お酒を飲まない人にも「肝臓病」のリスクが! 脂肪肝の知られざる危険と対処法
「肝臓を悪くするのはお酒を飲む人」。この定説は今、完全に覆ったようです。肝臓につく脂肪も、肝臓病の原因になり得るのだとか。そこでMedical DOC編集部が、消化器医の染谷先生(北越谷そめやクリニック)に最新事情を伺いました。
監修医師:
染谷 秀忍(北越谷そめやクリニック)
食べ過ぎや運動不足も肝臓病の原因
編集部
昨今、「脂肪肝」という言葉を聞くようになってきました。
染谷先生
※日本消化器病学会ガイドライン「NAFLD/NASHガイドQ&A」
https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/nafld_2.html
編集部
なぜ、肝臓に脂肪がつくと健康を害すのでしょうか?
染谷先生
同学会は、「脂肪肝になると、過剰な栄養素を分解してエネルギーに変える(燃焼する)ときに、活性酸素などの有害な物質が多くできる“酸化ストレス”という状態を引き起こし、肝細胞が傷ついてしまいます」としています。具体的には、肝炎や肝硬変、肝臓がんといった肝臓の疾患リスクが高まるということです。
編集部
いわゆる「酒飲み」ではなくても、肝臓の病気が起こり得るということですか?
染谷先生
はい。上記のような「カロリーの引き算」に加えて、医薬品の副作用や腸内細菌のバランス、免疫不全によっても脂肪肝は生じます。健康診断で「肝臓機能障害」が指摘されていたら、日常的に飲酒していなくとも、精密検査を受けてみましょう。
編集部
脂肪肝による肝臓以外の影響はあるのですか?
染谷先生
端的に言うと、脂肪肝の人は高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病を伴うことが多く、全身疾患のリスクを高めます。顕著な例としては、心筋梗塞や脳卒中などです。もちろん、ほかの全身疾患も起こり得るでしょう。
健康診断では見逃されている危険も
編集部
脂肪肝は健康診断で洗い出されるのでしょうか?
染谷先生
※「人間ドック健診における脂肪肝」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/32/1/32_7/_pdf/-char/ja
編集部
要するに、肥満の結果が脂肪肝に現れるということですか?
染谷先生
ところが、脂肪肝は肥満の人に限りません。上述のような「カロリーの引き算」で“余剰”が出る人なら、誰にでも起こり得ます。もちろん、肥満の人は余剰が出やすいですよね。しかし、肥満の手前の予備軍にも注意が必要ということです。
編集部
「カロリーの引き算」をゼロに近づける工夫について教えてください。
染谷先生
引かれる側を減らすか、引く側を増やすかですね。引かれる側、つまり摂取カロリーは、食事内容の見直しでコントロールしていきます。一方、引く側の消費カロリーは、運動で増やしていきましょう。
編集部
もしかしたら、感染症による生活環境の変化も関わっていませんか?
染谷先生
大いにあり得る話です。家にいることで間食が増えれば「摂取カロリー」も増加するでしょう。他方、運動不足による「消費カロリー」の減少もあり得ます。健康診断で「肝臓機能障害」の指摘があったら、こうしたご時世ですが積極的に精密検査を受けましょう。
脂肪肝の対処法
編集部
続けて、対処法としての運動の目安について教えてください。
染谷先生
健康診断などで異常値がみられない場合で、予防を兼ねて「軽い運動やウォーキング」などに取り組むのであれば、特段のご相談は不要です。積極的におこないましょう。一方、指摘を受けた場合は、食生活のような生活習慣も見直すべきだと考えます。運動だけで解決するとは限らないですよね。
編集部
いきなり「ジム通い」をする前に、医療機関へ相談すべきですか?
染谷先生
健康診断で指摘を受けたのであれば、そうしてください。注意したいのは、例えば心筋梗塞リスクのある場合、心臓に負担のかかる運動が逆効果になりかねないということです。また、その人の筋肉量や骨密度によっては、急激な運動による骨折も懸念されます。
編集部
あと、ちまたで散見する民間療法の類いってどうなのでしょうか?
染谷先生
我流で取り組むと、「良かれと思っていたのになんの効果もなし」という可能性はあり得ますよね。むしろ、サプリメントのせいで肝機能障害を起こすことすらあります。ですから、医師の指導を受けましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
染谷先生
脂肪肝には過度なダイエットも関係しています。筋肉量や代謝量の減少により、「消費カロリー」も減少するからです。痩せているのに「肝機能障害」の指摘を受けることがあるのは、そういう仕組みです。「肥満ではないから、酒飲みではないから、脂肪肝になるはずがない」とは考えないようにしてください。
編集部まとめ
どうやら、肝臓にたまった脂肪は、肝臓病の原因になるとのことでした。脂肪肝を予防する方法として、まだ異常値などの指摘がない段階なら「運動」を推奨します。他方、すでに脂肪肝が疑われているのであれば、受診を先としましょう。医師から個別指導をしていただいて、その内容に取り組んでください。また、ダイエットも専門家と相談しながら進めていった方がいいでしょう。
医院情報
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診療科目 | 内科、消化器内科 |