議論を重ねてきました。会合では、大麻取締法などの施行状況と課題、大麻関連障害患者の特徴と国内における治療・支援体制、大麻の適正な利用の促進、適切な栽培や管理の徹底などが議題に挙げられて協議がおこなわれました。

9月29日に開かれた4回目の会合では、これまでの議論の取りまとめがおこなわれました。取りまとめでは、国内で禁止されている大麻を原料とした医薬品について、有効性や安全性が確認されていて薬機法に基づいて承認されたものに関しては、輸入・製造・使用を可能とするように大麻取締法を改正する方向性が示されました。さらに、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)に基づく免許制度など、流通管理の仕組みを導入するよう求める内容も盛り込まれました。また、現在の大麻取締法では、大麻の所持は取締まりの対象ですが、使用についての罰則はありませんでした。そのため、小委員会の取りまとめには、法改改正を実行して「使用罪」を創設することも盛り込まれました。

医療用大麻とは?

今回、解禁の方向性が取りまとめられた医療用大麻について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

医療用に使用される大麻を医療用大麻と呼んでいます。大麻由来の成分は現在までに約70種類以上が単離されているのですが、成分の中で医学的に有用性があるものが存在しており、アメリカやカナダなどでは医療用大麻としての地位を獲得しつつあります。今回の厚生労働省の大麻規制検討小委員会で例示されたものを挙げると、大麻から製造された医薬品である難治性てんかん治療薬「エピディオレックス」という大麻由来の医薬品があります。エピディオレックスは、諸外国で承認を受けて使用可能となっているとともに、日本国内でも治験が開始されています。ただ、仮に治験で有効性が示されて薬事承認されたとしても、現状では大麻取締法の規定により大麻から製造された医薬品の施用・受施用を禁止しているため使うことができず、難治性てんかんの治療のニーズに応えることができない状況でした。

医療用大麻の解禁についての受け止めは?

厚生労働省の大麻規制検討小委員会が医療用大麻解禁の方向性を取りまとめたことへの受け止めを教えてください。また、医療用大麻の解禁に伴い、注意すべきことを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

これまで、医療用大麻は条件付きで治験をおこなうことはできましたが、医療の現場で使用することはできませんでした。今回、厚生労働省は大麻を原料とした医薬品に関して、国の承認を得た場合に限り輸入・製造・使用が可能になるよう法改正する方向で意見を取りまとめました。これは大麻由来の難治性てんかん治療薬などが国内で使用される期待の高まりや実際の海外でのこれら薬剤の使用状況をもとにしています。したがって、今回の改正はあくまで患者さんのニーズに対応した特例措置であり、「大麻を使用してもいい」といった乱用につながる誤った認識には注意すべきです。今後、このような医療のニーズに応える柔軟な対応は、患者さんの利益のために必要だと考えます。

まとめ

厚生労働省の大麻規制検討小委員会が9月29日に開かれ、「医療用大麻」の解禁をはじめとする大麻取締法などの改正に向けた方向性を取りまとめたことが今回のニュースでわかりました。取りまとめでは「大麻乱用につながるような誤った認識が広がらないよう注意するべき」との内容も盛り込まれており、今後は適切な運用体制を整備することが求められます。

この記事の監修医師