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アストラゼネカ製ワクチンの効果や副反応について解説

 更新日:2023/03/27

わが国で採用されているアストラゼネカ製ワクチンに関してご紹介します。新型コロナワクチンにも様々な形態がありますが、わが国で承認された3つのワクチンについての違いはもちろんのこと、アストラゼネカ製ワクチンの効果、副作用などについて解説していきます。(2021年6月14日時点)

開発が進む新型コロナワクチン

2020年1月、中国が新型コロナウイルスの遺伝子配列を公表してから、ワクチン開発競争が始まりました。

すでに臨床試験がおこなわれているワクチンは48種類もあり、定期接種でわが国でも使用されている不活化ワクチンや生ワクチンという形態だけでなく、ウイルスベクターワクチン、新技術であるDNAワクチンやRNAワクチンなど様々な形態で開発が進められています。

国内で承認された3ワクチン

日本でも接種が開始されているコロナワクチンについて、下記の表に特徴をまとめました。

製薬会社 ファイザー社 モデルナ社 アストラゼネカ社
ワクチン種類 mRNA mRNA ウイルスベクター
日本承認 承認 承認 承認
接種可能年齢 12歳以上 18歳以上 16歳以上
対象者 医療従事者、高齢者、基礎疾患のある人が優先的、次に高齢者が入所・移住する社会福祉施設で働く職員が対象予定
接種回数*1(接種間隔) 2回(約3週間) 2回(約4週間) 2回(約4~12週間)
接種方法 筋肉注射(三角筋)
温度管理*2 -75℃±15℃ -20℃±5℃ 2~8℃
医療機関での保管
(再凍結は不可)
-70℃(6か月)
2~8℃(5日間)
-20℃(6か月)
2~8℃(30日間)
冷蔵庫
開封後の保管条件
室温(2~25℃)
室温で6時間まで
希釈あり(生理食塩水)
室温で6時間まで
希釈不要
室温で6時間まで
2~8℃で48時間まで希釈不要


*1 全てのワクチンはワクチンの定着も含め2回接種が基本です。異なるコロナワクチン同士の互換性は評価されておらず、1回目と2回目は同じワクチンを接種する必要があります。ほかのワクチン(インフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンなど)接種と、14日間以上空けることが推奨されます。
*2 mRNA自体はとても不安定な物質であるため、安定性を確保できるよう超低温にて保管する必要があり、輸送管理が非常に厳重になされています。

アストラゼネカ製「ウイルスベクターワクチン」

ウイルスベクターワクチンは、「組み換えウイルス」ワクチンとも言います。病原体タンパクを作るmRNAをヒトの体内に入れるファイザー社とモデルナ社製のワクチンとは異なるものです。
病原体タンパクを作る遺伝子(DNA)を、ほかの病原性のないウイルスの遺伝子の中に組み込んで、その組み換え遺伝子を持つウイルス(組み換えウイルス)をヒトの体内に入れるのが、ウイルスベクターワクチンです。
どのウイルスも生物の細胞の中に入ると自分が持つ遺伝子を細胞の中に出し、自分と同じ遺伝子とタンパクを複製する性質があります。
ベクターウイルスもヒトの体内で細胞内に入り、自分が持つ遺伝子によってタンパクを作るわけですが、病原体の遺伝子がそこに組み込まれているために、ヒト細胞は病原タンパクを一生懸命作ることになります。
この組み換えウイルスは、遺伝子を運ぶだけの役割であり、そこから「ベクター(vector)」と呼ばれるようになりました。
このベクターウイルスがヒト細胞に入って組み換え遺伝子を細胞内に出し、細胞が持つアミノ酸を使用しながら病原体タンパクを作るため、結果的にmRNAワクチンと同じ作用が起きることになります。
まとめると、病原体タンパクをヒト細胞に作らせるという手段は、ほかのワクチンと同じですが、「mRNAワクチン」は病原体タンパクが分解されないように脂質2重膜のナノエンベロープに包まれたmRNAを注射する方法に対し、「ウイルスベクターワクチン」は遺伝子を病原性のないベクターウイルスを注射する、という違いがあります。

アストラゼネカ製ワクチンの効果は?

新型コロナを発症するリスクが、プラセボ群と比較すると発症予防効果が90%という非常に高い効果が示されています。ただ、残念ながら重症化の予防効果に関しては今の所データがありません。

新型コロナウイルス発症の予防効果

新型コロナウイルス発症の予防効果、すなわち「ワクチンを接種した人が、接種してない人と比べて、どの程度感染を減らせたか」の結果は90%です。
(例)
打った人:1万人中10人発症(0.1%)
打たなかった人:1万人中100人発症(1.0%)
このような違いがある時に、90%の効果があると言えます。
より身近なインフルエンザワクチンについては、時期にもよりますが、一般的に50%程度の予防効果があるので、それと比べるとコロナワクチンの予防効果が優れていることがわかるかと思います。

重症化の予防効果

インフルエンザのワクチンを打っても、インフルエンザに感染する可能性はありますが、決してデメリットばかりではありません。例えば、インフルエンザワクチンは、接種後にインフルエンザに感染しても、重症化を防ぎ、その後の症状が軽くなるケースが多いようです。
コロナワクチンも同様、発症を防ぐ効果とは別に「重症化を防ぐ効果」も期待されています。実際、アストラゼネカ製の新型コロナワクチンでは、臨床試験において、重症化した2名の内の0例がワクチン接種群、2例がプラセボ群でした。このことから、例えワクチン接種によってコロナウイルスを発症したとしても、重症化を防ぐ効果があると考えられています。

アストラゼネカ製ワクチンの副作用は?

アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンは、基本的には安全性に大きな問題はないと考えられています。しかし、どんなワクチンであっても100%安全なものはありません。

副反応はどれくらいの頻度で起こるの?

インフルエンザワクチンと同じ種類の副反応が見られます。副反応は局所反応と全身反応に分かれます。

  • 局所反応:接種部位の痛み、腫れや発赤、接種した側の脇の下のリンパ節の腫れなど
  • 全身反応:頭痛や倦怠感、寒気、関節・筋肉痛など

アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンは、ほかの2つのmRNAワクチンと同様に、基本的には安全性に大きな問題はないと考えられています。現時点では、測定関連の諸々の問題により治験の内容が複雑になっており、正確な数字が論文には記載されていません。
ほかの2つのmRNAワクチンは、接種後の7日以内のワクチン副反応症状の経過を追っています。アストラゼネカについては、治験進行中のいかなる症状も自発的に報告がされています。ワクチンとして当然予想される接種部位疼痛や発熱などの反応性症状は、プラセボ群よりも多く観察されていましたが、明らかにワクチンが原因と思われる重篤な有害事象は、治験期間中には観察されなかったという文言にとどまっています。

アナフィラキシーショックが起こる可能性は?

最も懸念される副反応は、命に関わるアナフィラキシーなどのアレルギー反応によるショックです。2021年2月5日時点の情報ですが、100万接種に8.7例(0.00087%)の割合、つまり約12万人に1人程度です。CDCの報告によれば、不活化インフルエンザワクチンでも100万接種に1.35例(0.0001%)ですから、アストラゼネカワクチンの方が頻度は多少高いことになります。ただ、例えば一般的な抗生剤だと、100万接種で200例(0.02%)になるため、極々少ない割合であるとイメージできるかと思います。

まとめ

アストラゼネカ製新型コロナワクチンは、ウイルスベクターワクチンとして承認されたワクチンです。ウイルスタンパクを自身で作るという結果は同じですが、過程がほかのmRNAワクチンと異なるものになります。
予防効果は90%と極めて高く、有害事象もそこまで多くはないため、アストラゼネカ製の新型コロナワクチンはぜひ接種した方がよいと考えます。

この記事の監修医師