HPVワクチン「キャッチアップ接種」の運用方法が決定
子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染を防ぐワクチンについて、積極的な接種勧奨を中止していた期間に機会を逃した1997~2005年度生まれの女性が公費で接種できるようにする「キャッチアップ接種」の運用方法が決まりました。このニュースについて前田医師に伺いました。
監修医師:
前田 裕斗 医師
「キャッチアップ接種」の運用方法とは?
今回決まった「キャッチアップ接種」の運用方法について教えてください。
前田先生
HPVワクチンの「キャッチアップ接種」は、積極的な接種勧奨を中止していた期間に機会を逃した1997~2005年度生まれの女性が公費で接種することができる仕組みです。1月27日に開かれた厚生労働省の専門部会で「キャッチアップ接種」の運用方法が了承されました。
未接種者は定期接種と同様に3回接種する、過去に1~2回接種した人は何年前であっても続きの接種ができる、2種類あるワクチンのうち、原則として過去の接種と同じ製品を使うなどといった運用方法になっています。定期接種の対象年齢を過ぎた後、約5万円の費用を自己負担して接種した人には費用助成もおこなう方針だということです。キャッチアップ接種の期間は今年4月からの3年間で、最大約374万人が対象になると見込まれているということです。
HPVワクチン接種とは?
今回、「キャッチアップ接種」という対応がとられたHPVワクチンについて教えてください。
前田先生
まず、持続的なHPVの感染によって「子宮頸がん」を引き起こす恐れがあります。日本では、20~40代を中心に患者数が増えていて、厚生労働省によると毎年およそ1万1000人の女性が子宮頸がんになり、およそ2800人が亡くなっているとのことです。HPVワクチンは、子宮頸がんの原因であるHPVの感染を予防するためのワクチンです。
HPVは主に性交渉によって感染するとされていることから、性交渉を経験する前にワクチンを接種することが最も予防に有効と言われています。また現在、小学6年生から高校1年生までの女性が定期接種として無料接種できる「サーバリックス」と「ガーダシル」という2種類のワクチンは200種類以上のタイプがあるHPVのうち、子宮頸がんを引き起こしやすいHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。6カ月間に3回接種することによって、子宮頸がんを50~70%を防ぐことができるとされています。
「キャッチアップ接種」の意義とは?
キャッチアップ接種が実施される意義について教えてください。
前田先生
これまで、接種対象年齢でなくHPVワクチン接種を希望していた人は、自費での接種を余儀なくされていましたので、公費で接種可能となったことは大変素晴らしいことです。
海外の研究では、25歳までにHPVワクチンを接種することで子宮頸がんやその前がん病変のリスクが低下することが報告されています。また、性交渉経験後でも、まだ感染したことのない型のHPV感染を予防できるなどのメリットもあることから、「キャッチアップ接種」の効果についてはあると考えていいでしょう。
加えて、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)からは、一度HPVワクチンを接種後中断して再度ワクチンを受ける場合でも、前回におこなったワクチンの続きとして再開するよう推奨されています。来年度、17歳~25歳で接種を希望する人は、2022年4月以降で忘れないよう早めの接種をおすすめします。
まとめ
HPVワクチンの積極的な接種勧奨を中止していた期間に機会を逃した1997~2005年度生まれの女性が公費で接種できる「キャッチアップ接種」の運用方針が決まったことが今回のニュースでわかりました。今年4月からは積極的勧奨が再開されることもあり、HPVワクチンについては今後も注目が集まりそうです。