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「医療用大麻」の使用解禁に向けて政府が改正案を提出、乱用防止に使用罪新設へ

 公開日:2023/09/07
大麻の医療使用解禁に向けた改正案提出と報道

大麻草から製造された医薬品の使用を可能にする大麻取締法などの改正案を、政府が秋の臨時国会に提出すると産経新聞が報じました。このニュースについて、郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

産経新聞が報じた内容とは?

大麻草から製造された医薬品の使用を可能にする大麻取締法などの改正案を、政府が秋の臨時国会に提出すると産経新聞が報じましたが、この内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回のニュースは、産経新聞が9月3日に報じた内容です。産経新聞によると、活用できる範囲を広める一方で、大麻の乱用を防ぐために使用罪も新設するとのことです。栽培については、これまで繊維や種子の採取目的に限ってきたものを、医療や一部の産業目的に拡大する方針です。

大麻を医療で活用することについては海外で既に開始しており、アメリカなどでは重度のてんかん症候群の治療薬「エピディオレックス」などで使用され、医療上の有用性が認められています。エピディオレックスは研究目的で日本国内でも治験がおこなわれていますが、現在の法律では医療現場で活用できないため、医療関係者からは法改正を求める声が上がっていました。その一方で、規制についても強化されるようです。覚醒剤などの規制薬物と同様に、使用罪を新たに設置することで、正当な理由がない場合の使用を禁じることになります。また、免許制度で栽培できる大麻草には有害成分の濃度の上限値を設けて、それを超えるものは栽培を禁じるとのことです。大麻は薬物使用の入り口となる「ゲートウェイ・ドラッグ」とも呼ばれており、規制を強めて蔓延防止を図る狙いがあります。

今回の報道に対する受け止めは?

大麻草から製造された医薬品の使用を可能にする大麻取締法などの改正案を、政府が秋の臨時国会に提出するという報道に対する受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

現在、大麻を原材料として生産される数種類の薬剤が海外で認可されてきています。日本国内でも同様に使用できるよう臨床治験が開始できるような環境が整うことが求められていましたが、法律の壁があり実現には至っていませんでした。今回の改正が実施されれば、病気に悩む人にとって非常にポジティブなニュースと言えるでしょう。なるべく早く実施されることを願います。

大麻の医療使用について留意すべき点は?

大麻草から製造された医薬品の使用を可能にする大麻取締法などの改正案が秋の臨時国会で通過した場合、実際に大麻が医療使用されることが可能になります。その際、どのようなことに留意すべきでしょうか?

郷 正憲医師郷先生

たしかに、大麻を原料とした薬剤の使用するために、国内で大麻の限定的な生産が開始される可能性は否定できません。しかし、それも厳格な管理下でおこなわれるでしょうし、この法律改正自体が大麻の流通を増加させるということはないと考えられます。一方で、大麻の使用に関して今まで罪に問われなかったのが問われるようになることで、摘発件数が増える可能性はあるでしょう。我々一般の人にとっては特に関係しないことではありますが、これまで通り大麻には毅然とした態度でNOと言う姿勢が重要と言えます。

まとめ

大麻草から製造された医薬品の使用を可能にする大麻取締法などの改正案を、政府が秋の臨時国会に提出すると産経新聞が報じました。改正案が通過して医療用大麻が解禁されるのか、注目が集まりそうです。

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