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血糖値を下げる方法は?食べ物・運動・生活習慣の改善について解説

 公開日:2024/02/01
血糖値 下げる

国民病と評され、5疾病に数えられる糖尿病。

40歳以上の約3人に1人が糖尿病・糖尿病予備軍とされ、医師から血糖値が高いため生活習慣を改善するよう指示された方も多いのではないでしょうか。

高血糖の症状は自覚症状に乏しいため、対策の必要性が軽視されがちです。

しかし進行して重度の糖尿病になってしまうと、さまざまな合併症を起こす危険性があるため、早期対策が重要となってきます。

健康診断などで血糖値が高くてもすぐに糖尿病と診断されるわけではありませんが、血糖値を下げる方法について学んでおくことは重要だといえるでしょう。

本記事では血糖値を下げる方法を、食べ物・運動・生活習慣の面から解説します。

初期段階においてはこれらの治療により血糖値を下げる効果が期待できますので、ぜひここで学んでいっていただけたら幸いです。

久高 将太

監修医師
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)

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琉球大学医学部卒業。琉球大学病院内分泌代謝内科所属。市中病院で初期研修を修了後、予防医学と関連の深い内分泌代謝科を専攻し、琉球大学病院で内科専攻医プログラム修了。今後は公衆衛生学も並行して学び、幅広い視野で予防医学を追求する。日本専門医機構認定内科専門医、日本医師会認定産業医。

血糖値を下げる方法は?

血糖値を下げる方法
血糖値を下げる方法は、体内に取り入れる糖質をコントロールする血糖調節ホルモンであるインスリンの働きをよくすることが基本となります。
そのために、食事療法・運動療法・薬物療法の3つを根幹の治療として行い、血糖コントロールが可能な状態を目指していきます。
そもそも血糖値が高い状態というのは、どのような状態を指すのでしょうか。
糖尿病の診断とは少し基準が異なりますが、基本的には以下の状態を指します。

  • 血液中のブドウ糖の濃度が空腹時でも正常範囲に収まらない
  • 食後の血糖値が正常値の範囲外まで急上昇する

これら原因の多くは血液中のブドウ糖濃度を調節するホルモンであるインスリンの分泌が不足している、または効きが弱いのが原因です。
インスリンとは血糖値に直接作用する唯一のホルモンであり、このインスリンの働きを正常なものへ近づけることが、血糖値を下げる方法として有効になります。
上述した食事療法では、血糖値を下げるのに良い食べ物を摂取することにより、血糖値の上昇を緩やかにすることを目的としています。
運動療法においては、肥満によりインスリン分泌量が減るとされていることから、肥満改善・インスリン分泌量の増加・インスリン受容体の適切な働きを目的とするものです。
一般的な治療では食事療法・運動療法を中心に行い、改善があまり見られない場合に薬物療法(経口血糖降下薬・インスリン治療など)が用いられます。

血糖値を下げるのに良い食べ物

血糖値を下げるのに良い食べ物
血糖コントロールを適切に行うには、血糖値を下げるのに良い食べ物を知る必要があります。
血糖値を下げるのに良いとされる食べ物を以下に示します。

  • 野菜
  • 海藻類
  • きのこ類
  • ビタミン・ミネラルが豊富な食べ物
  • 低GI値の食べ物
  • たんぱく質の多い食べ物

これらは糖質の吸収が緩やかな食べ物であり、糖尿病・糖尿病予備群の方には積極的に摂取して欲しい食材です。
食事療法は血糖コントロールには必要不可欠です。食事を改善しなければ、運動・薬物療法の効果は低下してしまいます。
ここからは上述した食べ物について詳しく解説します。

野菜

野菜
野菜に多く含まれている食物繊維は、小腸で糖質が吸収される速度を遅らせる効果があるため、血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。
野菜はほかにも以下のメリットがあります。

  • 便秘予防・改善
  • 有害物質の排泄促進
  • 腸内環境の改善
  • 低カロリー

肥満にも効果があるので、積極的に摂りたい食べ物です。
食物繊維には水溶性と不溶性があり、糖質の吸収を遅らせるのは水溶性の食物繊維ですので、多様な野菜をバランスよく摂取すると良いでしょう。
ただしイモ類はデンプンが豊富なため、血糖値を上昇させやすいとされています。食べてはダメではありませんが、食べ過ぎにはくれぐれも注意しましょう。

海藻類

海藻類
海藻類には水溶性の食物繊維が豊富に含まれているため、糖質の吸収を緩やかにする効果があります。
料理にも取り入れやすく、汁物・酢の物・煮物などバリエーションが幅広いのも嬉しいポイントです。
ところてん・海苔の佃煮のような加工品も多く市販されているので、積極的に活用すると良いでしょう。デザート作りに寒天を活用するのもおすすめです。
ミネラル豊富でコレステロールの吸収を抑える働きもあるので、肥満予防・改善にも効果的です。

きのこ類

きのこ類
きのこ類は食物繊維・ビタミンB群・ミネラルが多く含まれている食べ物です。
水溶性食物繊維・不溶性食物繊維がバランス良く含まれており、料理への活用もしやすいため、積極的に摂取すると良いでしょう。
特にきのこ類は野菜の中でビタミンB群を比較的多く含んでいます。ビタミンB群は糖代謝酵素の働きを助ける補酵素となるビタミンで、糖質の代謝に大きく影響するものです。
血糖値を下げるには重要な役割を果たしますから、日々の食事に取り入れてみましょう。

ビタミン・ミネラルが豊富な食べ物

ビタミン・ミネラルが豊富な食べ物も、血糖値を下げるのに有効です。糖代謝にはビタミン・ミネラルが深く関係し、インスリンの働きを助ける効果があります。
代謝はさまざまな栄養素が複雑に作用しあうことで潤滑な反応が得られますから、ビタミン・ミネラルともに不足しないよう心がけるのが大切です。
ただし透析の患者さんなど、腎臓に疾患のある方はカリウムを制限する必要があります。
ビタミン・ミネラルが豊富な食べ物にはカリウムが多く含まれている食品も多いため、食べて問題ないかは担当医師に確認してください。
またビタミン・ミネラルと聞くとフルーツを連想される方も多いかと思いますが、フルーツは果糖を多く含む食品です。
一般的にフルーツに含まれる糖質は血糖値を上昇させにくいとされていますが、摂りすぎは禁物です。
糖が添加されている缶詰などは避け、なるべく基礎代謝の高い朝に適量を摂取するようにしましょう。

低GI値の食べ物

血糖値を下げるには低GI値の食べ物も効果的です。
低GI値の食べ物とは、GI(グリセミック・インデックス)と呼ばれる食後血糖値の上昇しやすさを示す指標において、血糖値が上昇しにくい食品と評価されたものです。
この数値は食品ごとに決められており、例えば同じパンでも一般的な食パンは高GI、全粒粉・ライ麦などのパンは低GIとされています。
食べ物を選ぶ際にはGI値を考慮して、低GIの食べ物を選ぶと良いでしょう。低GIの食べ物は、次の食事で摂取する食材による血糖値の上昇も抑える働きがあるとされています。
食事に低GI値の食べ物を選べば、1日をとおして血糖値の振れ幅を抑える効果が期待できます。なお、GI値はカロリーと関連性はありません。

たんぱく質の多い食べ物

たんぱく質は筋肉・肌・髪・体内ホルモンなど体を作るのに必須の栄養素です。
血糖値を下げるには、たんぱく質の多い食べ物も意識的に食事に取り入れましょう。
たんぱく質は筋肉を増やす働きがあり、筋肉量が増加することで、血液中の糖質消費が促進されます。
さらにたんぱく質が不足すると、以下のデメリットがあることが分かっています。

  • たんぱく質が不足したメニューは炭水化物の比率が高くなる傾向があり、血糖値上昇に繋がる
  • 筋肉量が減ることで血液中の糖質が消費されにくくなり、血糖値が上昇してしまう

摂取する際は標準体重1kgあたり1.0~1.2gあたりを目安にすると良いでしょう。
各栄養素の比率は以下を参考にしてください。

  • 炭水化物:40~60%
  • たんぱく質:20%
  • 脂質:20~30%

たんぱく質を料理に取り入れる際には塩分・脂質の過剰摂取が起こりやすいため、シンプルな味付け・調理方法を意識してみてください。

食べる順番や速度も大事

食事の際、食べ物を食べる順番や速度も大切です。
食品には血糖値を上昇させやすいもの・させにくいものがあり、食事の始めに血糖値を上昇させにくい食べ物を持ってくることで、食後血糖値の上昇を緩やかに抑えられます。
具体的には水溶性食物繊維を多く含む野菜・きのこ・海藻などから食べ始め、続いて汁物・たんぱく質、終盤に糖質を多く含む炭水化物を食べるようにします。
すると始めに摂取した水溶性食物繊維が糖質・脂質の吸収を抑制してくれるので、血糖値をコントロールしやすくなるのです。
食事の際には食べる順番にも気を配りましょう。また食べる速度も大事です。
食事で満腹感を得るには血糖値の上昇を満腹中枢が感知する必要がありますが、感知してから実際に「満腹」と感じるまでには約15分かかるとされています。
この間に食事を摂取し過ぎると栄養素の吸収・消費が追いつかず、筋肉が消費しきれなかった糖質が血液中に溢れてしまうことになるのです。
食事は一口30回以上よく噛み、15分以上かけて食べることで過剰な糖質摂取を防いでくれます。
適切な食事量にもつながるので、肥満予防・改善にも効果があり、結果としてインスリンの働きを助けることにもなります。

血糖値を下げるための運動

血糖値を下げるための運動
血糖値を下げるための運動は有酸素運動・筋力トレーニングがあり、ここまで解説してきた食事療法と合わせることで、血糖値の改善が大いに期待できます。
食事療法が適切な糖質の摂取を目的にしているのに対し、運動療法はインスリンの働きを良くすることを目的としています。
運動するタイミングは食後1時間以内に行うと食後血糖値の上昇を緩やかに抑えるとされていますが、無理のない範囲で長く続けていくのが重要です。
特に高齢・持病など、運動面に配慮する必要がある方は個人の判断で運動量を決めるのは避けるべきです。
年齢・健康状態・基礎体力など踏まえたうえで、適切な運動療法を行いましょう。ここからは血糖値を下げるための運動について解説します。

有酸素運動

有酸素運動とは、ウォーキング・水泳・エアロビクスなど、長時間の持続可能な全身運動のことです。
エネルギー源である糖質・脂質・たんぱく質とともに酸素もエネルギー源とすることから、有酸素運動と呼ばれます。
血糖値を下げるには、ウォーキングで1日あたり約10,000歩が有効であるとされ、糖代謝の改善効果は運動後約1~3日間続くとされています。
血糖コントロールを維持するには運動しない日を2日間以上、作らないようにすると良いでしょう。
また運動前にはストレッチをして体をほぐしてから行うと、ケガの予防につながります。

筋力トレーニング

筋力トレーニングとは、筋肉を増加させることを主目的とした運動で、一般的に無酸素運動と呼ばれるものです。
腹筋・腕立て伏せ・短距離走など、高負荷状態の運動になるため長時間の運動には向きません。
有酸素運動が糖質・脂質・たんぱく質とともに酸素もエネルギー源としていたのに対し、無酸素運動は糖質・脂質・たんぱく質のみをエネルギー源とします。
エネルギー消費量が多いので効率的な糖質・脂質の消費につながり、肥満予防・改善にも有効です。
しかし高負荷であるため適切な運動量を見極める必要があり、年齢・体力などを加味したうえでメニューを組むようにしましょう。

2つを組み合わせて行うとより効果的

血糖値を下げるには、上述した有酸素運動・筋力トレーニングの2つを組み合わせて行うとより効果的です。
有酸素運動の効果で糖質・脂質の消費が促進され、筋力トレーニングにより筋肉が増大することで、消費できる糖質・脂質の絶対量の向上が見込めます。
この2つを効率よく組み合わせて行うのが理想的ですが、運動メニューがよく分からないという方は、水泳をすると良いでしょう。
水泳は膝への負担が少なく、有酸素運動・筋力トレーニング両方の効果が期待できるため、すすめる医師も多い安全な運動です。肩こりの解消にも効果があります。
また筋力トレーニングに不慣れな方は、スロートレーニングを意識してみるのも良いでしょう。
比較的負荷の低い腕立て伏せなどでもゆっくりと動作を行うことで、通常時より負荷をかけることが可能です。
無理のない範囲で、フォームに気を配りながら取り組んでみましょう。

運動習慣がない人は軽い運動から

運動習慣がない人は軽い運動から始めましょう。くれぐれも無理は禁物です。
座った状態でできるストレッチ・壁を使った腕立て伏せなどから始めるのも良いでしょう。
水中ウォーキングは腰・膝への負担を減らしながら全身運動ができるので、多くの患者さんに取り入れていただきたい運動です。
体温を一定に保つため陸上より糖質・脂質が消費されやすくなるだけでなく、水圧により筋力・心肺機能の強化が期待できます。
まずは短時間から、健康状態を考慮したうえで行うと良いでしょう。ただし合併症などにより運動制限がある場合は、必ず医師の指示にしたがってください。

血糖値を下げるために生活習慣の改善は必要?

生活習慣の改善
血糖値を下げるために生活習慣の改善は必要です。ここまで解説した食事療法・運動療法は相互に作用しあうことで、初めてその効果を充分に発揮できます。
血糖値が高い状態は糖尿病・糖尿病予備軍とされ、生活習慣病に数えられます。生活習慣病には運動不足が要因としてあげられているものがあり、糖尿病もその一つです。
そのため従来の薬物療法に加え、食事療法・運動療法が重要視されるようになり、特に初期の段階では大幅な改善が見込まれるとされています。
とはいえ、いきなり食事メニューの変更・運動習慣をつけるのは難しいと感じる方もいるかもしれません。
そのような方はまず、1駅分歩いてみる・階段を使うようにする・食べる順番や速度に気を配るなど、取り組みやすいところから始めると良いでしょう。
このような積み重ねを継続していくことが、血糖値を下降・維持していくのに重要となります。

血糖値の正常範囲は?

血糖値の正常範囲
ここまで血糖値を下げる方法について解説しましたが、そもそも血糖値の正常範囲はどのくらいなのでしょうか。
一般的に血糖値は食事の前後で変わるものであり、高血糖と診断されるのは空腹時・食後の基準を逸脱した場合です。
また血糖値の他HbA1c(ヘモグロビンA1c)も測定し、その数値も鑑みて糖尿病などの診断が出されます。
空腹時・食後血糖値の正常範囲については、次項で解説します。

空腹時の血糖値の正常範囲

空腹時の血糖値の正常範囲については、生活習慣病の発見を目的とした特定健康診査において、以下のように範囲を定めています。
空腹時の血糖値は100mg/dl以上が正常範囲です。
しかし空腹時の血糖値が100mg/dlを越えたからといって、すぐに糖尿病と診断されるわけではなく、100〜109mg/dlは「正常高値」として扱われます。
110〜125mg/dlは境界型(糖尿病予備軍)、126mg/dl以上で糖尿病が非常に疑わしいと診断されるのです。

食後の血糖値の正常範囲

食後の血糖値は200mg/dl以上で糖尿病型と診断されるため、200mg/dl以下に抑える必要があります。
空腹時の血糖値が正常でも、食後の血糖値が200mg/dlを越えてしまう方もおり、そのような状態を血糖値スパイクと呼びます。
血糖値スパイクは食後高血糖の状態を指す用語で、いわゆる「隠れ糖尿病」とされるものです。
一般的な健康診断では空腹時の血糖値のみを測定し食後の血糖値を測定しないため、人間ドッグなど受けていない場合、早期に発見できない可能性があります。
食後の血糖値が正常範囲に収まっているか、適切な検査を受けるのが大切です。

そのほかに血糖値を下げるために意識するべきことは?

血糖値を下げるために意識するべきこと
ここまで血糖値について解説してきましたが、そのほかに血糖値を下げるために意識するべきことは何があるでしょうか?
血糖値の異常による症状は、かなり血糖値が高くないと現れません。そのため初期の段階で気づくのが難しく、気づいたときにはかなり進行していることも珍しくないのです。
上述してきた食事療法・運動療法に取り組むのはもちろんですが、それらを無理なく継続していくのが大切です。
調味料を減塩のものに変え、代わりに出汁を上手く活用するのも良いでしょう。アルコールを飲む際はおつまみを工夫するのも良いです。
ストレスをためないよう間食とも上手に付き合っていきたいものです。食事・運動はこの先ずっと続けるものという意識で、ご自分にあった無理のない方法を探してみてください。

編集部まとめ

血糖値 下げる まとめ
本記事では血糖値を下げる方法について解説してきました。

高血糖は自覚症状がほとんどないので、医師の指示を受けてもまだピンとこないという方もいるかもしれません。

しかし高血糖状態が続き、糖尿病へと進行・深刻化すると、失明・神経障害・腎不全などの大病につながる危険性を孕んでいます。

初期段階であれば食事療法・運動療法で充分改善が期待できるものですから、長い目で見て取り組みやすいところから、ぜひ始めてみてください。

この記事の監修医師