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“介護疲れ”から“介護うつ”にならないために 介護のストレス・疲れを軽減する方法を介護福祉士が解説

 公開日:2023/09/20
“介護疲れ”から“介護うつ”にならないために 介護のストレス・疲れを軽減する方法を介護福祉士が解説

自宅で介護をしている人がかかる「介護うつ」。介護うつは誰もがかかる可能性があります。在宅介護は心身共に疲弊するものです。周りに相談できる人がいない場合、特に孤独感が強まり、介護うつに陥る危険性が高くなります。今回は、介護うつの予防法や高齢者介護のポイントについて、介護福祉士の佐藤さんにお話を伺いました。

佐藤 恵美

監修介護福祉士
佐藤 恵美(介護福祉士)

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1976年生まれ、愛媛県出身。介護・福祉系ライターとして活動中。高校卒業後、販売や営業事務職を経験。30代後半から通信制の大学や専門学校で学びながら看護助手として勤務。夜勤もこなしつつ、介護福祉士、社会福祉士など複数の資格を取得。現在は老人保健施設で支援相談員として従事している。

介護うつの原因と症状を解説 介護うつになりやすい人の特徴は?

介護うつの原因と症状を解説 介護うつになりやすい人の特徴は?

編集部編集部

はじめに介護うつについて教えてください。

佐藤 恵美さん佐藤さん

「介護うつ」とは、家族や身内などを介護している人が、介護を通しての不安やストレスが継続的に蓄積され、引き起こされるうつ病のことを言います。「介護うつ」という正式な病名があるわけではなく、症状は一般的なうつ病と同じです。“介護が発症要因となっているうつ病”というイメージですね。

編集部編集部

介護うつの原因は何でしょうか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

介護疲れストレス現在や未来への不安が主な原因です。これらが積み重なると、身も心も休まらなくなります。休養が満足に取れない日々が続くと、脳の処理機能が低下し、脳のエネルギー不足に繋がります。その結果意欲や判断力が落ちてしまい、これまでのように元気に動けなくなってしまうのです。

編集部編集部

介護うつの特徴にはどのようなものがありますか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

介護うつにかかると、心身共に症状が表れます。具体的な症状は以下の通りです。
食欲がなくなる
眠れなくなる
疲れやすくなる
常時倦怠感がある
これまで楽しいと感じたことへの興味がなくなる
良いことがあっても気分が晴れない、上向かない
何をしていても楽しめず、疲労感が募る

常に疲れを感じ、これまで熱中していた趣味などに無関心になります。認知症の方を介護している場合、徘徊などの危険も考慮し、常時見守りが必要になるケースがほとんどです。そのため、介護者の自由な時間が少なくなってしまいます。介護に追われるうちに、本来であれば意欲的に取り組んでいたことに対して「面倒だな」「おっくうだな」と感じるようになります。体の調子も悪くなり、いつも疲れている状態に陥る人もいます。

編集部編集部

介護うつになりやすいのはどのような人ですか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

真面目で几帳面な人が介護うつになりやすいと言えます。完璧主義で責任感の強い人も要注意ですね。「丁寧な介護をしよう」「行き届いた充分な介護をしよう」と思うあまり、頑張り過ぎてしまうからです。また、周りに気を遣い過ぎてしまう人体の弱い人も介護うつになりやすいタイプです。たとえば徘徊で近隣の人や警察に保護されると、家族は「迷惑をかけてしまった」と思い悩みます。たとえ周囲の人達が「大丈夫ですよ」「お互い様ですよ」と言ってくれても、申し訳ない気持ちでいっぱいになり気持ちが落ち込んでしまう人もいます。こうしたことが積み重なると、介護うつにかかりやすくなります。

編集部編集部

ストレスが限界に達したらどのような症状が出るのでしょうか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

体にも心にも深刻な症状が表れます。具体的な症状は以下の通りです。
涙が止まらなくなる
頭痛、めまい
眠れない
腹部症状(便秘、下痢など)
マイナス思考に囚われる
普通に生活していても悲しい気持ちになる
自責の念にかられ正常な思考が保てなくなる

これらの症状は、自分の力でコントロールしたり緩和したりできません。いつもなら不調を感じれば受診を考えるのに、ストレスが限界に達するとそうした判断能力や思考能力が著しく低下してしまいます。そうすると、普段できていたことができなくなり、過度なマイナス思考に陥ります。

介護うつを予防するにはどうすればいい? 介護サービスは利用した方がいい?

介護うつを予防するにはどうすればいい? 介護サービスは利用した方がいい?

編集部編集部

介護うつ予防のためにできることはありますか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

主に下記のことをするといいでしょう。
介護サービスを利用する
少しでいいので、趣味を楽しむ時間を作る
適度に運動する
「完璧な介護はしなくていい」と自分を許してあげる
家族や友人、近隣の人など、1人でもいいので話したり相談したりできる人を見つける
食事はきちんと食べる

介護に割く時間が長いため、これらの対策が難しいと感じられるかも知れません。ですが、改まって何かを始める必要はないのです。例えば、運動は「徒歩で買い物に行く」「近隣を散歩する」などでOKです。誰かに相談するのをためらう人も多いのですが、実際に介護問題で悩む人はけっこういらっしゃいます。同じ苦しみを共有できる相手が1人いるだけで、気の持ちようが大きく変わります。真面目な人には難しいかも知れませんが、「満点の介護をしなくていい」と考えてみてください。食事はご飯や汁物、簡単なおかずだけで大丈夫です。栄養のバランスが取れると、心のバランスも整ってきます。

編集部編集部

介護サービスを利用した方がいいのでしょうか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

先程挙げた対策は「時間がないからできない」と思われる方も多いでしょう。自分のための時間を確保するに、介護サービスを活用していただきたいと思います。在宅介護において、最も避けたいのは家族が本人と共倒れになることです。そうならないために、介護サービスを積極的に使うのをおすすめします。

編集部編集部

介護サービスを利用するには、まずどうすればいいですか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

まずはお住まいの市区町村の市役所に問い合わせましょう。こちらが具体的な順序です。
1.市区町村の窓口で養介護認定の申請をおこなう
2.認定調査を受ける
3.調査の結果、主治医意見書の内容を踏まえて要介護度が出る
4.要支援または要介護度によって、地域包括支援センターや居宅介護事業所へ連絡し、ケアプランの作成を依頼
5.受け入れ施設等との調整を経て、サービス開始

編集部編集部

おすすめの介護サービスはありますか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

在宅介護であれば、デイサービスショートステイがおすすめです。どちらも要支援1から要介護5の人を受け入れてくれます。デイサービスは日帰りのサービスです。入浴やレクリエーション、リハビリなどがおこなえます。ショートステイはご家族が入院するときなどに利用できる、泊まりのサービスです。ご家族が入院する時、あるいは遠方に何日か行かなければならない時などに活用できます。

高齢者の介護のポイントを介護福祉士に聞く 普段から気をつけるべきこととは

高齢者の介護のポイントを介護福祉士に聞く 普段から気をつけるべきこととは

編集部編集部

高齢者を介護する上で気をつける点は何でしょうか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

いくつかポイントがあります。高齢者の介護にあたって特に気をつけたいのはこちらの点です。
傾聴姿勢を心掛ける
慌てない
相手を「待つ」気持ちを持つ
落ち着いた声かけ

高齢者は動作が遅くなり、想いを言葉にするのもゆっくりになります。大切なのは急かさずに待つことです。途中で言葉を遮られたり、「早くして」などと言われたりすると自尊心を傷つける結果に繋がります。介護者自身がゆったりと構えて受け入れる姿勢で臨むと、ご本人も安心できます。

編集部編集部

傾聴とは何ですか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

相手の話に耳を傾け、同意や共感を持って関わることです。認知症の高齢者は何度も同じ話を繰り返す人が多いので、聞いている介護者はイライラしてしまう時があります。しかし、本人の話に頷く姿を見せるだけで「この人は私の話を聞いてくれるのだ」という安心感を持ってもらえるので、結果的に落ち着いて過ごせるようになります。

編集部編集部

身体的に注意すべき点はありますか?

佐藤 恵美さん佐藤さん

高齢者は注意力が低下しているケースが多いので、ちょっとした段差にもつまずきやすくなっています。そのため、転倒防止対策はしっかりおこなう必要があります。高齢になると骨がもろくなり、一度の転倒が骨折や寝たきり状態に繋がる恐れもあります。そのため住環境の整備は必須です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

佐藤 恵美さん佐藤さん

在宅介護は大変負担の大きいものです。しかし、「家族のことだから家族で」と考えてはいけません。責任感を持って介護にあたるのは素晴らしいことですが、身内だけで介護を続けるのは限界があります。介護を頑張り過ぎてご家族が倒れてしまっては、元も子もありません。苦しい気持ちを誰かに聞いてもらったり、時には介護を専門家に任せたりして、自分が息をつける時間を作るのが介護うつを回避するコツです。

編集部まとめ

介護うつを予防するためには、適切な対策と上手なサービス利用がカギになると分かりました。時には肩の力を抜いて、周りに頼ることが大切です。在宅介護を続けるには、まず介護者が自分を労わる気持ちを忘れてはいけません。かかりつけ医や市役所や地域包括センターなどで、悩んでいることや困っていることを相談してみましょう。決して自分だけで抱え込まず、利用できる介護サービスをうまく取り入れてみてください。

この記事の監修介護福祉士