「糖尿病」を発症すると「皮膚」にどんな変化が現れる?自覚症状についても解説!

「最近、足のかゆみや乾燥が気になる」「小さな傷がなかなか治らない」糖尿病と診断されてから、このような変化に心当たりはないでしょうか。高血糖の状態が続くと、さまざまな皮膚トラブルを引き起こし、気付かないうちに重症化することもあります。
本記事では、糖尿病と皮膚の変化の関係についてや、症状、治療方法、予防のために自分でできるケアについて解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
糖尿病による皮膚の変化と自覚症状

糖尿病とはどのような病気ですか?
参照:『糖尿病に伴う皮膚感染症と足病変』(日本環境感染学会誌 Vol.32 No.6)
糖尿病になると皮膚はどのように変化しますか?
また、皮膚の一番外側にある表皮(ひょうひ)では、内側で作られた新しい細胞が少しずつ表面に押し上げられ、最終的に角質層となって皮膚を守っています。この仕組みを角化といいます。
しかし糖尿病になると、炎症や代謝の乱れの影響で、角化がうまく進まず、未熟な細胞がそのまま表面に出てしまうことがあるのです。その結果、皮膚がむけやすく、刺激に弱い状態になります。
参照:『月刊糖尿病 Vol.10 No.5』(医学出版)
糖尿病による皮膚の変化の自覚症状を教えてください
- 皮膚の乾燥やかゆみ、ひび割れ
- 小さな傷が治りにくい
- 皮膚が硬くなる、ウオノメやタコができる
- 湿疹や皮むけができる
- 足や爪に水虫ができる
- 皮膚が赤く腫れる、熱っぽく感じる
これらの症状は、軽度であると「年齢のせい」「乾燥しているだけ」と見過ごされがちですが、糖尿病の症状のサインであることも少なくありません。小さな変化でも、早めに気付くことが大切です。
なぜ糖尿病で皮膚が変化するのですか?
- 神経障害
- 血流障害
- 免疫力の低下
例えば、自律神経が障害されると、発汗機能が障害されて皮膚の乾燥の原因になります。また、痛みや温度を感じる神経(知覚神経)の障害により、靴ずれや小さな傷ができても気付かないことがあります。その結果、治療が遅れて潰瘍や壊疽などに進展しやすくなるのです。さらに、運動神経が障害されると、姿勢の変化や骨格筋の萎縮を招き、ウオノメやタコができるといわれています。
また、糖尿病になると合併症として動脈硬化が進行します。動脈硬化とは、動脈にコレステロールが蓄積した状態で、血管の血流障害を引き起こします。血流障害が起こると、皮膚に十分な酸素や栄養が届かず、傷の治りにくさにつながります。
さらに、糖尿病の影響で白血球や免疫機能を持つ細胞の働きが低下します。その結果、傷が化膿したり、水虫や蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの皮膚感染症にかかったりします。
参照:
『糖尿病性神経障害の診断』(現代医学 66巻 2号)
『フットケア』(国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター)
『動脈硬化疾患とは?』(一般社団法人 日本動脈硬化学会)
『糖尿病に伴う皮膚感染症と足病変』(日本環境感染学会誌 Vol.32 No.6)
糖尿病|皮膚病変の経過

糖尿病の皮膚病変を放置するとどうなりますか?
例えば、傷や水虫の部位から細菌が侵入して、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症することがあります。蜂窩織炎になると、38度以上の発熱とともに足が赤く腫れて、強い痛みを伴います。さらに、血液中に細菌が侵入して、菌血症を併発することも少なくありません。
さらに、まれではありますが、壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)を発症することがあります。壊死性筋膜炎は、病変が短時間で広がるのが特徴で、対応が遅れると命に関わるケースもあります。壊死性筋膜炎は、発症した方の45~72%に糖尿病が合併しているともいわれています。
また、血流障害のために足の傷が治らず感染の状態が悪化すると、壊疽に進行してしまうことがあります。状態によっては足を切断しなければいけないケースもあります。
参照:
『蜂窩織炎(ほうかしきえん)』(東京都健康長寿医療センター)
『糖尿病と皮膚』(川崎医科大学 総合医療センター)
『糖尿病に伴う皮膚感染症と足病変』(日本環境感染学会誌 Vol.32 No.6)
糖尿病が悪化すると皮膚の状態も悪くなりますか?
糖尿病の治療をすれば皮膚の状態は改善しますか?
血糖値が適正にコントロールされると、血流や皮膚の新陳代謝が改善されます。
ただし、症状が長時間続いている場合や、すでに重症化している場合は、糖尿病の治療だけでなく、皮膚科での治療も同時に行うことが求められます。
糖尿病による皮膚病変の治療法と対処法

糖尿病による皮膚病変の治療法を教えてください
水虫などの真菌感染や細菌感染がみられる場合には、抗真菌薬や抗菌薬を用いて治療を行います。症状の程度によっては、外用薬だけでなく、内服薬や点滴治療が必要になることもあります。
感染や血流障害により皮膚が壊死している場合には、壊死した組織を取り除くデブリードマンが行われます。これにより、感染の拡大を防ぎ、傷の治癒を促します。
さらに、これらの治療効果を高め、再発を防ぐためには、血糖値の適切なコントロールが欠かせません。
参照:『糖尿病性皮膚潰瘍・壊疽診療ガイドライン(第3版)』(日本皮膚科学会)
皮膚病変がみられるときの生活上の注意点はありますか?
また異変を感じた場合に、自己判断で処置すると悪化の原因になります。速やかに医療機関を受診して、適切な処置を受けましょう。
糖尿病で皮膚を変化させないために自分でできることはありますか?
- 皮膚を清潔に保つ
- 皮膚の保湿を行う
- 爪を切りすぎない
- 自分に合った靴を履く
- 靴下を履いて、傷から足を守る
まず、皮膚は清潔に保ちましょう。毎日身体を洗い、汗や汚れを落とすことで感染症の予防につながります。皮膚が乾燥している場合は、入浴後に保湿剤を塗ります。ただし、指の間は、湿って水虫の原因になることがあるため、保湿剤の塗布は避けましょう。
爪を切る際は、深く切りすぎないことがポイントです。深爪や巻き爪は傷の原因になるため、角を残してまっすぐ切り、傷や巻き爪を防ぎましょう。
さらに、サイズの合わない靴や素足での生活は、靴擦れやケガのもとです。靴は、つま先に1cm程度の余裕があり、足の形に合ったものを選びましょう。また、神経障害により感覚が鈍くなっている場合があります。靴を履く前には小石や異物が入っていないかを必ず確認しましょう。室内では靴下を履くように心がけて、足を傷から守りましょう。
また、先述したとおり、毎日の皮膚の状態を観察して、異常に気付いたら医療機関に相談することも大切です。こうした日常の心がけが、皮膚トラブルの予防につながります。
参照:『フットケア』(国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター)
編集部まとめ

糖尿病になると、血糖値の影響で皮膚の乾燥やかゆみ、感染症などのトラブルが起こることがあります。ただし、これらの症状は、適切な血糖値のコントロールや治療により、改善が期待できます。さらに、毎日皮膚を観察する、足を清潔に保つなどのフットケアがトラブルの予防につながります。皮膚の小さな変化を見逃さず、皮膚の赤みや腫れ、治らない傷がある場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
参考文献




