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認認介護とは?問題点や解決策、困ったときの対処法を解説します

 公開日:2026/03/13
認認介護とは?問題点や解決策、困ったときの対処法を解説します

近年、高齢化の進行に伴い認認介護(にんにんかいご)などの言葉が注目されています。これは、認知症の高齢の方が同じく認知症の配偶者や家族を介護する状態を指します。一見すると家族の支え合いのようにみえますが、実際には双方の認知機能が低下しているため、介護や安全管理が十分に行えず、事故や孤立などの深刻な問題につながることがあります。この記事は、認認介護の現状や抱える問題点を解説するとともに、行政や地域の支援、家族が取るべき対処法を解説します。

伊藤 規絵

監修医師
伊藤 規絵(医師)

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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科(脳神経内科)、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。

認認介護の定義

認認介護の定義

認知症の高齢の方が同じく認知症をもつ家族や配偶者の介護を行う状態を指します。双方に支援が必要なため、安全性の高い生活の維持が難しくなる場合があります。

認知症とは

脳の病気などによって記憶力や判断力、理解力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態をいいます。加齢による単なる物忘れとは異なり、体験そのものを忘れてしまうことが特徴です。代表的な原因疾患にはアルツハイマー型認知症血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭型認知症などがあります。症状は人によって違いますが、時間や場所がわからなくなる見当識障害や、感情が不安定になる感情障害、行動に変化が見られる行動・心理症状(BPSD)などが現れることがあります。認知症は進行性の疾患であり、早期発見と適切な治療・支援が重要です。

参照:『「加齢による物忘れ」と認知症による物忘れ」の違い』(水戸済生会総合病院)

認認介護とは

認知症の方が、同じく認知症の家族や配偶者の介護を担っている状態を指します。どちらも認知機能の低下があるため、服薬管理や金銭管理、火の始末などが十分に行えず、転倒や事故、徘徊、ゴミ屋敷化などのリスクが高まりやすいです。また、困りごとを自ら相談したり支援制度を調べることも難しく、周囲から気付かれないまま孤立や虐待的な状況に陥るおそれがある点も大きな問題です。

参照:『老老介護・認認介護とは 』(健康長寿ネット)

認認介護状態になる原因

いくつかの社会的・心理的な要因が重なっていると考えられます。まず、平均寿命の伸びにより介護する側・される側の双方が高齢になり、どちらも認知症を発症しやすくなっていることが大きな要因です。また、子ども世帯の独立遠方居住による核家族化・単身高齢世帯の増加により、身近に頼れる家族がいないまま夫婦やきょうだい同士で介護を担わざるをえない状況が生じます。

さらに、「家族のことは家族でみるべき」「迷惑をかけたくない」などの価値観や、他人を自宅に入れることへの抵抗から、介護保険サービスや地域包括支援センターの支援を利用せず、介護を抱え込みやすいことも背景にあります。このような状況のなかで、老老介護のストレスや負担がきっかけとなって介護者側の認知症が進行し、結果として認認介護状態に移行してしまうケースも少なくありません。

参照:『老老介護・認認介護とは 』(健康長寿ネット)

認認介護の実態

認認介護の実態

認認介護の実態として、日本では高齢化の進行に伴い、在宅介護の現場で高齢の方同士・認知症同士による介護が着実に増えているとされています。厚生労働省の国民生活基礎調査では、要介護者と同居して介護を担う方のうち、65歳以上同士の組み合わせが半数を超えており、75歳以上同士も3割前後を占めるなど、高齢の方同士の介護が一般的な状況になっています。

また、山口県の調査では、在宅で介護を行う世帯の1割程度が認認介護状態にあると推計されており、地域によってはすでに深刻な水準に達していると報告されています。認知症の方と家族の会は、80歳前後の夫婦の11組に1組程度が認認介護に該当すると試算しており、今後も増加が見込まれます。

参照:
『在宅介護における認認介護の出現率』(第33回愛知自治体研修会)
『No.25–増えている「認認介護」-80歳夫婦の11組に1組も! 』(公益社団法人認知症の人と家族の会)

認認介護の問題点やリスク

認認介護の問題点やリスク

認認介護では、双方に認知機能の低下があるため、服薬や金銭管理、火の始末などが不十分になり、転倒や事故、徘徊、虐待や共倒れなどの重大なリスクが高まります。

排泄・入浴関係のケアが行き届かない

介護する側・される側の双方に認知機能の低下があると、トイレの場所やタイミングがわからない、下着や衣類の交換がうまくできないなどの問題が起こりやすいです。その結果、失禁しても気付かない、濡れたまま長時間過ごしてしまう、同じおむつを繰り返し使用してしまうなど、不衛生な状態が続き、皮膚トラブルや尿路感染症のリスクが高まります。

入浴も、準備や見守りが難しいことで入浴回数が減り、月に数回、あるいはほとんど入れないなどの状況になりがちです。浴室での転倒をおそれて入浴を避けるケースもあり、結果として身体の汚れ臭いが強くなり、本人の尊厳低下や社会的な孤立につながる点が大きな問題です。

服薬の管理ができない

介護する側・される側の双方に物忘れや判断力の低下があるため、薬を飲んだかどうか覚えていない、飲む時間を間違える、薬そのものを紛失してしまうなどのトラブルが起こりやすいです。その結果、同じ薬を二重に服用してしまう、逆に飲み忘れが続いて病状が悪化する、処方とは異なる飲み方をして副作用が強く出るなど、健康被害のリスクが高まります。また、多種類の薬を自分たちだけで仕分けたり整理したりが難しく、残薬が大量にたまる、不要な薬をいつまでも飲み続けてしまうなどの問題も生じやすいです。こうした服薬管理の不備は、病気のコントロール不良だけでなく、救急搬送につながります。

栄養管理が難しい

双方に認知機能の低下があると、買い物や調理の段取りが立てられず、限られた食材で同じような簡単な食事ばかりになってしまうことがあります。また、食事をとったこと自体を忘れてしまう、時間の感覚が薄れ食事のリズムが乱れるなどの影響から、食事回数が不規則になり、低栄養脱水を招きやすいです。

さらに、義歯の不具合や嚥下機能の低下に気付かないまま、固いものを無理に食べ続けて誤嚥窒息のリスクが高まることもあります。このような状況が続くと、筋力低下、持病の悪化などにつながり、転倒や寝たきりのリスクが高いです。

金銭管理ができない

双方に物忘れや判断力の低下があると、いつ・いくら引き出したか、支払いが済んでいるかなどの基本的なお金の流れを把握できないです。その結果、公共料金や家賃、保険料などの支払い忘れが重なり、サービス停止滞納による督促、ときには契約解除などの事態を招くことがあります。

また、必要以上に現金を引き出して自宅に置いてしまう、訪問販売や悪質な勧誘に何度も契約してしまうなど、詐欺被害のリスクも高まります。通帳やキャッシュカード、印鑑の管理ができないことで紛失や盗難にも気付きにくく、問題が表面化したときには家計が大きく損なわれているケースも少なくありません。

参照:『金銭|認知症あるある』(認知症の人と家族の会 愛知県支部)

体調の変化に気付きにくい

双方に物忘れや判断力の低下があるため、いつから食欲が落ちているのか、どのくらい熱が続いているのかなどの経過を正確に把握できず、体調不良が見過ごされやすいです。また、痛みや息苦しさなどの不調をうまく言葉で訴えられない、あるいは「大丈夫」と言って我慢してしまうことで、受診や相談のタイミングが遅れることも少なくありません。

さらに、介護者自身も疲労や睡眠不足、ストレスを抱えながら生活しているため、自身の体調悪化に気付かない、あるいは「忙しいから」と後回しにしてしまい、気付いたときには重症化している場合があります。このように、認認介護では家族全体の体調変化が見えにくく、結果として重篤な病気や突然の救急搬送につながります。

認認介護の解決策

認認介護の解決策

早い段階で地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、訪問介護やデイサービス、ショートステイなど公的サービスを積極的に利用して、介護を家庭だけで抱え込まないことが大切です。

介護保険サービスを活用する

認認介護を少しでも軽減するためには、介護保険サービスの積極的な活用が重要です。まずは地域包括支援センターや役所の介護保険窓口に相談し、ケアマネジャーと一緒に心身の状態を評価してもらうことで、必要なサービスの組み合わせを検討できます。訪問介護では、入浴や排泄、掃除、買い物などの日常生活をサポートしてもらえるため、双方の負担を大きく減らすことができます。デイサービスを利用すると、日中は専門職の見守りのもとで入浴やリハビリ、レクリエーションが受けられ、介護者は休息の時間を確保できます。短期入所生活介護(ショートステイ)を利用すれば、数日から数週間単位で介護をプロに任せることができ、介護者の体調不良時や冠婚葬祭などの際にも安心感があります。このように、介護保険サービスを上手に組み合わせることで、家族だけで頑張り過ぎない環境を整えることが大切です。

参照:
『介護サービスの利⽤のしかた 地域包括⽀援センターとは 介護の相談窓⼝等について』(厚生労働省)
『認知症の方とご家族を支える社会資源』(東京慈恵会医科大学西部医療センター)

身近な方がケアを分担する

家族や親族、近所の方、友人などが、それぞれできる範囲で役割を持つことで、一人の介護者への負担の集中が防げます。例えば、通院の付き添いはきょうだい、買い物や重い物の運搬は近くに住む家族、様子見の電話や訪問は親しい友人など、具体的に担当を決めておくと、協力を得やすいです。また、遠方に住む家族でも、定期的な連絡やオンライン面会、金銭管理や手続きのサポートなど、離れた場所からできる支援があります。介護者が「助けを求めてよい」と認識し、周囲も見守り役や相談役として関わることで、孤立や共倒れのリスクを減らすことにつながります。

施設への入所を検討する

認認介護の負担が大きくなり、安全性の高い生活の維持が難しくなってきた場合は、施設への入所の検討も重要な選択肢です。自宅での暮らしにこだわり過ぎると、介護者・本人ともに限界を超えてしまい、転倒や急病、虐待や共倒れなどの深刻な事態につながるおそれがあります。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)介護老人保健施設介護予防認知症対応型共同生活介護有料老人ホームグループホームなどは、24時間体制で職員が見守りや日常生活の支援を行うため、医療・介護の両面から安心感の高いケアを受けやすいです。入所を検討する際は、もう無理になってからではなく、体力や認知機能がある程度保たれている時期から、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、見学や費用の確認を進めておくことが大切です。

参照:
『特別養護老人ホーム(特養)とは 』(健康長寿ネット)
『介護予防認知症対応型共同生活介護とは 』(健康長寿ネット)
『有料老人ホームとは 』(健康長寿ネット)

認認介護で困ったときの相談窓口と対処法

認認介護で困ったときの相談窓口と対処法

地域包括支援センターや市区町村の高齢者相談窓口に早めに相談し、必要に応じて認知症の方と家族の会の電話相談や、高齢者虐待防止窓口なども活用して対処していくことが大切です。

認認介護に関する相談窓口

認認介護で困ったときの主な相談窓口は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターや、市区町村の高齢者相談窓口認知症疾患医療センター認知症の方と家族の会の電話相談、高齢者虐待通報窓口などがあります。これらの窓口では、介護保険サービスの利用や医療機関の受診調整、家族の負担軽減策、高齢の方の虐待が疑われる場合の対応などを専門職が具体的な助言や支援につなげてくれます。

参照:
『認知症の方とご家族を支える社会資源』(東京慈恵会医科大学西部医療センター)
『認知症を知る』(公益社団法人 認知症の人と友の会)
『高齢者虐待に関する通報・相談窓口』(大阪市)

認認介護で困っているときの対処法

認認介護で「もう限界かもしれない」「このまま続けて大丈夫なのか」と感じたときは、まず一人で抱え込まず、早めの相談が重要です。お住まいの地域の地域包括支援センターや市区町村の高齢者相談窓口に連絡すると、介護保険サービスの追加利用やレスパイト(デイサービスやショートステイなどで一時的に介護から離れて休む仕組み)を提案してもらえます。

また、認知症疾患医療センターや主治医に相談して治療やケアの見直しを行うことや、家族・親族に負担や気持ちを率直に伝え、通院付き添いや買い物、金銭管理など具体的な役割を分担してもらうことも有効です。暴言や暴力など、高齢の方の虐待につながりそうな状況が心配な場合には、高齢者虐待防止の相談窓口や市町村への通報が推奨されており、「つらい」と感じた段階で行動を起こすことが、本人と介護者双方を守ることにつながります。

参照:『福祉・介護認知症に関する相談先』(厚生労働省

まとめ

まとめ

認認介護は、認知症の方同士が介護を担い合うことで、服薬・金銭・衛生管理などが滞り、事故や共倒れのリスクが高まる深刻な状態です。一方で、地域包括支援センターや介護保険サービス、家族・地域の協力、施設入所などの選択肢を早期から組み合わせることで、負担を軽減し、安全性の高い生活を守ることは可能です。何とか自分たちだけでと抱え込まず、困り始めた段階で相談・行動に移すことが、本人と家族の生活の質を守るうえで重要です。

この記事の監修医師