介護おむつの選び方を介護福祉士が解説 それぞれの特徴・向いている人は?
介護おむつは、排泄の処理に不安がある高齢者や、寝たきりの高齢者が利用するおむつです。しかし、介護おむつにはいくつかの種類があり、それぞれに特徴が異なるようです。今回は、介護おむつつの種類と特徴、その選び方について、現役の大学教員であり、介護福祉士の資格を有する林さんを取材しました。
監修介護福祉士:
林 修造(介護福祉士)
目次 -INDEX-
介護おむつは「アウター」と「インナー」の2種類がある
編集部
介護おむつには種類があるのですか?
林さん
介護おむつにはアウターとインナーの2種類があります。アウターは外側のおむつを指し、インナーはアウターのなかに入れ込んで使用する内側のパッドを指します。また、アウターにはパンツタイプとテープ止めタイプがあり、それぞれ利用者の要介護状態によってどれを利用するか選択します。
編集部
パンツタイプとテープ止めタイプは何が違うのですか?
林さん
パンツタイプは、普段使っている下着のように履いて利用するタイプのおむつです。形が下着と似ており、同じような履き方で装着できるという特徴があります。薄型のもの(排尿1〜2回程度の方向け)や厚型のもの(排尿4〜5回程度の方向け)があったり、ローウエスト仕様のもの(上から履くズボンの邪魔にならない)があったりするなど、様々な種類があります。一方、テープ止めタイプはウエスト部分をテープで止めるタイプのおむつです。パンツタイプとは違って、利用者のウエストに合わせて止める位置を調整することができるだけでなく、横漏れ・背中漏れがしにくい点が特徴ですね。
編集部
パンツタイプとテープ止めタイプ、それぞれどのような人が向いていますか?
林さん
パンツタイプは、自力または一部介助で歩行ができる、座ることができる、排泄ができる人など、要介護度が比較的低い方に向いています。また、衣類の着脱が簡単にできる方や、認知症でおむつは拒否するけれど、パンツとして受け入れることができる方などが使うと良いでしょう。一方、テープ止めタイプは要介護度が高く、トイレへの移動自体が難しい人に向いています。また、衣類の着脱が難しい人や、1日に交換枚数が多い人が使うと良いでしょう。
「アウター」と「インナー」の選び方を解説 どのような人が向いている?
編集部
介護おむつの選び方を教えてください。まずはパンツタイプのアウターからお願いします。
林さん
パンツタイプのアウターは複数のサイズがあるため、利用者のウエストに合わせて選ぶようにしましょう。利用者のウエストに対してサイズが大きすぎると、漏れや匂いの原因となるので注意が必要です。また、種類によって吸水力・量が異なるため、利用者の状態に合わせて選択します。なお、長時間のおむつの使用は、皮膚トラブル(床ずれやかぶれ)になるので、注意が必要です。日中は尿量が少ないのでパンツを使い、夜間は尿量が多いためテープ止めを使用している方もいますので、臨機応変に使い分けましょう。
編集部
続いて、テープ止めタイプのアウターの選び方を教えて下さい。
林さん
テープ止めタイプのアウターは、吸水力・量に応じて選ぶとともに、利用者の臀部(お尻)のサイズに合わせて選びます。お尻の最も幅が広いサイズを目安として、テープを止めたときにウエスト部分、足の周りの部分に指が1本程度入るくらいの大きさが適切です。
編集部
インナーの選び方についてはどのようにすればいいでしょうか?
林さん
パンツタイプ・テープ止めタイプのインナーは、種類によって吸水力・量が異なるため、利用者の状態に合わせて選びます。インナーには、パンツタイプ用とテープ止めタイプ用があるうえ、パットの種類として男性・女性によって形状が異なるものがあります。間違って購入したり、使ったりしないように注意しましょう。
介護おむつの正しい装着方法・ポイントを介護福祉士に聞く
編集部
パンツタイプは利用者が履くだけで大丈夫だと思うのですが、テープ止めタイプの装着方法が難しそうです。装着時のポイントを教えてください。
林さん
一連の流れは下記の通りです。これは標準的な手順であり、利用者の心身の状況によって手順が前後したり、異なったりしますので注意して下さい。
1. 利用者の身体の保温する、露出を最低限にするため、バスタオルを上半身にかける
2. 利用者に横向きに寝てもらい、防水シーツを敷く
3. 利用者に仰向けに寝てもらい、「失礼します」と声掛けをしながらズボンを下ろす
4. 既に履いているおむつを外し、排尿があることを確認し、内側に折りたたむ
5. 蒸しタオルなどで陰部を拭き、清潔に保つ。乾いたタオルで湿り気を拭き取る
6. 利用者に横向きに寝てもらい、臀部・肛門部を蒸しタオルで拭き、清潔に保つ
7. 乾いたタオルで湿り気を拭き取る
8. 新しいテープ止めタイプのおむつを当て、利用者に仰向けに寝てもらう
9. おむつを鼠径部(そけいぶ)に沿わせながら、ギャザーをフィットさせる
10. おむつをしっかり引き上げて広げ、上側・下側の順にテープを止める
11. 腹部の圧迫が無いか、装着感・違和感を確認する
12. 利用者の衣服を整える
編集部
続いて、インナー交換のポイントを教えてください。
林さん
利用者の立位が安定していて、つかまり立ちができ、パンツタイプでのインナー装着手順を説明します。こちらも利用者の心身の状況によって手順が前後したり、異なったりしますので注意して下さい。
1. 利用者がベッド用手すりを使って立ち上がる
2. 介護者は利用者の立位を支え、安定していることを確認する
3. 介護者は後方から介助し「失礼します」と声かけをしながら、既に装着しているおむつを下げ、インナーに排尿があることを確認する
4. 蒸しタオル等で陰部を拭き清潔に保つ
5. 乾いたタオルで湿り気を拭き取る
6. 新しいインナーをそけい部に沿うように当て、ギャザーをフィットさせながら装着する
7. パンツタイプのおむつを腰上げし、装着感・違和感の有無を確認する
8. 利用者の衣服を整える
上記はあくまでも標準的な手順を記載しています。利用者の心身の状況によって手順が前後したり、異なったりしますので注意して下さい。
編集部
インナー交換の回数、頻度を教えて下さい。
林さん
インナーは排尿・排便後はできるだけ早く新しいものに交換するのが理想ですが、毎回交換するのは大変なので、排尿2回で1回の交換でも大丈夫です。高齢者の排泄量は1回につき100cc~150ccで、排泄する回数は8~10回程度です。交換頻度の目安として下さい。
編集部
介護おむつは何歳から必要になりますか?
林さん
おむつが必要になる年齢は、利用者の心身の状況によって異なるため、一律に「○○歳から必要」とは言えません。ある調査によると、親世代に大人用おむつを何歳くらいから使い始めたいかを聞いたところ、「80歳くらい」(25.4%)、が最も多く、「85歳くらい」(15.9%)と合わせて41.3%となっていました。心身の状態によりますが、70代から備えた方がいいでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
林さん
おむつ交換は、1日に何度もおこなう必要があるため、介助者の負担が大きくなりがちです。また、夜間のおむつ交換は介助者の睡眠不足・疲労の蓄積につながるため、注意が必要です。こうした身体的な負担を軽減するためには、一人ひとりに合ったおむつを選ぶことが重要です。要介護状態の程度や排尿の量は、人によって異なりますので、よく見定めたうえで最適な形態・量を選ぶようにしましょう。
編集部まとめ
おむつにはパンツタイプやテープタイプなどの様々な種類があることが分かりました。対象者の心身状況や尿量を確認したうえで、適切なおむつを選ぶようにしたいですね。状態に合っていないおむつを使用すると尿もれや皮膚トラブルの原因になるだけでなく、自力で排泄する力を失わせるリスクがあると知りました。対象者のADLに合ったおむつを選び、高齢者が安心できる環境を整えることが大切だと知りました。