寝たきりで足がむくみやすい原因は？対処法と予防法を解説します
公開日:2025/10/20
寝たきりの方は、足の筋肉を使う機会が少なくなるため、血液やリンパの流れが滞りやすく、むくみが生じることがあります。医学的には、浮腫（ふしゅ）といいます。足のむくみは組織間隙に水分（間質液）が過剰に貯留した状態です。むくみは、皮膚のトラブルや血栓症などのリスクを高めるため、早めの対処が大切です。くわしい情報を知りたい方や、ご家族のケアに役立てたい方は、参考にしてください。
監修医師：
伊藤 規絵（医師）
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旭川医科大学医学部卒業。その後、札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、市立釧路総合病院、市立芦別病院などで研鑽を積む。2007年札幌医科大学大学院医学研究科卒業。現在は札幌西円山病院神経内科総合医療センターに勤務。2023年Medica出版社から「ねころんで読める歩行障害」を上梓。2024年4月から、FMラジオ番組で「ドクター伊藤の健康百彩」のパーソナリティーを務める。またYou tube番組でも脳神経内科や医療・介護に関してわかりやすい発信を行っている。診療科目は神経内科（脳神経内科）、老年内科、皮膚科、一般内科。医学博士。日本神経学会認定専門医・指導医、日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医、日本老年医学会専門医・指導医・評議員、国際頭痛学会(Headache master)、A型ボツリヌス毒素製剤ユーザ、北海道難病指定医、身体障害者福祉法指定医。
目次 -INDEX-
寝たきりの方の足がむくみやすい原因
足がむくむとはどのような状態ですか？
主に足の皮膚や皮下組織に余分な水分がたまって膨らんだ状態を指します。通常、心臓から送り出された血液やリンパ液は全身を巡り、不要な水分を回収しながら体外へ排出されますが、寝たきりの方の場合は足の筋肉を動かす機会が極端に少なくなるため、こうした循環が滞りやすくなります。その結果、血液やリンパ液が正常に戻らず、組織の隙間に水分がたまることで足が腫れて、触るとふくらみやすくなります。これがむくみと呼ばれる状態です。
寝たきりの方の足がむくむ原因を教えてください
主な原因は、筋肉を十分に使わない状態による血液・リンパの循環障害です。身体を動かせないことで、本来の筋ポンプ作用が弱まり、血流やリンパ液の流れが停滞します。その結果、余分な水分や老廃物が組織に溜まりやすく、むくみが生じます。また、加齢による心肺機能の低下や血管の硬化も循環不良に拍車をかけます。さらに、塩分や水分の過剰摂取は体内の水分保持傾向を強め、むくみを悪化させます。ほかにも心不全、腎臓病、深部静脈血栓症などの基礎疾患がある場合、体液バランスが一層崩れやすくなります。寝たきりの方の足のむくみは、こうした複数の要因が重なることで生じます。
寝たきりで足がむくんでいるときの対処法
足のむくみを放置するとどうなりますか？
足のむくみを放置すると、血液循環がますます悪化し、心臓や血管に負担がかかります。その結果、皮膚に色素沈着や硬化、潰瘍が発生しやすくなり、細菌感染や炎症のリスクも高まります。また、重度の場合は深部静脈血栓症やリンパ浮腫などの合併症を引き起こす可能性があり、命に関わる事態や突然死の原因となることもあります。さらに、むくみが心臓や腎臓などの疾患のサインであった場合、病状が重症化してしまい、透析や集中治療が必要となるケースもあります。日常生活にも支障が出て歩行困難となったり、精神的なストレスを抱えたりすることもあるため、むくみは決して軽視せず、早めの対処と医療機関への相談が大切です。
自宅で家族ができるむくみの解消方法を教えてください
まず足を心臓より高くして休むようにしてください。枕やクッションを使い、仰向けで足を上げることで血液やリンパ液の流れが促進されます。次に、ふくらはぎや足首をやさしくマッサージし、足先から膝まで手の平で包み込むように揉み上げると効果的です。クリームや乳液を使用するとお肌の負担が少なくなります。また、足首を回す・つま先立ち運動などを取り入れることで、筋肉のポンプ作用を活性化し、むくみの予防につながります。さらに、足湯や入浴で温めることも血行促進に有効です。これらのケアを日常的に行い、適切な水分補給や塩分の過剰摂取を避けることも意識してください。慢性的なむくみが続く場合は、医療機関への相談が必要です。
弾性ストッキングや市販の高圧ストッキングを使ってもよいですか？
足のむくみ対策として有効な場合があります。ストッキングは足を外側から適度な圧力で包み、静脈やリンパの流れを促進しむくみの緩和につながります。ただし、装着前にはきちんと皮膚の状態や循環障害の有無を確認してください。特に糖尿病や動脈硬化、皮膚疾患などがある場合は、圧迫によるトラブルが起こりやすいため医師の指示のもとで使用してください。また、サイズや圧力の強さが合っていないと逆に血流障害や皮膚損傷が生じるリスクもあるため注意が必要です。自己判断での長期使用は避け、疑問点があれば医療機関へ相談してください。
足のむくみで受診をした方がよい目安を教えてください
むくみが急に発症した場合や、数日間持続する・悪化する場合です。特に片足だけが急激にむくみ、強い痛みや息苦しさ、胸痛、体重の急増、発熱などほかの症状を伴うときは早めの受診が必要です。全身にむくみが広がったり、日常的な対策でも改善しなかったりする場合も医療機関で原因を検索してもらいます。慢性的な疾患を抱えている方は循環器内科や内科へ、かかりつけ医がいない場合も早めの受診相談を考慮してください。
寝たきりのむくみを予防する方法
むくみを予防できる食事のポイントを教えてください
まず塩分の摂取を控えることです。塩分が過剰な食事は体内に余分な水分を溜め込み、むくみを悪化させるので、だしや香味野菜、減塩調味料などを活用しながら味付けを工夫します。また、カリウムを含む野菜、果物、いも類、豆類、海藻類を積極的に取り入れることで、体内の塩分や余分な水分の排出を促しやすくなります。ただし腎臓病などでカリウム制限が必要な方は主治医に相談してください。良質なたんぱく質（肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など）やビタミン類（特にB群、E）もバランスよく摂取でき、血管や筋肉の健康維持に役立ちます。インスタント食品、加工食品、惣菜などは塩分が多く含まれる傾向があるため、できるだけ控えます。日々の食事はバランスよく、過不足なく栄養を摂ることが大切です。
どのようなマッサージ方法がむくみに効果的ですか？
足首からひざに向かって、心臓へ血液やリンパ液を流すイメージでさすり上げるリンパドレナージュやふくらはぎマッサージが基本です。座ってひざを軽く曲げ、親指以外の指でふくらはぎを包み込むようにやさしく圧をかけ、足首側からひざ方向へ手を滑らせます。太ももは膝から付け根（鼠径部）へさすり、リンパ節への流れを意識します。足の裏や足の甲も親指でまんべんなく押すと血行促進に有効です。圧は痛気持ちいい程度で、マッサージオイルやクリームを使うとお肌への負担が減ります。入浴後や寝る前など、リラックスした時間に行うと効果的です。なお、皮膚疾患や循環障害がある場合は医師に相談してから実施してください。
そのほかに、足をむくませないためにできることを教えてください
こまめな体位交換が重要です。同じ姿勢を続けると血流やリンパの流れが停滞するため、体位を変えて圧迫を分散します。また、足を心臓より高くして休むことで重力を利用し、余分な水分の還流を促進できます。さらに、室温や衣服を調整し、手足や全身を冷やさないような工夫で血行改善に有効です。十分な睡眠の確保で、夜間の血液循環が促進され、むくみ軽減につながります。日常的に水分・塩分の摂取量を適切に管理することも忘れず行うことが大切です。
編集部まとめ
寝たきりの方は、足の筋肉を十分に動かせないため、血液やリンパの流れが悪くなり、足がむくみやすくなります。むくみを放置すると皮膚トラブルや血栓症などの重篤な合併症につながる場合があり、早めのケアが大切です。むくみ対策には、定期的な体位交換や足を心臓より高くして休むことが有効です。また、足湯やマッサージ、着圧ソックスの正しい使用、バランスのよい食事や適度な水分補給も予防に役立ちます。ただし、皮膚疾患や循環障害がある場合は医師の指示を仰いでください。慢性的・急激なむくみが続く場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
参考文献
