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ゴーストピルってなに? 薬の効果に影響はあるのか薬剤師が解説

 更新日:2023/03/27
ゴーストピルってなに? 薬の効果に影響はあるのか薬剤師が解説

ゴーストピル」という言葉を聞いたことはありますか? 服用した薬が丸ごと便中に出てくることがあれば、それがゴーストピルです。「せっかく服用した薬がそのまま出てきてしまったら全く効いてないのでは……」と不安に感じる人も多いようです。そこで今回はゴーストピルについて、薬剤師の浅田さんに解説していただきました。

浅田 麻希

監修薬剤師
浅田 麻希(薬剤師)

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昭和薬科大学薬学部生物薬学科卒業。大手調剤薬局チェーンにて様々な店舗を経験後、2017年からはフリーランス薬剤師・派遣薬剤師に転身。薬局業務の傍ら、ライターとしても活躍の場を広げる。現在は有名皮膚科での研修・10年以上の調剤薬局勤務経験を生かし、育児の傍ら医療・美容ライターとして活動中。

ゴーストピルは「薬の抜け殻」

ゴーストピルは「薬の抜け殻」

編集部編集部

ゴーストピルは直訳すると「薬の幽霊」という意味ですが、一体どのようなものなのですか?

浅田 麻希さん浅田さん

ゴーストピルは、服用した錠剤がその形状のまま便と一緒に出てきたものです。服用したはずの薬が丸ごとの状態で出てきてしまったら驚いてしまいますよね。薬の成分が体内で吸収されてから、成分を覆っていた殻だけが便と一緒に排出されているので、薬の抜け殻のようなイメージです。

編集部編集部

なぜゴーストピルが便と一緒に出てくるのですか?

浅田 麻希さん浅田さん

ゴーストピルは一部の徐放性製剤で見られる現象です。徐放性製剤とは、体内で薬の成分が長時間効果を発揮できるように製造技術によって工夫された製剤のことです。体内で一度に薬の成分を出し切るのではなく、薬の成分がゆっくり溶けて少しずつ放出され続けるように設計されています。そういった設計であるため、薬の成分を覆う「殻」の基剤やコーティングは、水に溶けにくい性質をしています。水に全く溶けないわけではないので、基剤やコーティングの多くは消化の過程で崩壊するのですが、体内で溶け残ることでそのまま便中に排出されるのです。

編集部編集部

ゴーストピルが出てきた場合、身体に悪影響はありますか?

浅田 麻希さん浅田さん

ゴーストピルが出てきたからといって、身体への悪影響は全くないのでご安心ください。

ゴーストピルが出てきても、薬はちゃんと体内に吸収されています

ゴーストピルが出てきても、薬はちゃんと体内に吸収されています

編集部編集部

ゴーストピルが便とともに排出された場合、一緒に薬の成分も出てしまっているのではないでしょうか?

浅田 麻希さん浅田さん

薬が丸ごと出てきているように見えるので、そう思われるのも無理はありません。しかし、先ほどご説明した通り、薬の成分が体内で全て吸収された後の抜け殻が便に出てきているだけなので、薬の成分は体内に放出されています。

編集部編集部

薬の効果が弱まるなどの影響はありますか?

浅田 麻希さん浅田さん

薬はしっかり身体に吸収されているので、効果が弱まるといった心配はありません。ただし、注意が必要なケースが2つあります。1つは、下痢をしている場合です。激しい下痢症状がある場合、薬の成分が十分に吸収されないまま排出されてしまっている可能性があります。

編集部編集部

もう1つの注意が必要なケースについても教えてください。

浅田 麻希さん浅田さん

もう1つは、錠剤を潰したり噛み砕いたりした場合です。錠剤を潰したり噛み砕いたりすると、薬を覆う殻である基剤やコーティングが壊されることで、徐放性という特性が失われます。そうすると、少しずつ放出できなくなることで効果時間が短くなったり、少しずつ放出されるはずだった有効成分が一気に吸収されたりすることで副作用が起きやすくなるなどの問題が生じる恐れがあります。そのため、ゴーストピルが出てきやすい徐放性製剤は、水で飲み込まなければいけません。

編集部編集部

潰したり噛み砕いたりしてはいけないということは、錠剤が大きくて飲み込めない場合でも切ったりするのはNGなのでしょうか?

浅田 麻希さん浅田さん

そうですね。徐放性製剤に関しては効果に影響してくるので基本的にはNGです。そういった薬の場合は、処方時に医師や薬剤師から説明があると思うので、どうしても飲み込めない場合は医師や薬剤師にご相談ください。ちなみに、徐放性製剤ではない薬であれば切っても潰しても噛み砕いても問題ありませんし、そういった薬の方が多いですね。

ゴーストピルが出てきやすい薬について

ゴーストピルが出てきやすい薬について

編集部編集部

どのような薬を服用した時にゴーストピルが出てきますか?

浅田 麻希さん浅田さん

ゴーストピルが出てきやすいと言われている薬をいくつかご紹介しますね。
・抗てんかん薬のデパケンR錠
・潰瘍性大腸炎やクローン病の治療薬のペンタサ錠
・鉄剤のフェロ・グラデュメット錠
・抗アレルギー薬のディレグラ配合錠
・カリウム製剤のスローケー錠
・鎮痛薬のオキシコンチン錠
・血管拡張薬のニフェジピンCR錠
ほかにもたくさんありますが、有名どころの薬を挙げました。

編集部編集部

上記の薬を服用した時は、必ずゴーストピルが出てくるのでしょうか?

浅田 麻希さん浅田さん

必ずゴーストピルが出てくるわけではありません。ゴーストピルが出てきやすい薬を服用しても、多くの場合は、殻も体内で崩壊してバラバラの状態で便中に紛れます。水なしまたは少なめのお水で薬を服用した場合、ゴーストピルが出てくる可能性が高くなります。ゴーストピルを見たくない方は、多めのお水で服用するようにしましょう。

編集部編集部

ゴーストピルが出てきた場合、病院に連絡した方がいいでしょうか?

浅田 麻希さん浅田さん

特にその必要はありませんが、不安なことがあれば次の診察時に医師に相談してみてください。

編集部まとめ

ゴーストピルは薬の成分が体内に吸収された後の抜け殻です。成分だけが体内でゆっくり溶けて吸収されていく一方、成分を覆う殻は溶けにくく吸収されないため、便中にそのまま排出されることで起こります。正しく服用していて激しい下痢などの症状がなければ、薬はちゃんと吸収されて効果を発揮できているとのことなのでご安心ください。

この記事の監修薬剤師