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「自宅での介護疲れを軽くしたい…」なにから取り掛かればいいの?

 更新日:2023/03/27
「自宅での介護疲れを軽くしたい」、なにから取りかかればいいの?

介護が必要になった場合、大変な思いをするのは介護が必要になった本人自身ですが、支える家族側のストレスも大きいものです。24時間の介護で、それがいつまで続くか分からないといった状況の中で、「介護疲れ」を感じる家庭も少なくありません。そんな介護疲れに、どう向き合っていけばいいのでしょうか。今回は、介護現場でのご経験を長く持ち、現在は講師としても活躍されている、「天晴れ介護サービス総合教育研究所」の榊原さんにお話を伺ってきました。

榊原宏昌

監修介護福祉士
榊原 宏昌(天晴れ介護サービス総合教育研究所 介護福祉士・介護支援専門員)

プロフィールをもっと見る

京都大学経済学部卒業後、特別養護老人ホームに介護職として勤務。社会福祉法人、医療法人にて15年間、介護現場での仕事を経験した後、2015年年4月、「介護現場をよくする研究・活動」を目的として「天晴れ介護サービス総合研究所」を設立。執筆、研修講師、コンサルティング活動に加え、ブログやfacebook、YouTubeなどでの情報発信も積極的におこなっている。

まずは相談できる人を作る

まずは相談できる人を作る

編集部編集部

介護が大変なのですが、相談できる人がおらず困っています……。

榊原宏昌榊原さん

介護に関する悩みは、「市役所」や「地域包括支援センター」、もしくはケアマネージャーのいる「居宅介護支援事業所」などで相談してみてはいかがでしょうか。

編集部編集部

市役所は分かりますが、あとの2つがよく分かりません。

榊原宏昌榊原さん

介護が必要にならなければ、普段はあまり関わらないですからね。いずれも市役所で教えてもらえますが、「地域包括支援センター」というのは、介護が必要になった時、市役所とともに最初に相談を受け付けることが多い機関です。地域ごとに管轄が決まっているので、市役所で紹介してもらうか、ホームページなどから調べることもできます。また、介護保険のサービスを受ける時に必要な「要介護認定」の申請のお手伝いもしてもらえます。

編集部編集部

居宅介護支援事業所というのは何でしょうか?

榊原宏昌榊原さん

こちらは、いわゆるケアマネージャーが配置されている機関です。担当のケアマネージャーがついてくれて、ご本人やご家族のお身体や生活の状況を見て、適した介護サービスを組み合わせた「ケアプラン」を提案してくれます。

介護サービスの利用を検討するのがベター

介護サービスの利用を検討するのがベター

編集部編集部

介護保険のサービスには、どのようなものがあるのでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

自宅で生活しながら受けるサービス」と「施設に入って受けるサービス」に大きくわけることができます。自宅で生活しながら受けるサービスには、自宅に訪問してサービスを受けるものや、いわゆるデイサービスといった施設に通うもの、そして、短期間宿泊するショートステイなどがあります。また、福祉用具を借りたり、看護やリハビリテーションのサービスを受けたりすることもできます。

編集部編集部

もう一方の、施設に入って受けるサービスはどうでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

こちらのサービスも、自宅同様にいくつか種類があります。例えば、小規模なものから大規模な施設、あるいは認知症専門や医療依存度が高い方向けなど、様々なサービスが展開されています。

編集部編集部

必要な手続きなどはあるのですか?

榊原宏昌榊原さん

まずは要介護認定といって、要支援1から要介護5までの介護の必要度合いを確認します。加えて、先ほど説明した居宅介護支援事業所のケアマネージャーが、ケアプランの作成をはじめ、様々な手続きをサポートしてくれます。なお、介護サービスを利用する費用は、所得にもよりますが1割から3割ほどです。食費やお部屋代などは実費になるので要確認です。

編集部編集部

「介護は家族がやらないといけない」と思っている家族も多いのでしょうか?

榊原宏昌榊原さん

そうですね。もちろん、その家族の考え方に個人差はありますが、特に施設を利用する時、「自分たちが介護しなくていいのだろうか?」と葛藤する家族は多いと思います。ただ、共倒れになってしまっては元も子もないですし、介護する家族自身の心身の健康を保つことは、介護が必要な本人さんにとっても重要なことだと思います。上手に助けを借りながら、介護を続けていける環境が好ましいですね。また、老人保健施設などでは、入所後に本人の状態がよくなったり、家族が自宅で介護する体制が整ったりしたら、また自宅に戻るといった利用の仕方も可能です。

家族自身の生活も大事に

家族自身の生活も大事に

編集部編集部

介護をするために、仕事や趣味を諦める家庭もありそうですね。

榊原宏昌榊原さん

そうですね。国としても介護離職は大きな問題になっています。ただ、私の考えとしては、介護のために仕事や趣味を辞めることについては、あまり賛成できません。というのも、仕事を辞めることで介護に専念できる可能性もありますが、ずっと自宅にいて介護をすることで、ストレスがたまることが想定できるからです。また、収入が減ることで、生活に余裕がなくなるといったことも考えられます。好きなことや趣味をする時間が、ストレス解消の機会になっている場合も多いと思います。

編集部編集部

そのためにも、専門家に相談して、介護サービス利用の検討もアリだと?

榊原宏昌榊原さん

そのとおりです。現在は介護休業などの制度も整ってきていますから、職場にも相談してみるといいと思います。また、介護者教室や家族交流会などが開催されている地域も多いので、参加してみるのも1つの手です。介護の知識や方法、ちょっとした工夫を教えてもらったり、同じ介護の悩みを抱えている家族同士の交流で気持ちがラクになったりするといった家族の方はとてもたくさんいらっしゃいます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

榊原宏昌榊原さん

家族にもそれぞれの人生があるので、それを全て犠牲にしてまで介護に向き合うのはつらいですよね。子どもが小さかったり受験の時期だったり、家族自身の体調不良などに介護が重なってくると、相当な負担となります。加えて、介護はいつまで続くか先が読みにくいものでもあり、経済的な負担もストレスの原因になります。家族が自分自身の生活を大事にして心身の健康を保つことは、介護を受ける本人さんのためでもある、ということを改めて強調しておきたいと思います。

編集部まとめ

介護に関する悩みができたら、まずは専門家に相談して、介護サービスを利用すること。そして、家族自身も自分たちの生活を大事にすることが重要とのことでした。介護する側の健康が、被介護者のためにもなります。介護疲れを感じたら、専門家を頼ってみてはいかがでしょうか。

この記事の監修介護福祉士