テレワークで急増!? ストレートネックの予防法を理学療法士に聞く
コロナ禍で急増したテレワークにより、自宅での慣れない環境におけるパソコン作業が増えたという方も多いのではないでしょうか。その環境の変化が引き起こした悩みとしてよく耳にするのが、「ストレートネック」です。今回は、ストレートネックの予防法について「理学療法士」の大平さんに伺いました。
監修:
大平 拓巳(理学療法士)
大手総合病院の勤務を経て、地域密着型の軽費老人ホームに勤務。正しい情報をなるべく分かりやすく伝えることを目的に医療・介護に関するWeb医療ライターとしても活動中。
ストレートネックとは、「首の骨がまっすぐになった状態」
編集部
まず、ストレートネックとは、どのような状態なのか教えてください。
大平さん
ストレートネックとは、「カーブがなくなり、首の骨がまっすぐになった状態」です。本来、背骨はS字状になっており、首は「前にくぼんだカーブ」が正しい形状です。しかし、ストレートネックになると、首へ負担がかかることによる様々な症状が引き起こされます。
編集部
どんな症状がありますか?
大平さん
ストレートネックの主な症状は、眼精疲労・肩こり・手の痺れ・めまい・頭痛などです。また、頭の重量は体重の約10%程度の負担を首にかけます。そのため60kgの人は6kgの負担を首の骨にかけ続けている状態とイメージすれば、分かりやすいと思います。
編集部
どのような人が、ストレートネックになりやすいのでしょうか?
大平さん
ストレートネックは、これまでも事務職の人などによくみられるものでした。ところがコロナ禍によるテレワークの増加やステイホームの影響で変化が起こりはじめています。自宅でのパソコン作業が増えた人やスマートフォンの使用時間が増えた人などにも多くみられるようになりました。その理由はストレートネックになりやすい原因が、仕事中のデスクワークの環境やスマートフォンをみる姿勢にあるからです。
ストレートネックを起こしやすい環境について
編集部
どのような環境が、ストレートネックになりやすいのでしょうか?
大平さん
パソコンの画面の高さが目線より低すぎると、ストレートネックになる可能性が高まります。また職場のオフィスでは、椅子に座って作業していたにもかかわらず、自宅では床に座ったままパソコン作業をしている人にも同じことが言えます。また、長時間同じ姿勢でスマートフォンを覗き込んでいる人も同様です。
編集部
パソコン画面の高さが、なぜ影響するのでしょうか?
大平さん
パソコン画面の高さが目線より低い状態で作業を長時間することで「首の骨がまっすぐになる」、「首回りの筋肉が固まって血流不全を起こす」ためです。一度首回りの筋肉の血流不全が起きると、硬くなった首回りの筋肉がさらに硬くなり、強い凝りが生じます。また、首回りは自律神経の通り道であるため「首の骨がまっすぐになる」ことは自律神経の乱れにつながります。眼精疲労や頭痛、吐き気といった症状の原因はここにあります。
編集部
首だけの問題として考えればいいのでしょうか?
大平さん
いいえ、それだけではありません。首と骨盤は24個の骨でなる脊柱とよばれるもので支えられています。それぞれS字カーブを描くようにして、重い頭部と骨盤との間を支えています。頭部が前へ傾けば脊柱がその流れを伝えるため骨盤は後ろに傾き、いわゆる猫背になります。一方でこの逆もあります。つまり、体幹の筋力が低下し作業姿勢が悪くなると骨盤が後ろに傾き、首がストレートネックの状態になってしますのです。そのため、首だけでなく骨盤の傾きを意識し、積み木を積み上げるような感覚で下から整える意識も大切です。
ストレートネックの予防のポイントは「目線」と「姿勢」
編集部
パソコン作業中に実践できる予防法を教えて下さい。
大平さん
ストレートネックの予防には「パソコン画面を目線と同じ高さに設置」するのが重要です。また、パソコン作業に集中して画面を見続けると、背中全体の筋肉が固くなってしまいストレートネックの症状悪化につながります。そのため、30~60分に1回ほど休憩をとることをおすすめします。
編集部
スマートフォンについても予防法はありますか?
大平さん
パソコン作業と同様に、スマートフォンも30分に1回は画面から目を離して休憩をとるようにしましょう。また、スマートフォンを使用する際に背中を丸めず、まっすぐ座って使用するようにする意識も大切です。さらに、スマートフォンを持っている腕の脇に反対側の手を挟むことで、自然と高い位置で使用でき目線の高さに合わせることができます。
編集部
ストレートネックの症状がある時の対処方法も教えてください。
大平さん
ストレートネックの症状がすでに出現している人は、症状に合わせた対処が必要です。目の疲れや頭痛、めまいなどがある人は、目と首回りを温めて筋肉を緩めましょう。そうすることで血流が改善し、ストレートネックの症状が緩和されます。次に肩こりや腕の痺れがある人は、作業を30分に1回中断しストレッチをおこないましょう。30分以上、同じ姿勢を続けることで体の血流が悪くなり、筋肉の凝りが出現するためです。ほかにも日頃から、入浴時には20分以上湯船にしっかり浸かる、7時間以上睡眠をとる、3食きちんと摂ることも心がけましょう。
編集部まとめ
ストレートネックは作業中の目線の高さや姿勢などの作業環境が原因で起こりやすく、環境調整や休憩をこまめに取ることで防げることがわかりました。また、すでに症状が出現し悩んでいる人は、一度自身の入浴・睡眠・食事などの生活習慣を見直してみましょう。