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【妊娠糖尿病】妊婦の血液中の水銀濃度上昇で発症頻度が高まる

 更新日:2023/03/27
妊婦の血液中水銀濃度上昇で妊娠糖尿病の発症頻度高まる

東北大学の研究グループは、妊婦の血液中の水銀濃度が高い場合に妊娠糖尿病の発症頻度が高まるという解析結果を学術誌に報告しました。このニュースについて前田先生にお話を伺います。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

研究グループが報告した内容とは?

東北大学の研究グループが報告した内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

今回報告された研究は、東北大学の研究グループが国立研究開発法人国立環境研究所と共同で実施したもので、対象になったのは7万8964人の妊婦です。そのうち妊娠糖尿病の割合は2.1%で、妊婦の血液中の水銀の中央値は3.6ng/gでした。解析の結果、「妊婦の血液中の水銀濃度が高くなること」と「妊娠糖尿病の発症頻度が高くなること」の関連が示されました。とくに妊婦の血液中の水銀濃度が4.99ng/g以上の場合に、妊娠糖尿病へ影響を与えることが示唆されました。この結果について、研究グループは「水銀による妊娠糖尿病の発症リスクのオッズ比は1.3程度と大きくはない影響である」と述べています。さらに「妊娠糖尿病の発症要因は水銀以外にも、喫煙や肥満、高年齢での出産などの要因が関しますので、水銀のばく露を控えることだけで発症リスクを回避できるものではありません」とも述べています。

妊娠糖尿病とは?

今回の研究対象になった妊娠糖尿病について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

妊娠糖尿病では、妊娠による影響でインスリンの効きが悪くなり、妊娠中、一時的に糖尿病のような状態になります。母体が高血糖になると、おなかの中の赤ちゃんも高血糖になり、様々な合併症が起こる恐れがあります。母体では妊娠高血圧症候群、羊水量の過多、肩甲難産などのリスクが上がり、赤ちゃんでは、流産、形態異常、巨大児、心臓の肥大、低血糖、黄疸、胎児死亡などのリスクが上がることが報告されています。

報告内容への受け止めは?

東北大学の研究グループによる報告内容について、今後どのように医療現場で生かされる可能性があるのかなど、受け止めを教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

妊娠中の取り組みに影響することは少ないと考えられます。妊娠中に水銀濃度を計測することは基本的になく、今回の結果についても影響は軽微であることから今後妊婦健診で水銀濃度を計測するようになることはないでしょう。また、水銀はマグロやカジキなどの魚に多く含まれますが、一方で魚はDHAやEPAなど妊娠に好影響をもたらす成分も含まれていることから、食べ過ぎなければむしろ有益な食材と言えます。クロマグロ、メバチマグロやメカジキは刺身1人前に当たる量を週1回まで、ツナ缶は大丈夫など、具体的な摂取目安が厚生労働省から出ていますので、この基準をこれまでと同様に遵守してもらうようお伝えすることに変わりはないでしょう。

まとめ

東北大学の研究グループが妊婦の血液中の水銀の濃度が高い場合に妊娠糖尿病の発症頻度が高まるという解析結果を学術誌に報告したことが今回のニュースで明らかになりました。研究グループは「妊娠糖尿病の発症メカニズムは未解明であることから、さらなる検討が求められます」と述べていて、今後の研究に期待が集まります。

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