塩野義製薬の新型コロナウイルス飲み薬、「咳や喉の痛みなどの5症状が改善」と発表
塩野義製薬が厚生労働省に薬事承認を申請している、新型コロナウイルスの飲み薬の臨床試験の解析結果が国際学会で発表されました。このニュースについて中路先生にお話を伺います。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
国際学会での発表内容とは?
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬について、国際学会ではどのような内容が発表されたのでしょうか?
中路先生
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬の臨床試験結果は、ポルトガルのリスボンで開催された第32回欧州臨床微生物学感染症学会議で発表されました。2022年1~2月に12~70歳の新型コロナウイルス罹患者428人を対象に、塩野義の飲み薬を投与したグループと、偽薬を投与するグループに分けて実施した中間段階の治験結果について発表がおこなわれました。投与開始から4日目の時点で感染性のあるウイルスが検出された患者の割合は、偽薬グループと比べると約90%減少し、体内でウイルスのRNA量も減らす効果が確認されたとのことでした。また、咳や喉の痛み、鼻水・鼻づまり、息切れといった呼吸器の4症状と発熱の、合わせて5つ症状で改善がみられたそうです。
塩野義製薬が開発中の治療薬について
塩野義製薬が開発を進める治療薬について教えてください。
中路先生
塩野義製薬が開発した飲み薬タイプの治療薬は、ウイルスの増殖を抑制するもので、軽症者や無症状者向けの薬となります。感染初期に1日1回、5日間自宅などで服用することで重症化を防ぐ効果が期待されています。塩野義製薬は開発した新型コロナウイルスの飲み薬を厚生労働省に承認を申請していて、現在審査中です。これまで新型コロナウイルスの軽症者向けの飲み薬はファイザー製の「パキロビッドパック」、メルク製の「ラゲブリオ」がすでに使われていますが、塩野義製薬の飲み薬が認められると3種類目、かつ初めての国産の飲み薬ということになります。
学会発表の内容への受け止めは?
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬についての学会発表の受け止めを教えてください。
中路先生
塩野義製薬は24日、ポルトガルで開催中の国際学会で自社の新型コロナウイルスの飲むタイプの治療薬が、4日目で有意にウイルス力価を減少させ、発熱などの症状の改善効果があったとする臨床試験の結果を報告しました。しかし、症状の合計スコアの有意な改善はえられませんでした。ただしその一方、この内服薬の特徴として「オミクロン株やBA.2株に対しても抗ウイルス活性があることが確認されていること」「既存の1日2回投与の内服薬とは異なり、1日1回の投与のため服薬コンプライアンスが優れている(飲みやすい)こと」などが挙げられます。新型コロナウイルスに対する治療薬の選択肢が広がるのは歓迎されるべきことであり、それが日本製であればなおさらと考えます。
まとめ
塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬の臨床試験で、5症状で改善が見られたことが国際学会で発表されました。現在、この飲み薬は厚生労働省に薬事承認を申請中ですが、今回の結果は飲み薬に対する期待を高めそうです。