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歯周病と喫煙の意外な関係

 更新日:2023/03/27

こんにちは、埼玉県さいたま市浦和区にある『ナカニシデンタルクリニック』院長で日本歯周病学会歯周病専門医の中西伸介と申します。
歯周病と喫煙の関係と言われて、ピンとくる方はいらっしゃるでしょうか。
喫煙されている方は、喫煙が肺がんだけでなく全身疾患に与える影響を耳にすることもあると思います。非喫煙者でも副流煙などは有名ですし、ほとんどの方が自分の健康と結びつけて考えたことがあると思います。
その中でも歯周病と関連付けて考えたことがある方は少ないかもしれません。
ここに一つのデータがあります。喫煙者は非喫煙者に比べて2〜8倍歯周病になりやすいというものです。
これを聞いてみなさんどう思われたでしょうか?ここまではっきりと数値として表されると気のせいとは言えないですよね。また副流煙でも歯周病と関連していることも分かっています。周りの人の吸ったタバコの煙で自分の歯周病が悪化してしまうと聞いてどんな感想を持たれたでしょうか。

 煙草について

タバコには 4,000 を超える化学物質と 200 以上の 有害物質、50以上の発がん性物質が含まれており近年では、受動喫煙においても全身のみならず歯周組織への影響がみられるとの報告もあり、受動喫煙に関する研究も積極的に行われています。

 煙草の人体への影響に関して

煙草のニコチンは、人体の働きと直接関係する脳幹部を麻痺させ、血管を収縮させます。そして、糖尿病の方は、毛細血管に障害がおきやすいので、喫煙することによって更に血流が悪くなり毛細血管の障害が悪化しやすくなります。
タールは、発癌物質であること言われており、喫煙者に肺癌が多いのは事実です。最近では胃癌の発生にもタールが関係しているという報告があります。
⑶煙草が高い温度で燃焼するときに生じる一酸化炭素ガスは、直接人体の細胞組織を攻撃します。このガスは血色素(ヘモグロビン)と急速に強く結合し、酸素と血色素との結合を妨げます。血色素は、身体のすみずみまで酸素を運搬する役目を持っているので、一酸化炭素が血色素と結合すると容易に離れないため、血液の酸素運搬能力が落ち、多くの臓器に影響をおよぼします。
これらのことから喫煙者はガン、心臓疾患、脳卒中、肺気腫、喘息、歯周病にかかりやすくなり、かつ進行が早いことが知られています。
 

喫煙による歯周組織への影響

 
歯周組織への影響としては
・歯周病の悪化
・味覚異常
・口臭
・歯肉の黒色化
などが挙げられます。
 

免疫に対する影響

そもそも人の口腔内には様々な種類の細菌が存在し、我々の中には口腔内のバランスを保ってくれるよい働きをする細菌も存在しますが、歯周病菌や虫歯を作るミュータンス菌など毒性の強い菌も存在します。すべての人の中に必ず存在しているこれらの細菌ですがすべての人が短時間で歯周病、虫歯になるわけでない理由は、口腔内には毒性を持った細菌が傍若無人に振る舞われないように免疫機構が存在しているからです。
煙草の中の有害物質によりその働きを鈍らせてしまいます。
例えば病原菌を発見し、消化したり、戦ってくれる白血球やリンパ球がニコチンの作用によりうまく作用してくれなくなったり、数が減少したり、歯周病細菌に抵抗する抗体の量も減少することが分かっています。
つまり全体的に細菌に対する抵抗力が低くなった状態なので菌が侵入し、病気になりやすく、また病状が悪化しやすくなっています。中でも臨床の現場ではヘビースモーカーの方は、レントゲンなどでも歯周病により歯槽骨が著しく溶けている像を認めることが多々有ります。またそのような場合治療が望めない歯であることが多く抜歯になってしまいます。
 

歯周病治療への影響

喫煙習慣は歯周病治療に対し悪影響を及ぼすこともわかっています。全身の臓器や組織には酸素がないと成り立ちません。血流に乗って隅々まで酸素が運搬されていきますが、タバコのニコチンは局所の血管を収縮させる作用があり隅々まで酸素を運搬することができなくなってしまいます。そうすると歯周組織で治療を行い、もう一度組織を再生しようを思っても栄養が届かず、せっかく歯石やプラークなど炎症の原因を除去しても組織の再生が行われません。そのためせっかく治療を行っても骨が再生してくれないなどの悪影響が生じます。
また毛細血管が収縮している影響で我々歯科医が歯周病の検査で重要視している歯肉の炎症、出血が認めづらくなることもあり、いわゆる本人のブラッシング時に出血したという自覚症状が出にくくなり、受診のチャンスを逃してしまい、歯が揺れる、歯肉が大きく腫れてしまったなど重症になってから気づくということになりかねません。
そのため歯周外科治療や再生療法は禁煙をしないと原則適用外となります。
 

 まとめ

一昔前であれば、喫煙は体に悪いと思っているけど、長年癖になってしまってやめられない。病気にかかってしまい禁煙しないと治りませんよと言われ、やっと禁煙に踏み出すという感じだったと思います。
今でも重度の歯周病にかかり通院を始め、話を聞くとかなりのヘビースモーカーであることがわかり、歯周病とタバコの関係をお話ししても、タバコが体に悪いのは知っているから、それでもなんでもいいから歯周病治してくださいという方がいらっしゃいます。口ではわかったと言っても、仕事のストレスでついやめられないなど関係性がはっきりわからず、実感していらっしゃらない方もまだまだ多いですね。でも本当は喫煙されている方が一番世の中の変わり方を実感されていると思います。喫茶店や職場でも以前はタバコが吸えたのに吸えないなど、公共の場で喫煙できる場所が限られてきたこと、そして国民の健康意識が高まり、副流煙の怖さが広まったことなどが挙げられると思います。
タバコと病気、今回は特に歯周病との関係をお話ししていますが、歯周組織や歯周病治療の効果に対し悪影響を及ぼしているのが事実です。
誰だって病気になって辛い思いをしたい人なんていません。一人では難しくてできない、そんな人のために、禁煙を支援する機関もたくさん存在しています。治療薬もあります。お金がかかってしまうと悩む前に一度相談するのも一つの手だと思います。そして全身も、口腔内も自分の健康について考えてみてはいかがでしょうか?。

この記事の監修歯科医師