【脳梗塞】急性期対象の再生医薬、試験結果の解析結果を公表
脳梗塞急性期を対象にした再生医薬の開発を進めているバイオベンチャーのヘリオス社は、プラセボ対照二重盲検第2/3相試験の結果を解析したところ、主要評価項目が未達だったと発表しました。このニュースについて武井先生にお話を伺います。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
ヘリオス社が報告した内容とは?
ヘリオス社が報告した内容について教えてください。
武井先生
ヘリオス社は、日本で実施していた脳梗塞急性期を対象とした体性幹細胞再生医薬品「HLCM051」の有効性および安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第2/3相試験のデータの一部を解析し、速報値として公表しました。登録された206例が対象になりました。
主要評価項目は投与90日後のExcellent Outcome(優れた転帰の達成率)、副次評価項目はGlobal Recovery(全般的機能回復の達成率)と設定されています。主要評価項目のExcellent Outcomeは、脳卒中患者の機能評価に使われるmRS(概括障害度)、NIHSS(神経症状障害度)、BI(日常生活活動指標)の3指標が、90日後に「mRSおよびNIHSSが1以下、BIが95以上を満たした場合」と定義されました。また、副次評価項目の1つであるGlobal Recoveryは「mRSが2以下、NIHSSが75%以上改善、BIが95以上を満たした場合」と定義されました。解析の結果、投与90日後、365日後ともに主要評価項目のExcellent Outcomeは「HLCM051」を投与したグループでは15.4%であったのに対して、偽薬を投与したグループでは10.8%と有意差は認められませんでした。一方で、副次評価項目のGlobal Recoveryに関しては、投与365日後時点で「HLCM051」を投与したグループで27.9%と、偽薬を投与したグループの15.7%に比べて有意な差が認められました。BIが95以上については、投与365日後時点の場合は「HLCM051」を投与したグループでは35.6%、偽薬を投与したグループは22.5%と有意差は示せなかったものの、ヘリオス社は「治療効果があるという傾向を示せた」と述べています。
体性幹細胞再生医薬品「HLCM051」とは?
今回の試験の対象になった「HLCM051」について教えてください。
武井先生
今回、ヘリオス社がプラセボ対照二重盲検第2/3相試験の結果を発表した「HLCM051」は、脾臓で炎症免疫細胞の活性化を抑制することにより、炎症や免疫反応を抑えて神経細胞の損傷を抑制するほか、抗炎症性細胞を増殖させて栄養因子を放出することで神経保護作用などが期待されている体性幹細胞再生医薬品です。アメリカのアサシス社が創製した製剤で、ヘリオス社は国内での脳梗塞などに対する開発・販売権を取得して、脳梗塞急性期への新規細胞治療法として開発を進めています。なお「HLCM051」は、投与後は体内に蓄積せず消失することが確認されています。
報告内容への受け止めは?
ヘリオス社による報告内容について、現時点の有用性などについて受け止めを教えてください。
武井先生
脳梗塞の急性期治療としては、発症して4.5時間以内でのt-PAの適応が外れた場合、HLCM051が承認されれば脳梗塞発症18~36時間以内であれば治療選択肢となり得ます。今後は、回復期・慢性期である介護を含めた生活レベルの評価や中長期的な副作用などの検証が、必要であると考えます。
まとめ
脳梗塞急性期を対象にした再生医薬の開発を進めているバイオベンチャーのヘリオス社が、プラセボ対照二重盲検第2/3相試験の結果を解析したところ、主要評価項目が未達だったと発表したことが今回のニュースでわかりました。ヘリオス社は承認申請に向け、規制当局と協議を進める方針を示しています。