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「小腸がんの原因」はご存じですか?発症率や生存率についても医師が解説!

 更新日:2025/09/16
「小腸がんの原因」はご存じですか?発症率や生存率についても医師が解説!
小腸がんは、小腸の組織から発生する悪性腫瘍で、胃と大腸をつなぐ小腸にできるまれながんです。小腸は栄養吸収を担う細長い臓器ですが、この部分に生じるがんは種類もさまざまで、神経内分泌腫瘍(カルチノイド)、腺がん、悪性リンパ腫、肉腫などがあります。本記事では、小腸がんの代表的な種類や発症率、予後、治療方法についてわかりやすく解説します。
和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

小腸がんの概要

小腸がんとは、小腸(十二指腸・空腸・回腸)に発生する悪性腫瘍の総称です。小腸は胃と大腸の間にある長さ6~7mほどの消化管で、胃側から十二指腸、空腸、回腸の3つに区分されます。小腸に生じるがんはまれで、すべてのがんのなかでも0.5%未満とごく少数です。人口10万人あたりの年間発症数が6人未満という希少がんに分類されています。

小腸がんの原因

小腸がんの明確な原因は解明されていません。しかし、小腸に生じる腫瘍の種類によって、発生の背景や危険因子がある程度知られています。以下に主な種類ごとに解説します。

神経内分泌腫瘍(カルチノイド)

神経内分泌腫瘍は、ホルモンを産生する神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。消化管に発生するNETはカルチノイドとも呼ばれ、進行がゆっくりした腫瘍です。小腸がんのなかで最も発生頻度が高いタイプです。しかし原因は明らかでなく、一般にリスク因子も少ない腫瘍です。一部には多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)や神経線維腫症1型(NF1)といった遺伝性の病気が背景にあることがわかっています。

腺がん

腺がんは、小腸の粘膜上皮から発生する一般的ながん細胞タイプです。小腸腺がんは全消化管腫瘍のなかではまれですが、十二指腸に多く発生しやすい傾向があります。小腸腺がんの直接的な原因は不明ですが、いくつかの危険因子が知られています。例えばクローン病などの炎症性腸疾患を長年患っている場合や、グルテンに対する自己免疫疾患であるセリアック病の患者さんでは、小腸腺がんのリスクが高まることがわかっています。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫はリンパ球(白血球の一種)の腫瘍で、消化管に発生するリンパ腫の一つとして小腸にも生じる場合があります。ほかの小腸がんとは性質が異なり、血液のがんです。セリアック病に伴って小腸に発生する特殊なリンパ腫(腸管型T細胞リンパ腫)が知られています。

肉腫

肉腫とは、筋肉や神経、脂肪などの間葉系(粘膜以外の組織)に由来する腫瘍です。小腸に発生する肉腫の代表例は消化管間質腫瘍(GIST)であり、小腸のほか胃などにも発生する間葉系由来の悪性腫瘍です。小腸の肉腫はほかにも平滑筋肉腫などがありますが、頻度はとても低く、明確な原因や生活習慣との関連は解明されていません。肉腫の発症には男女差はなく、中高年以降にやや多い傾向があります。

小腸がんの発症率

小腸がんは発生頻度の低いがんです。前述のとおり、小腸腺がんは全悪性腫瘍の0.5%以下、消化管腫瘍全体でも5%以下に過ぎません。欧米の疫学データでは、小腸腺がんの年間発症率は人口10万人あたり0.22~0.57人程度とされ、きわめてまれな腫瘍です。日本においても同程度かそれ以下と推定されており、国立がん研究センターは小腸がんを希少がんとして位置付けています。

小腸がんの予後

小腸がんは全体として予後は大腸がんや胃がんと比べて劣る傾向にあります。その理由の一つは、前述のように早期発見が難しく進行した段階で見つかる例が多いためです。実際、症状が出てから見つかるケースではすでにリンパ節や他臓器へ転移していることも少なくありません。このように進行がんとして見つかりやすいことから、5年生存率もステージ(病期)によって大きく異なります。国立がん研究センター中央病院で手術治療を受けた患者さんのデータによれば、小腸腺がんの5年生存率はステージIで80.8%と良好ですが、ステージIII Bでは20.8%と大きく低下します。

小腸がんの治療方法

小腸がんの治療は、腫瘍の種類と病期(ステージ)によって異なります。

腺がんの場合

一般的な小腸腺がんの場合、手術による切除が特に有効な治療法です。幸い小腸は長さに余裕があるため、腫瘍がある小腸の一部と周囲のリンパ節を切除してつなぎ直す手術が行われます。ステージIのうち、腫瘍が粘膜下層までにとどまっていて内視鏡で切除可能と判断される場合には内視鏡的切除が選択されます。十二指腸の入口付近に限局したごく早期の腫瘍であれば、上部消化管内視鏡で切除できるケースもあります。

一方でステージII~IIIでは腫瘍が壁深くまで及んでいるため外科的手術で病変部位を切除するのが標準的です。この際、小腸だけでなく付近のリンパ節もまとめて切除し、転移の可能性がある組織を取り除きます。手術によって肉眼的に腫瘍をすべて取り切れれば根治切除となります。ただし、小腸腺がんでは手術後の追加治療(抗がん剤投与など)による再発予防効果は確立していません。そのため、根治手術後は定期的な経過観察を行い、再発がないかフォローしていくことになります。

ステージIV(遠隔転移がある場合)や手術後に再発した場合は、抗がん剤による化学療法が主体となります。小腸腺がんに対して明確に承認された薬剤は多くありません。しかし、過去の臨床試験の成果から大腸がんで用いられる抗がん剤レジメン(例えばFOLFOX療法など)が有効であることが示されており、2018年より進行・再発小腸がんにFOLFOX療法が保険適用となっています。この治療により症状の緩和や生存期間の延長が期待できます。しかし、標準的な一次治療(FOLFOXなど)が効かなくなった後の有効な薬剤は限定的で、二次治療以降では奏効率が低いのが現状です。

近年、遺伝子検査によりマイクロサテライト不安定性(MSI)という特徴を持つ小腸腺がんには免疫チェックポイント阻害薬(ペンブロリズマブ)が有効であることがわかり、MSI陽性の症例では免疫療法が行われるようになってきました。このように患者さんごとの腫瘍の性質に応じて、新しい治療法を取り入れる試みも進んでいます。

腺がん以外の場合

なお、小腸がんは腫瘍の組織型によって治療法も異なる点に注意が必要です。上記は主に小腸腺がんを念頭に置いた治療ですが、例えば悪性リンパ腫が小腸に発生した場合は手術ではなく化学療法が中心となります。

標準的には全身の悪性リンパ腫に準じた方法(例えばR-CHOP療法など)が選択され、必要に応じて放射線治療が追加されることもあります。また神経内分泌腫瘍(カルチノイド)の場合、局所的であれば外科的切除を行いますが、進行例では腫瘍がゆっくり進行する特性に合わせて薬物療法を行うことがあります。

症状を引き起こすホルモン分泌を抑えるソマトスタチンアナログ製剤や、増殖を抑える分子標的薬(エベロリムスなど)が使用されることがあります。一方、肉腫では2000年代以降に分子標的治療薬の登場が画期をもたらしました。GISTの場合、手術で取り切れない進行例に対してイマチニブ(グリベック)という分子標的薬が導入され、とても高い効果を示しました。このように、小腸がんは一括りにできず、それぞれのタイプに応じて適切な治療法が選択されます。

小腸がんについてよくある質問

ここまで小腸がんを紹介しました。ここでは「小腸がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

小腸がんにはどのような症状がありますか?

小腸がんは早期には自覚症状がほとんどありません。症状が現れる頃にはある程度進行していることが多いです。進行した小腸がんの症状としては、腹痛や腹部膨満感が代表的です。腫瘍から出血すると貧血が生じたり、便に血が混じることがあります。腫瘍が大きくなって腸管を狭くすると食後に吐き気・嘔吐や腸閉塞による激しい腹痛が起こる場合もあります。特に十二指腸にできた腫瘍が進行すると、胆汁の出口である乳頭部をふさぐことで黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)が現れることがあります。

小腸がんはどのような検査をするのですか?

小腸がんの診断には、内視鏡検査や画像検査が組み合わされます。多くの患者さんは便潜血検査の陽性や進行した貧血・腹痛などの症状をきっかけに検査が始まり、小腸がんが疑われます。疑いがある場合、まず腹部CT検査や小腸造影検査で腫瘍の存在部位を推定します。また、小腸内視鏡と呼ばれる特殊な内視鏡検査で直接腫瘍を観察・生検して診断を確定します。

まとめ

本記事では小腸がんと、その治療などについて解説しました。小腸がんは小腸に発生するまれながんで、腫瘍の組織型は多彩で、それぞれ性質や治療法が異なります。見つかったときには進行していることが多い病期ですが、治療法は徐々に進歩してきています。本記事がそんな小腸がんを調べるきっかけになれば幸いです。

関連する病気

  • クローン病(Crohn病)
  • 小腸ポリープ
  • メッケル憩室炎
  • 小腸悪性リンパ腫
  • 潰瘍性大腸炎

関連する症状

  • 持続的な腹痛・不快感
  • 悪心・嘔吐
  • 体重減少・食欲不振
  • 腹部膨満感
  • 便通異常

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