経鼻内視鏡と経口内視鏡との違いは?受け方や麻酔方法
日本人の死亡原因の上位を占める胃がんや大腸がんなどの消化器系腫瘍。その早期発見に有効とされる胃カメラとも呼ばれる内視鏡検査を苦手としている人は多いのでは。
ここでは比較的苦痛が少ないと言われる経鼻内視鏡検査の受け方や麻酔方法、経口内視鏡との違いなどを詳しく説明していきます。内容を知ることが疑問や不安解消につながります。
経鼻内視鏡と経口内視鏡との違いや受け方、麻酔方法についてMedical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
伊藤 正祐 医師(伊藤クリニック 院長)
目次 -INDEX-
経鼻内視鏡検査
胃の中の状態を確認する胃カメラ。過去に大変辛い思いをして、二度と検査を受けたくないと思っている人もいるかもしれません。胃カメラには口から内視鏡を挿入する「経口内視鏡」のほかに、鼻から挿入する「経鼻内視鏡」があります。苦痛が少ない内視鏡とも言われている経鼻内視鏡について詳しく説明していきます。
経鼻内視鏡検査の内容
経鼻内視鏡は経鼻挿入による内視鏡検査のことを指します。検査する部位としては、食道・胃・十二指腸などの上部消化管が挙げられます。従来の経口内視鏡よりも比較的負担が少ないとして、2000年頃に太さ5mm大の超細径ビデオスコープが登場して以来、普及が進んでいます。
鼻から挿入した内視鏡の先端に搭載された小型撮像素子などを介して、体の内部をモニターに映し出すことで、医師が直接目で癌や潰瘍や炎症、ポリープなどがないかを観察する検査です。検査時に病変があった場合は、内視鏡先端の鉗子孔から鉗子等を用いて組織を採取することもできます。
経鼻内視鏡の麻酔方法
鼻から内視鏡を挿入する経鼻内視鏡検査の場合、鼻の通過をよくする薬を鼻腔内へ噴霧した後、鼻腔への局部麻酔を行います。この方法は施設によって異なっており、麻酔薬を噴霧する方法と、カテーテルを使って直接塗布する方法や麻酔薬を注入する方法があります。鼻腔の局部麻酔は鎮静剤などの注射を使った麻酔ではないので、検査終了後30~60分程度で日常生活に復帰でき、食事を摂ることも可能となります。
体の状態に問題がなければ車の運転も時間が経てば可能です。ただし、使用する薬や組織やポリープなどを取った場合は、当日の運転や刺激のある食事を避けなければならない場合がありますので必ず医師に相談しましょう。
経口内視鏡との相違点や経鼻内視鏡のメリットとデメリット
経鼻内視鏡と経口内視鏡では、内視鏡を挿入する箇所が異なることで具体的にどのような点が異なってくるのでしょうか。また、経鼻内視鏡のメリットとデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく説明していきます。
経鼻内視鏡と経口内視鏡との相違点
経鼻内視鏡と経口内視鏡との相違点は、内視鏡の細さにあります。施設によって差がありますが、経鼻内視鏡の太さはおよそ5~6mm、経口内視鏡だと7~10mmくらいです。大体2~4mmほど太さが異なります。
内視鏡を挿入する箇所が異なりますので、局部麻酔を行う箇所は経口内視鏡は喉、経鼻内視鏡は鼻腔となります。施設や状況に応じて、経鼻内視鏡に喉の麻酔を追加することもあるようです。
経鼻内視鏡のメリット
経鼻内視鏡の最大のメリットは、経口内視鏡で起きる嘔吐感を経験しないで済む点です。内視鏡を口から飲み込む場合、舌根部が刺激され咽頭反射が起きます。経鼻内視鏡は舌根部に触れることなく挿入されますので、個人差はありますが苦痛を感じずに検査を受けることができます。
また、経口内視鏡と違って検査中も会話することが可能ですので、不都合があれば医師に知らせることができます。
経鼻内視鏡のデメリット
経鼻内視鏡が経口内視鏡に比べて細いことはメリットだけではありません。その分カメラの解像度や視野角などの性能が犠牲になっているのです。先端に位置する鉗子孔も同じく細くなっている為、組織が充分に採取できないといった事態も想定できます。しかしながら最近の経鼻内視鏡の機器の進歩によって、経口内視鏡と遜色のない診断能力が得られるようになりました。
経鼻で挿入させるルートに伴うデメリットとして、検査後に鼻出血や鼻痛を起こすことや、鼻腔が狭くて鼻から挿入できない人も存在しているようです。経鼻内視鏡で検査できない場合は、経口内視鏡に切り替えます。
経鼻内視鏡検査の受け方
初めて経鼻内視鏡検査を受ける人なら、検査の具体的な内容や受け方を知っておきたいものですね。細かな点は施設によって異なりますので、おおまかな検査の流れや受け方、検査前の注意点などを詳しく見ていきましょう。
検査前の自宅での準備
経鼻内視鏡検査を行う際に、検査を安全に行うために採血などの事前検査を行う場合があります。採血検査が正確に行えるよう、前日は刺激物などを避け、軽めの夕食に留めておきましょう。夜9時以降の飲食は控え、早めの就寝を心がけます。
常用している薬がある場合は服用しても構いませんが、必ず事前に医師に相談しましょう。当日は食事やタバコは控え、飲み物は水だけにしておきましょう。常備薬の服用は医師に相談しましょう。
検査前の病院での準備
施設により異なりますが、検査前に検査着に着替える必要がある場合があります。これも施設によりますが、時計や眼鏡、義歯などを取る必要がある場合もあります。準備ができたら胃の中の泡を取りのぞき、胃の壁をきれいにするために消泡剤と呼ばれる白い液体を飲みます。
噴霧や塗布、注入などの方法で、数回に分けて鼻腔に麻酔をします。場合によってはその後、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかいチューブ(カテーテル)を通されたり、喉の麻酔が行われたり、胃の動きをとめる薬を注射されたりすることがあります。
経鼻内視鏡検査の開始
鼻から内視鏡を挿入し、検査が開始されます。違和感があるかもしれませんが、麻酔をされているため痛みを感じることはほとんどありません。食道、胃、十二指腸の順に観察が行われ、場合によっては組織採取されます。検査中、口は自由に動かせるため医師と会話ができます。
多くの場合、検査時間は5~15分程度です。組織採取を行った場合の検査結果は後日となりますが、観察だけであれば当日結果を聞くことができます。変調がある場合は、必ず医師に伝えるようにしましょう。
経鼻内視鏡検査の不安や疑問は下調べで解決
初めて内視鏡検査を受ける人や、過去に経口内視鏡検査を受けて辛い思いをした人にとって内視鏡検査は良いイメージがないかもしれません。食道・胃・十二指腸などの状態をしっかり目で見て検査する上部消化管内視鏡検査は、がんなどの早期発見には不可欠です。経鼻内視鏡検査の内容や麻酔方法、注意点をよく確認して、不安を解消してから検査を受けるようにしましょう。
また、鼻腔の形状などからどうしても経鼻内視鏡検査を行えない人も、嘔吐感を感じにくくする鎮静剤を注射して経口内視鏡検査を行う病院があるようです。事前にしっかりと下調べをして、疑問や不安を解消した上で内視鏡検査を受けるようにしましょう。
ヘリコバクターピロリ菌の存在が胃癌の発生の大きな要因であると明らかになり、最近では特に胃内視鏡検査の必要性が認識されるようになってきました。多くの自治体でも胃癌による死亡率を減少させる施策として、胃内視鏡検査による胃癌検診が開始されるようになりました。
しかしながら従来の経口内視鏡検査では検査を受ける方の苦痛が大きいために敬遠されがちで、その結果として胃癌の早期発見が遅れる原因となっていました。
本邦では2002年頃から5mm大の細径内視鏡が開発され、経鼻から挿入する胃内視鏡検査が行われるようになってきました。その結果として苦痛の少ない胃内視鏡検査として、現在までに広く普及するようになりました。
私達も2005年3月に本邦初となる経鼻内視鏡研究会を発足させ、その年の11月にはこれも本邦初となる経鼻内視鏡検査の手引書を発刊しました。細径内視鏡の開発や経鼻内視鏡の挿入法や麻酔法、観察法などの適切な普及に尽力して、現在では40%近くの医療機関で経鼻内視鏡検査が受けることが可能になりました。
当院で経鼻内視鏡検査を受けた方のアンケートでは、94.2%で苦しくなく楽だったという評価を頂きました。
今回は、初めて経鼻内視鏡検査を経験される方が少しでも安心して受けて頂けるように、簡単に説明しています。
監修ドクター:伊藤 正祐 医師 伊藤クリニック 院長
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伊藤クリニック
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診療時間 | 【平日】9:00〜12:30/16:00〜18:00 【土曜】9:00〜12:30 |
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対応検査項目 | ・大腸内視鏡検査 ・胃内視鏡検査 ・経鼻内視鏡検査 |
URL | http://www.ito-clinic.info/ |