新型コロナウイルス治療薬「レムデシビル」軽症者への投与可能に
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症診療の手引きを改訂し、重症化リスクを持つ軽症患者に対して抗ウイルス薬「レムデシビル」を使用可能としました。このニュースについて中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
レムデシビルの対象拡大の内容は?
新型コロナウイルス感染症診療の手引きが1月27日に改訂され、レムデシビルの対象範囲が拡大されましたが、その内容について教えてください。
中路先生
今回おこなわれた新型コロナウイルス感染症診療の手引きの改訂は、海外で実施された臨床試験の結果を踏まえたものです。重症化リスクを持つ軽症や中等症の新型コロナの患者にレムデシビルを投与したところ、偽薬を投与したグループに対して入院・死亡リスクを9割近く低下させたというデータが出ています。
手引きでは、新型コロナに対する主な薬物治療として、抗ウイルス薬の「レムデシビル」と「モルヌピラビル」、中和抗体薬の「カシリビマブ/イムデビマブ」と「ソトロビマブ」、免疫抑制・調整薬の「デキサメタゾン」、「バリシチニブ」、「トシリズマブ」などが記載されています。軽症例に対してはモルヌピラビル、ソトロビマブが使用されていますが、今回新たにレムデシビル(適応外使用)が追加されました。
レムデシビルとは?
レムデシビルは、どのような薬なのでしょうか?
中路先生
本来、レムデシビルはエボラ出血熱向けに開発された抗ウイルス薬ですが、2020年5月に新型コロナウイルス治療にも使えるよう特例承認されました。
レムデシビルに関しては、海外で実施されたプラセボ対照ランダム化比較試験で、発症から7日以内の重症化リスクがある酸素投与が必要ではない非入院患者に対してレムデシビルを1日目に200mg、2日目と3日目に100mgずつ投与したグループと偽薬を投与したグループに振り分けたところ、28日目までの入院または死亡の割合は偽薬のグループでは5.3%だったことに対し、レムデシビルを投与したグループでは0.7%となり、87%の有意な低下が見られたというデータが出ています。
軽症者も対象にした意義は?
レムデシビルの投与を重症化リスクがある軽症者も対象にしたことは、新型コロナの治療現場にとってはどのような意義があるでしょうか?
中路先生
今回の措置は海外の臨床試験結果を日本に適応したものではありますが、「重症化リスクのある軽症や中等症の患者にレムデシビル使うことで、入院や死亡のリスクを一定の割合で下げることができる可能性がある」点で、その意義はあるものと考えられます。
まとめ
今回のニュースで重症化リスクを持つ軽症患者に対して、抗ウイルス薬のレムデシビルの使用が可能となったことが分かりました。改訂の背景には地道な研究結果があり、今後も新たな知見が治療現場に活かされることに期待が集まります。