看護小規模多機能型居宅介護(看多機)とは?特徴やサービス内容、利用条件を解説

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、介護と看護の両面から在宅生活を支える地域密着型の介護保険サービスです。医療ニーズの高い要介護者でも「住み慣れた自宅で最期まで過ごしたい」という希望を叶えやすくし、家族の介護負担軽減にもつながる新しい仕組みとして注目されています。本記事では、看多機の概要や特徴、具体的なサービス内容、利用条件、費用、メリット・注意点、そして利用開始までの流れについて解説します。

監修社会福祉士:
小田村 悠希(社会福祉士)
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。
目次 -INDEX-
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)の基礎知識

看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、通いや泊まり、訪問介護、訪問看護のサービスを一体的に提供する複合型サービスです。まずはその基本的な仕組みと特徴、利用できる対象者の条件について押さえておきましょう。
看護小規模多機能型居宅介護とは
看多機は、小規模多機能型居宅介護に訪問看護サービスを加えたものです。1つの事業所でデイサービスとショートステイ、訪問介護、さらに看護師による訪問看護をまとめて受けられる点が大きな特徴です。従来の小規模多機能では医療的ケアが必要な場合に別途訪問看護と契約する必要がありましたが、看多機では事業所に看護師が配置されているため医療依存度の高い利用者にも対応可能です。例えば、インスリン注射や経管栄養、痰の吸引といった処置、在宅での看取りにも対応できる体制が整っています。
また、看多機は地域密着型サービスに位置づけられ、利用者は事業所と同じ市町村内の住民に限られます。小規模な拠点で運営されており、登録定員は最大29名、1日の通いサービス利用定員は18名、宿泊定員は9名までと規定されています。このように少人数制にすることで、スタッフが利用者一人ひとりに目を配りやすく柔軟なケアを提供できるようになっています。
参照:
『指定介護保険事業者のための運営の手引き 看護小規模多機能型居宅介護』(横須賀市民生局福祉こども部指導監査課)
看護小規模多機能型居宅介護の特徴
看多機最大の特徴は、利用者の状態や希望に応じてサービス内容を柔軟に組み合わせられる点です。デイサービスを中心に、必要に応じて短期間の宿泊や自宅への訪問を組み合わせ、在宅生活を包括的にサポートします。サービス提供元が一つにまとまっているため、仮に利用者の体調が変化しても別の事業所を探し直す必要がなく、顔なじみのスタッフによる継続したケアを受けられる安心感があります。
加えて、看多機では介護施設特有の高額な一時金(入居金)が不要で、毎月の利用料も定額制のため費用が明確です。医療処置に対応できるうえに少人数制によるきめ細かな対応が可能です。
ただし、名称に小規模とあるとおり、1日の受け入れ人数には制限があり希望通りに利用できない場合もあります。また事業所の所在地自治体の住民しか利用できないなど地域限定のサービスである点も特徴といえるでしょう。
看護小規模多機能型居宅介護の利用条件
要介護認定を受けた要介護1〜5の高齢の方が看多機の対象です。要支援1・2の方は利用できないため注意してください。また、原則として事業所と同じ市区町村に住所があることが必要で、遠方の事業所は利用できません。利用開始前には事業所への登録が必要ですが、一度登録すれば通いや泊まり、訪問の各サービスを必要に応じて利用できます。
なお、常時医療機関での治療や管理が必要な状態の方は対象外です。そのほか、安全確保の観点から事業所ごとに受け入れ困難なケース(感染症の有無など)が定められている場合もあります。具体的な利用可否については主治医や担当ケアマネジャーと相談しつつ確認するとよいでしょう。
看護小規模多機能型居宅介護で受けられる具体的なサービス内容

看多機では通いや泊まり、訪問(介護と看護)という大きく4種類のサービスが提供されます。利用者の状態に合わせて柔軟に組み合わせ可能で、必要に応じて24時間切れ目のない支援を受けられる点が強みです。ここではそれぞれのサービス内容を解説します。
通所型の通いサービス(デイサービス)
デイサービスでは、利用者が日中に看多機事業所へ通い、食事や入浴などの介護や機能訓練を受けます。施設内では栄養バランスのとれた食事提供や入浴介助のほか、生活機能向上を目的としたリハビリ、口腔ケア、レクリエーション活動などが行われます。自宅に閉じこもりがちな高齢の方にとって、ほかの利用者やスタッフとの交流を通じて社会的なつながりを保ち、心身機能の維持向上を図ることもデイサービス利用の大きな目的です。
訪問型の訪問看護・訪問介護サービス
訪問サービスにはホームヘルパーなどによる訪問介護と、看護師などによる訪問看護の2種類があります。
| サービス名 | 内容 |
|---|---|
| 訪問介護サービス(ホームヘルプ) |
|
| 訪問看護サービス |
|
これら訪問系サービスが組み合わさることで、利用者は24時間体制の支援を受けられます。通いや泊まりと連携した訪問サービスにより、施設に入所せずとも安心して在宅療養を送れるよう支えています。
宿泊型の泊まりサービス(ショートステイ)
看多機の泊まり(ショートステイ)は、併設された宿泊スペースで短期間利用できます。専門スタッフが24時間常駐し、夜間も含め介護や医療的ケアを提供します。家族の介護負担軽減(レスパイト)や緊急避難先として活用され、顔なじみのスタッフや利用者と過ごせるため安心感があります。日中はデイサービスと同様のプログラム、夜間は生活リズムに合わせたケアを提供します。
看護小規模多機能型居宅介護の費用の目安と自己負担

看多機の利用料金は、主に基本サービス費、日常生活にかかる実費、各種加算費用の3つで構成されます。基本サービス費は、要介護度に応じて決まる定額の費用で、通いや泊まり、訪問介護、訪問看護の4サービスを包括的に利用できます。この費用には介護保険が適用され、利用者負担は原則1割(所得に応じて2、3割)です。利用頻度が高くなっても基本料は変わらないため、重度な方ほど費用対効果が高くなる可能性があります。
一方、食費、宿泊費、おむつ代、日用品費、理美容代など、日常生活にかかる実費は全額自己負担です。さらに、事業所によっては、介護職員処遇改善加算などの各種加算費用が基本料に上乗せされ、これも保険適用で1~3割負担ですが、金額は事業所ごとに異なります。
なお、看多機の利用中は、原則としてほかの介護保険サービスは併用できませんが、訪問リハビリテーションや居宅療養管理指導、福祉用具貸与などは併用可能ですので、利用計画についてはケアマネジャーとの相談が必要です。
看護小規模多機能型居宅介護のメリットと注意点

デイサービスやショートステイ、訪問看護などを一体化した看多機には、利用者や家族にとってさまざまな利点があります。一方で利用にあたって留意すべき点や、場合によっては従来サービスの方が適しているケースも存在します。ここでは看多機の代表的なメリットと注意点を整理します。
看護小規模多機能型居宅介護のメリット
看護小規模多機能型居宅介護(看多機)は、通いや泊まり、訪問、看護一つの事業所で一体的に提供できる在宅介護サービスです。看多機で考えられるメリットは下記のとおりです。
- 馴染みのスタッフによる継続支援
- 在宅で医療処置を受けられる
- 少人数で家庭的なサービス
- 初期費用の負担が少ない
- 在宅生活を包括的にサポート
このように看多機は、医療と介護が日常的に必要な方でも、自宅での生活を継続しやすくなる仕組みが整っています。「施設に入るほどではないが、自宅だけでは不安」という方でも、看多機はよい選択肢となるでしょう。
看護小規模多機能型居宅介護の注意点
看多機は小規模で柔軟性が高いため、利用者本人は安心して過ごせ、家族の負担軽減にもつながります。しかし、看多機には注意点がいくつかあります。
- 利用枠・定員に限りがある
- ほかサービスとの併用ができない
- 密接な関係がゆえの人間関係のトラブルに注意
以上のように、看多機は在宅療養を包括支援する心強いサービスですが、すべての方に万能というわけではありません。特に、医療依存度がそれほど高くない方や、社会的交流よりも少人数で落ち着きたい方にとっては、小規模多機能ではない通常の在宅サービスやほかの施設系サービスの方が適する場合もあります。利用を検討する際は、自身の要介護度や生活環境、価値観に照らしてメリットとデメリットを比較検討することが大切です。
看護小規模多機能型居宅介護の利用開始までの流れ

実際に看多機の利用を始めるまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。ここではサービス利用開始までの一般的な流れを解説します。
市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談する
まずはお住まいの市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談しましょう。要介護認定をまだ受けていない場合は、ここで申請手続きについて案内してもらえます。地域包括支援センターでは介護に関する幅広い相談を受け付けており、必要に応じて要介護認定の申請代行もしてくれます。すでに要介護認定を受けてケアマネジャー(介護支援専門員)がついている場合は、担当ケアマネに看多機の利用を検討している旨を伝え、適切な事業所を提案してもらいます。
要介護認定の申請を行う
介護サービス利用の前提として要介護認定を取得する必要があります。未認定の場合、市役所あるいは役場の介護保険課窓口で要介護認定の申請手続きを行いましょう。申請後、自宅への調査員訪問や主治医意見書の提出などを経て、だいたい30日以内に要介護度の認定結果が通知されます。認定結果が出たら地域包括支援センターまたは居宅介護支援事業所でケアマネジャーを選任します。要支援と判定された場合は残念ながら看多機は利用できませんが、代わりに地域密着型サービスの利用などを検討してください。
事業所を選定して見学する
利用したい看多機の事業所を選びます。地域包括支援センターやケアマネから市町村内の看多機事業所の情報提供を受けるか、自分でインターネットなどで探すこともできます。候補が決まったら事前にパンフレットを取り寄せたり、見学を申し込んだりしてサービス内容や雰囲気を確認しましょう。見学時には施設設備やスタッフの対応、利用者の様子などをチェックし、疑問点や不安な点は遠慮なく質問します。看多機は人間関係や相性も重要なため、できれば家族も一緒に足を運び、安心して任せられる事業所か判断するとよいでしょう。
ケアマネジャーにケアプランを作成してもらう
看多機の契約が済むと、その事業所に所属するケアマネジャーが新たに担当となります。ケアマネジャーが利用者や家族の希望や心身の状況を伺いながら、看多機で提供されるサービスを中心としたケアプラン(居宅サービス計画)を作成します。通いサービスの頻度や訪問時間帯、泊まり利用の想定などを盛り込んだプランを立て、利用者に合った介護と看護が提供できるよう調整します。
ケアプラン完成後、いよいよサービス利用開始です。初回利用時は緊張するかもしれませんが、スタッフが丁寧にサポートしてくれます。利用開始後も状態の変化に応じてプランを随時見直しながら、無理なく在宅生活が続けられるよう支援してもらえます。
以上が看多機利用開始までのおおまかな流れです。契約から実際の利用開始までは少し期間を要します。早めに動き出し、担当者と十分に連絡を取り合いながら進めることで、スムーズにサービスを利用できるでしょう。
まとめ

看多機を利用すれば顔なじみのスタッフによる切れ目ない支援が可能となり、家族の介護負担軽減にもつながるなど多くのメリットがあります。一方で定員やサービス提供地域が限られるため希望どおり利用できない場合があること、ほかの介護サービスとの併用ができないこと、人間関係のトラブルに留意が必要なことなど注意点もあります。
看多機の利用を検討する際は、まずはお住まいの地域の情報収集や専門窓口への相談から始めてみてください。市区町村や地域包括支援センター、ケアマネジャーが中心となって手続きや事業所選びをサポートしてくれます。適切に活用すれば、医療と介護の両面で安心できる在宅生活の実現に大きく近づくはずです。
参考文献



