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ピルは避妊の時だけ使う薬じゃないって知ってた? 詳しく専門医に聞いてみた

 更新日:2023/03/27

副編集長の佐藤あやが、20~30代女性の気になる医療情報を専門医に聞く対談企画の第4弾。産婦人科専門医・菊地盤先生に低用量ピルについて徹底解説してもらいました。

菊地 盤医師

監修医師
菊地 盤(メディカルパーク横浜 院長)

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順天堂大学医学部卒業。順天堂大学医学部附属病院の産婦人科での勤務を経て、2019年から現職。これまで多くの婦人科腹腔鏡手術を経験し、婦人科内視鏡手術のガイドライン策定にも携わっている日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本がん・生殖医療学会理事、日本不妊カウンセリング学会評議員 、ベストドクターズ2018~2019。

佐藤あやさん

佐藤あや(「Medical DOC」副編集長)

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モデル。最新医療に関心が高く、2021年8月から「Medical DOC」副編集長に。YouTubeチャンネル『教えてドクター・Medical DOC』でMCとして活動。一児の母としての目線にも注目。

ピルの正しい目的と種類について

ピルの正しい目的と種類について

佐藤あやさん佐藤あや

ピルというと、どうしても避妊のイメージが強いかなと思うのですけど、それだけが目的というわけではないんですか?

菊地 盤医師菊地先生

基本的にピルの作用というのは、黄体ホルモンの排卵を抑制する効果があり、それによってもちろん避妊効果が得られるのですが、排卵を抑制することによってさまざまなメリットがあるのです。例えば子宮内膜症の予防であったり、排卵を抑制することによって卵巣が傷つくことを防いだりすることができます。もしかしたらがんの予防ができるかもなんていうことも言われておりますね。

佐藤あやさん佐藤あや

ピルの種類がいくつかあると思うんですけど、教えていただきたいです。

菊地 盤医師菊地先生

ピルは黄体ホルモンで排卵を抑制するというところから始まりました。最初のピルというのは、黄体ホルモンだけだったのです。ただ黄体ホルモンだけだと不正出血を起こしてしまうんですね。それを予防するために、女性ホルモンを足していった経緯があります。ただ女性ホルモンが多くなると、ピルの副作用の一つではある血栓などが出やすくなってくるので、女性ホルモンを極力下げていったものが今回のテーマである低用量ピルというものになります

佐藤あやさん佐藤あや

なるほど。低用量ピルの種類を詳しく知りたいです。

菊地 盤医師菊地先生

黄体ホルモンの種類によって、世代が第1世代~第4世代まであり、第1世代が「ノルエチステロン」、第2世代が「レボノルゲストレル」、第3世代が「デソゲストレル」、第4世代「ドロスピレノン」と呼ばれます。第2世代のレボノルゲストレルは最近承認された“ノルレボ”というアフターピルと成分は同じですね。アフターピルというのは避妊に失敗したときに使って避妊を行うものですが、これは先ほどお話ししたように、排卵抑制作用があるので、その中の黄体ホルモンだけを飲んで排卵を止めることで妊娠を防ぐというものになります

佐藤あやさん佐藤あや

低用量ピルとアフターピルというのは、実は似たものではあるんですね!

菊地 盤医師菊地先生

お薬は何でもそうなのですが、新しくなれば副作用がだんだん良くなってきます。だから第4世代の最近よく使われるヤーズについては、むくみなどの副作用も軽減されていて使いやすくはなっていると言われていますね。

佐藤あやさん佐藤あや

ピルにはいろんな種類があると思うのですけど、周りで飲んでいる子と話していると、「これは合うとか、合わないから違うものにしてもらおうかな?」という話を聞くのですが、そのような患者さんもいますか?

菊地 盤医師菊地先生

基本的に薬というのは効能効果というのがありますから、それに合わせていろいろな副作用も出てくるはずなのですが、やはり体質による違いもありますので、ある方にとってAというピルが良くても別の方に合わなかったということはあります。まずは飲んでみて種類を変えていくというやり方もします。

佐藤あやさん佐藤あや

それぞれお値段は違うんですか?

菊地 盤医師菊地先生

避妊として使った場合は低用量ピルでだいたい2,3000円ぐらいで、アフターピルの場合は1万円~3万円ほどになります。クリニックによっては自費診療なのでちょっと差がある状態で処方されていると思いますね。

佐藤あやさん佐藤あや

アフターピルの方が高額な感じですね。

菊地 盤医師菊地先生

なかなか難しいのですけれども、アフターピルというのは1回だけなんですね。内服するのが緊急避妊薬と言われるぐらいですから、緊急時の処方なのでお値段が高めに設定されているのかと思います。ただ100%の避妊効果があるわけではないですし、突然慌ててクリニックを受診していても大変ですので、普段からピルを飲んでおくというのはいいことだと思います。

ピルに関する様々な疑問

ピルに関する様々な疑問

佐藤あやさん佐藤あや

現代女性の月経回数が、昔よりもかなり多くなったと聞いたのですが、これって本当ですか?

菊地 盤医師菊地先生

現代はお子さんを産む人数も少なくなっていますので、大体1,2人ぐらいだと思うんです。昔はそれこそ10人とか多産だった時代もありますよね。初潮が遅くて閉経が早ければ月経回数が減ってくるわけですけれども、現代女性というのは食事も良くなって月経もしっかり50歳前後までありますよね。にもかかわらずお産自体は、昔に比べて全然産まなくなっています。妊娠すれば月経は止まりますので、月経回数が8,9倍というのはそういった理由だと思うんですね。ただ月経があるというのは、実際にはあまり身体にはいいことではなくて、例えば月経血が逆流することによって、子宮内膜の組織が月経血と一緒にお腹の中に入っていくと、そこで増殖して子宮内膜症の原因になるとも言われています。月経回数が増えることによって、子宮内膜症はその分、罹患率が高くなるということになります。これを予防するのがまたピルのメリットですね。ですので、ピルを飲んでおくことで月経量も少なくなりますし、今お話しした子宮内膜症の予防ということはできます

佐藤あやさん佐藤あや

ピル服用により、乳がんリスクがあがると聞いたことがありますが、本当ですか?

菊地 盤医師菊地先生

女性ホルモンですので、乳がんについて心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、賛否があるところで、乳がんのリスクが高い方や、乳がん家族歴がある方にはピルを飲むことによる女性ホルモン上昇のリスクが上がるかもしれません。ピル単独で乳がんが絶対増えるということはまだ言われてはないので、あまり心配しなくてもいいと思います。あとは、ピルを使っていても性行為感染症は防げないので、コンドームや別の避妊法を試しておいた方が性行為感染症、HPVの感染による子宮頸がんのリスクというのは防げると思いますね。

佐藤あやさん佐藤あや

ピルはほかにも月経痛にも効果があると聞きました。

菊地 盤医師菊地先生

保険適用の場合は、月経困難症というご病気で保険適用になっているので月経量は減ります。月経痛は女性にとっては、仕事のパフォーマンスが落ちるなんてこともあるわけなので、そういったことで大変な思いをされている方も多いと思うのですが、ピルを使うことでそのあたりは軽減できるんですね。あとは月経前緊張性と言われるような、月経前後の気分の障害や月経前のイライラは、ピルの種類にはよりますが、その方に向いているピルを使うと軽減できると思います。

佐藤あやさん佐藤あや

ピルには本当にいろんな効果があるんですね! アスリートの方なんかもピルで月経を調整している方は多いんですか?

菊地 盤医師菊地先生

人によってですが、月経中のほうがパフォーマンスがあがるという方もいらっしゃるようです。月経をいつ来させたいかもある程度コントロールができるので、メリットは結構大きいかと思います。

佐藤あやさん佐藤あや

ピルを飲むことによって月経をずらしたりとか、月経の管理をしたりするのは、体にとって負担にはならないんですか?

菊地 盤医師菊地先生

基本的にはないです。もちろんリスクのある方もいらっしゃるわけですし、副効用もあるのですが、きちんと担当の先生とご相談した上で使う場合は、メリットも結構大きいわけなので十分に使っていただいたほうがいいんじゃないかと思います。

佐藤あやさん佐藤あや

ちなみにピルって何歳から使えるんですか?

菊地 盤医師菊地先生

初潮から飲んで大丈夫なのですが、ピルって女性ホルモンが若干少なくなるので、まだ骨の成長がちゃんとできていない場合は、骨粗しょう症のリスクになってきます。あまり若年から飲むのは、状況によると思います。担当の先生とご相談になると思いますね。

佐藤あやさん佐藤あや

ピル自体は不妊になってしまう心配はないんですか?

菊地 盤医師菊地先生

よく避妊薬だからそのまま不妊になっちゃうんじゃないかっていうような危惧をされる方いらっしゃいますけれども、基本的にはないです。どちらかというと、子宮内膜症という病気は不妊につながるご病気なので、予防するという意味ではある意味不妊予防にもなるのかもしれません

この記事の監修医師