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鎮痛剤(痛み止め)が2型糖尿病患者の心不全リスクを高める可能性「適切な使用を心がけて」

 更新日:2023/03/27
一部の鎮痛剤が2型糖尿病患者の心不全リスク高める可能性

コペンハーゲン大学病院の研究グループは、「NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)」と呼ばれる痛み止めの薬の一部が2型糖尿病患者の心不全リスクを高めてしまう可能性を欧州心臓病学会で報告しました。このニュースについて濵﨑先生にお話を伺います。

濵﨑 秀崇 医師

監修医師
濵﨑 秀崇(医師)

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東京大学理学部卒業、広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院、国府台病院勤務を経て、2017年4月より「濵﨑クリニック」に勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本体力医学会評議員。

研究グループが報告した内容は?

今回、コペンハーゲン大学病院の研究グループが報告した内容について教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

今回取り上げるニュースは、コペンハーゲン大学病院の研究グループが8月にスペインで開催された欧州心臓病学会で報告した内容です。研究グループは、デンマークの医療情報データベースを用いて、糖尿病患者へのNSAIDsの使用が心不全リスクを高めるかどうかを検討しました。対象になったのは1998~2021年に2型糖尿病と診断された33万1189人です。平均年齢は62歳で、女性が44%でした。対象になった人のうち、最初の1年間で16%の患者にNSAIDsが少なくとも1回処方され、3回以上処方された患者は3%でした。処方されたNSAIDsの割合は、イブプロフェンが12.2%、ジクロフェナクナトリウムが3.3%、ナプロキセンが0.9%、セレコキシブが0.4%でした。その結果、5.85年を中央値とする追跡期間中に、2万3308人が心不全による初回入院治療を受けていて、NSAIDsを使用したグループは使用していないグループに比べ、心不全による初回入院リスクが有意に高くなっていました(オッズ比1.43)。また、薬ごとの内訳を見てみると、ジクロフェナクナトリウムとイブプロフェンの使用がリスク上昇と有意に関連しており、ナプロキセンとセレコキシブでは有意な関連が見られませんでした。

NSAIDsとは?

今回の研究の対象になったNSAIDsについて教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

NSAIDsとは、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsを略したもので、非ステロイド性抗炎症薬のことを指します。抗炎症作用や鎮痛作用、解熱作用を持つ薬の総称で、ステロイドではない抗炎症薬全てを含みます。「シクロオキシゲナーゼ」という酵素などの働きによって、炎症や痛み、発熱などを引き起こす原因となる「プロスタグランジン」という物質が体内で作られます。NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼを阻害することでプロスタグランジンの生成を抑えて、痛みや炎症、発熱などを抑えます。NSAIDsは病院で処方されるバファリン、ロキソニン、ボルタレンなどに加えて、市販薬でもバファリンAやイブなどが該当します。

報告内容への受け止めは?

コペンハーゲン大学病院の研究グループが報告した内容についての受け止めを教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

頭痛や腰痛、膝関節痛などをお持ちの糖尿病患者さんで、定期的にNSAIDsを使用されている人がいらっしゃいますが、この研究の結果を受けてNSAIDsは適切な使用を心がけなくてはならないと改めて感じました。また、高齢で血糖コントロールの悪い患者さんがNSAIDsを使用した場合、心不全による入院リスクがより高くなるということから、このような患者さんに対してはさらに注意が必要です。

この研究は観察研究ですが、過去の研究においてもNSAIDs使用と心不全リスクの上昇は指摘されています。痛みや発熱はつらいものですが、糖尿病患者さんにはNSAIDsには副作用やリスクがあることを知ってもらい、使いすぎに注意していただきたいと思います。それから、私たち医療従事者も適正な処方を心がけなくてはなりません。

まとめ

コペンハーゲン大学病院の研究グループが、「NSAIDsと呼ばれる痛み止めの薬の一部が2型糖尿病患者の心不全リスクを高めてしまう可能性がある」と研究結果を報告したことが今回のニュースでわかりました。学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされますが、興味深い内容と言えそうです。

この記事の監修医師