「加齢黄斑変性」になってから「失明」までの期間はどのくらい?【医師監修】

加齢黄斑変性は、主に50歳以上の方に発症しうる目の病気です。視野の中心を担う黄斑という部分が障害され、物がゆがんで見えたり、中心が暗く欠けたりする症状を引き起こします。進行すると視力回復が困難になるおそれもあり、日本では失明原因の第4位に挙げられています。しかし、適切なタイミングで発見し治療を行えば、視力低下の進行を食い止めたり、予防したりすることが可能になってきています。本記事では、加齢黄斑変性の基礎知識から種類ごとの経過や進行スピード、そして進行を抑制するためにできることを解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
加齢黄斑変性の基礎知識

加齢黄斑変性とはどのような病気ですか?
初期は自覚症状がないこともありますが、病気が進行すると車の運転や読書など日常生活に支障をきたすようになります。特に、黄斑部は一度傷つくともとに戻らないことがあるため、放置すると進行して視力がもとに戻らない病気とされています。
加齢黄斑変性の原因を教えてください
加えて、喫煙は加齢黄斑変性の最大の危険因子であり、喫煙者は非喫煙者に比べ発症リスクが高いことがわかっています。
そのほか、紫外線曝露、遺伝的要因、食生活の乱れや肥満、高血圧、高コレステロールなどの生活習慣病もリスク因子として知られています。このように複数の要因が重なって黄斑部の加齢変性が進行し、発症にいたると考えられています。
加齢黄斑変性で失明に至るまでの経過と期間の目安

加齢黄斑変性は種類によって経過が異なりますか?
一方、視力が大きく変動するのは滲出型加齢黄斑変性です。滲出型では脈絡膜から脆弱な新生血管が発生し、黄斑部の組織を傷つけます。このタイプは萎縮型に比べて、視力低下の進行が急速で、放置すると黄斑の細胞破壊が一気に進みかねません。
さらに、最初は萎縮型と診断されても後に滲出型へ移行することもあります。そのため、加齢黄斑変性と診断された場合は種類に関わらず定期的な検査を続け、症状の変化を見逃さないことが重要です。
滲出型加齢黄斑変性の進行スピードの目安を教えてください
萎縮型加齢黄斑変性はどのような速度で進行しますか?
ただし、注意しなければならないのは、萎縮型の一部が時間経過とともに滲出型に移行してしまう場合があることです。したがって、萎縮型と診断され進行が緩やかでも油断は禁物で、定期検診で経過観察を行い、視力低下が急に進んだ際は速やかに対応できるよう備えることが大切です。
加齢黄斑変性の早期発見と進行抑制のポイント

加齢黄斑変性を早期発見するためにできることを教えてください
また、自分でできるチェック方法として片目ずつ見え方を確認する習慣をつけてください。ふだん人間は両目で見ているため、片方の目の異常に気付きにくいことがあります。意識して片目ずつ物を見ることで、「視界がゆがんでいないか」「中心に黒いシミのような欠けがないか」をセルフチェックすることができます。
具体的には、縦横のマス目模様があるアムスラーチャートを用いたセルフチェックが有名です。格子の模様が一部歪んで見えたり、欠けて見えたりしたら眼科を受診するようにしましょう。
滲出型加齢黄斑変性はどのように治療しますか?
抗VEGF薬の登場によって、滲出型AMDで低下した視力が改善したり、少なくともこれ以上悪化しないように維持できる可能性が大きく高まりました。現在使われている代表的な薬剤にはルセンティスやアイリーアなどがあり、月1回程度の頻回投与から始め、経過に応じて間隔を延ばしながら治療を継続します。
なお病状によっては、光線力学的療法(PDT)やレーザー光凝固術などを併用することもあります。PDTは光に反応する薬剤を点滴注射してから低出力レーザーを照射して新生血管を閉塞させる治療、レーザー光凝固術は高出力レーザーで新生血管そのものを焼いてしまう治療で、いずれも症例に応じて検討されます。
これらの治療法を組み合わせ、可能な限り黄斑へのダメージを抑え、視力を維持することが滲出型加齢黄斑変性の治療の目的です。
萎縮型加齢黄斑変性の進行を抑制する方法を教えてください
具体的には、前述した喫煙や食生活などのリスク因子を可能な限り排除し、網膜の健康を保つことが求められます。禁煙はもちろんのこと、抗酸化作用のあるルテインやゼアキサンチンなどを十分に含んだバランスのよい食事を心がけましょう。
これらの栄養素を効率よく摂るためにサプリメントの併用も推奨されています。なお、サプリメントはあくまで補助的手段ですので、必ず医師と相談のうえ服用し、定期検査を続けながら進行抑制を図っていきましょう。
加齢黄斑変性と診断された場合に日常生活で気を付けることはありますか?
- 禁煙を心がける
- サングラスや眼鏡で紫外線から目を守る
- 緑黄色野菜や果物、青魚など抗酸化作用や網膜保護作用のある栄養素を豊富に含む食品を積極的に摂る
- 1ヶ月に1回はセルフチェックを行う
以上の点を心がけ、主治医の指導のもとで適切な治療と生活管理を続けることが加齢黄斑変性と上手に付き合うために重要です。
編集部まとめ

加齢黄斑変性は年齢とともに起こりうる身近な目の病気ですが、その進行スピードや重症度はタイプによって大きく異なります。しかし、症状が軽いうちに発見し、対策を取っていれば視力の維持や改善も期待できます。一方、滲出型に進行してしまうと、短期間で視力が失われる危険があり、治療に長期間を要したり視力が回復しきらなかったりすることも少なくありません。したがって、「最近なんだか見え方がおかしい」と感じたら放置せず、早めに眼科を受診することが大切です。大切なことは予防と早期発見、早期治療です。適切な生活習慣の改善と治療によって、加齢黄斑変性による視力低下を可能な限り抑え、これからもご自身の大切な目を守っていきましょう。




