どうして水以外で薬を飲んだらいけないの? 水以外だと危険なの?
「水以外で薬を飲んではいけない」と、一度は言われたことがあると思います。しかし、外出先で水が用意できない時、手元にあるジュースやコーヒーなどで薬を飲んでみようと考える時もあるでしょう。一体なぜ、薬を水以外で飲んではいけないのかを、「りら薬局」に勤務している薬剤師の廣瀬さんに解説していただきました。
監修薬剤師:
廣瀬 安國(りら薬局 薬剤師)
広島国際大学薬学部薬学科卒業。大学卒業後、福岡の調剤薬局に就職。広島に帰郷後、管理薬剤師を経験した後、2018年から現在の「りら薬局」で薬剤師として従事。「わからないことを少しでもわかるように」をモットーに、少しでも安心して薬を使ってもらえるよう、薬剤師として啓蒙活動中。研修認定薬剤師。
薬は水やお湯で飲むことを前提している
編集部
なぜ、「薬は水で飲まないといけない」と言われているのでしょうか?
廣瀬さん
水以外の飲み物と薬を一緒に飲むことで、思ったように薬が効かない可能性があるため、水で薬を飲むことを推奨しています。新しい薬を開発するために製薬会社は治験をおこない、様々な人に薬の効果を検証します。その薬のほとんどは水やお湯で薬の効果を検証しているため、お茶やジュースなどと一緒に飲んだ時の効果に関するデータを持っていない場合が多いのです。
編集部
ご飯を食べた後だと、水以外の飲み物と一緒に飲んでも問題ないように思いますがどうでしょうか?
廣瀬さん
たしかに、病院でもらう薬は食後に服用する場合がほとんどです。大半の場合、食後の服用になっている薬であれば、食事によって効果が変化することは少ないのですが、ジュースやお茶など一部の飲み物で服用すると、副作用が増したり薬の吸収を邪魔したりする危険も存在します。なので、特別に指示がない限りは水で飲んだ方が確実と言えます。
編集部
薬だけをそのまま飲み込むのは大丈夫ですか?
廣瀬さん
普通の錠剤を水なしで飲み込むと、喉の粘膜を傷つけてしまうことがあります。特に、飲み込む力が弱い高齢者や子どもなどは、喉に詰まらせたり引っかかったりすることもあるので注意が必要です。
編集部
ちなみに、錠剤を噛むのはどうでしょうか?
廣瀬さん
かなり少ないですが、噛み砕く薬も実際に存在しています。しかし、ほとんどの薬は噛み砕くことを前提に設計されていません。また、「徐放性製剤」という胃腸の中で徐々に溶けるよう、作られている薬については、噛み砕くと一気に薬の成分が放出されるので、副作用が出る可能性が高くなります。そのため、噛み砕かずに薬を飲んでいただいた方が安全です。
薬と飲み合わせが悪い飲み物がある
編集部
先ほど、一部の飲み物が危険だという話がありましたが?
廣瀬さん
そうですね。中には、薬の作用を強めてしまうものもあります。例えば、グレープフルーツジュースの場合は体内での代謝を邪魔してしまい、薬の作用を強めてしまう効果があります。また、お茶に含まれているタンニンや牛乳に含まれているカルシウムは、薬の成分と反応して吸収を阻害してしまうことも考えられます。
編集部
お酒と薬を一緒に飲むとどうなりますか?
廣瀬さん
お酒に含まれているアルコールは肝臓で分解されます。薬の多くも肝臓で分解されるので、お酒と一緒に薬を服用すると、両方の分解が遅れて、副作用が強く出る可能性があります。また、精神安定剤や睡眠導入剤などとお酒を一緒に飲むと、作用が極端に強く出て危険なので、一緒に飲まないようにしてください。
編集部
特に薬と飲み合わせに注意する必要な飲み物はありますか?
廣瀬さん
カフェインやアルコールが含まれる飲み物、グレープフルーツジュースは、薬の作用を強めてしまうことが多いので、注意が必要です。また、ハーブティーや青汁も薬の作用を弱めてしまう可能性があります。
水以外で飲む場合には医師、薬剤師に相談する
編集部
どうしても外出先で水が用意できない場合、どうすればいいでしょうか?
廣瀬さん
帰宅するまでが短時間であれば、帰宅後に服用しても問題ないことが多いですね。また、一部の薬を除いて、時間をずらして服用しても問題ないことが多いので、事前に医師や薬剤師に確認してみるといいでしょう。
編集部
水なしで飲める薬ってありますか?
廣瀬さん
はい。薬の中には「OD錠」と呼ばれる、口の中ですぐに溶けるよう設計されている薬もあります。外出先などで水が用意できない時は、OD錠であれば問題なく服用できます。また、「チュアブル錠」という薬も水なしで服用できます。これは噛み砕いて飲み込む薬なのですが、対応している薬は少ないのが現状です。
編集部
どうしても水以外で飲みたい場合は、どうすればいいですか?
廣瀬さん
OD錠やチュアブル錠などの水なしで服用できる薬に変更してもらうといいのですが、対応していない薬も多くあります。水以外で飲んでも効果に変動がほとんどないとされている薬もあるので、事前に医師や薬剤師に相談してみるといいでしょう。
編集部まとめ
水以外の飲み物で薬を飲むと思わぬ副作用が出たり、薬の効果を実感できなくなったりすることが判明しました。また、一部のケースを除いて、薬を噛み砕いたり水なしで飲み込んだりすると、体への危険が伴うので注意が必要です。どうしても水以外で薬を飲む必要がある場合は、水以外での服用が問題ないかを薬剤師に相談するようにしましょう。