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「老老介護」の問題点とは? 原因や共倒れを防ぐ方法を介護福祉士が解説

 更新日:2024/05/24
「老老介護」の問題点とは? 原因や共倒れを防ぐ方法を介護福祉士が解説

テレビや新聞などで度々取り上げられる「老老介護」問題。少子高齢化が進む日本の社会で、老老介護は避けては通れない課題です。老老介護の問題点や原因、共倒れを防ぐ方法について、介護福祉士の千葉さんに解説していただきました。

千葉 拓未

監修介護福祉士
千葉 拓未(介護福祉士)

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1983年生まれ。札幌市在住。専門学校卒業後、社会福祉士資格を取得し高齢者介護の道へ。通所介護、特別養護老人ホーム、認知症対応型通所介護にて介護士として従事する。現在は、Webライターとして、介護問題を中心に執筆している。

老老介護とはどのような状況なのか 老老介護が問題視されている理由を解説

老老介護とはどのような状況なのか 老老介護が問題視されている理由を解説

編集部編集部

老老介護とはどのような状況ですか?

千葉 拓未さん千葉さん

主に“65歳以上の高齢者”が“65歳以上の高齢者”を介護している状況を「老老介護」と呼びます。高齢の夫を妻が介護しているケースや、65歳以上の親を65歳以上の子どもが介護しているケースは老老介護にあたります。

編集部編集部

高齢者が高齢者を介護しているのが老老介護なのですね。どのような点が問題なのでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

介護者が心身ともに疲弊した結果、共倒れの可能性があることが大きな問題点です。入浴介助や食事介助、排泄介助といった介助は、腰や肘、手首といった箇所に負担がかかり、介護者の体へ負担がかかります。夫が要介護者の場合、妻は自分より体重のある人を介助するケースが多く、より負担が増してしまいます。

編集部編集部

自分より体重のある方を介助するのは大変ですよね。それ以外に大変な点はありますか?

千葉 拓未さん千葉さん

要介護者が重度の認知症を患っている場合、身体介助とは異なる介助が必要です。物ごとの手順や理解がむずかしくなるため、日常的動作にも介助が必要になります。体は元気でも、常に介護者の見守りや介助が欠かせません。

編集部編集部

老老介護の金銭問題についても教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

金銭的な理由から、介護サービスを利用したくてもできない方が存在することや、入居施設に入る資金がないため、自宅で暮らさざるを得ない方がいる点は大きな問題です。これらのケースでは、本人と介護者の双方が十分な介護サービスを受けられず、疲弊しているケースも少なくありません。

編集部編集部

実際にどのくらいの方が老老問題に直面しているのでしょう?

千葉 拓未さん千葉さん

厚生労働省が実施した2019年の国民生活基礎調査によると、同居の介護者と要介護者の組み合わせを年齢でみたときに、老老介護の割合は全体の59.7%と全体の半分以上の高い数値であることがわかっています。さらに、75歳以上の老老介護は全体の33.1%と、およそ3世帯に1世帯の割合ですね。

参考:厚生労働省|2019年 国民生活基礎調査

なぜ老々介護になるのか?大きな原因は「少子高齢化」「核家族化」「現行の介護保険制度の問題点」

小見出し/なぜ老々介護になるのか?大きな原因は「少子高齢化」「核家族化」「現行の介護保険制度の問題点」

編集部編集部

老老介護になる原因とはなんでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

老老介護の主な原因は、「少子高齢化」「核家族化」「介護保険制度の問題点」の3つが考えられます。

編集部編集部

少子高齢化が老老介護につながる理由を教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

子どもの数が少ないことで、介護の担い手が少なくなることが主な理由です。両親2人と長女1人の家庭があったと仮定しましょう。もしも長女が結婚して家を出た場合、家の中で介護を担当できるのは、夫、または妻のどちらかになりますよね。反対に子どもが多い場合は、兄弟姉妹で介護を分担できるため、老老介護が発生しにくくなるのです。

編集部編集部

少子高齢化についてはわかりました。続いて核家族化はどのような影響をおよぼすのでしょう?

千葉 拓未さん千葉さん

核家族では、両親と子どもたちは別々の家で暮らしていますので、物理的な距離が発生します。中には市や県をまたいで暮らしている家族も少なくありません。日常的な介護がむずかしくなり高齢のパートナーが介護するケースが多くなり、老老介護となってしまいます。

編集部編集部

では現行の介護保険制度の問題点とは?

千葉 拓未さん千葉さん

介護保険制度が想定する「介護者」は、比較的体力や時間のある介護者だと考えられます。しかし、現代は共働きの家庭が増えており、仕事と介護の両方に追われている介護者が少なくありません。仕事と介護の負担により介護者がダウンしてしまい、高齢のパートナーが介護を担うケースも十分にあり得ます。

老老介護の対策や予防対策は現在もおこなわれている 介護者の 負担を軽減して共倒れを防ごう

老老介護の対策や予防対策は現在もおこなわれている 介護者の 負担を軽減して共倒れを防ごう

編集部編集部

老老介護に対して、どのような対策をとればよいのでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

介護者自身の健康を維持するために、休息の時間を設けることが非常に大切です。地域にある社会資源を活用して、横になる時間や気分転換できる時間をつくりましょう。

編集部編集部

おすすめの社会資源を教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

社会資源には、地域包括支援センターをはじめとする介護保険サービス、民生委員の活用、民間企業の見守りサービスなどが挙げられます。この中でも地域包括支援センターの利用をおすすめします。

編集部編集部

地域包括支援センターとはどのような施設なのですか?

千葉 拓未さん千葉さん

地域包括支援センターは、地域に住まいのある高齢者を総合的にサポートする公的施設です。老老介護に関わる相談はもちろん、高齢者の金銭問題に関する相談も受け付けています。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

千葉 拓未さん千葉さん

老老介護の問題は、市区町村にある役場へも相談可能です。ほかにも、近くの民生委員に相談する方法もあります。病院の入院中の方は、医療相談員に退院後の暮らしを相談してもよいでしょう。自分達だけで何とかしようとせず、周りの協力を頼ってください。

編集部まとめ

少子高齢化や核家族化など、様々な社会問題が絡み合い、老老介護が増えているということが千葉さんへの取材を通して見えてきました。老老介護の問題は、専門家へ相談することでスムーズな解決が可能になります。一人で抱え込まず、公的施設の力を借りながら、負担の少ない介護を目指しましょう。

この記事の監修介護福祉士