「腸閉塞の予防」に効果がある「食べ物」はご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/12/10


監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
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循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
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目次 -INDEX-
腸閉塞の基礎知識
腸閉塞とはどのような病気ですか?
腸閉塞とは、腸の内容物(食べかすやガスなど)が何らかの原因で通過できなくなった状態を指します。腸はお口から肛門までつながる長い管状の臓器で、食べたものを消化・吸収しながら体外へ排出する役割を担っています。この流れが途中で遮断されると、腸内に食べ物やガスがたまり、腸が拡張して激しい腹痛や吐き気、嘔吐を起こします。
腸の通りが悪くなる病気には、大きくわけて腸閉塞とイレウスがあります。腸閉塞は、腸の中が癒着や腫瘍、ヘルニアなどで物理的にふさがってしまう状態を指します。一方、イレウスは、腸に明らかな閉塞がないのに腸の動きが麻痺して止まってしまう状態のことです。
腸閉塞の症状を教えてください
主な症状は、強い腹痛、腹部の膨満感、吐き気・嘔吐、便やガスが出ないことです。痛みは間欠的に強まることが多く、腸が動こうとするタイミングで差し込むような痛みを感じます。
進行すると腸の動きが完全に止まり、腹部がパンパンに張って吐き気が強くなります。嘔吐した内容物が胆汁や便のようなにおいを帯びてくることもあります。また、発熱や脈の上昇、冷や汗などの全身症状が出る場合は腸が壊死している可能性があります。
なぜ腸閉塞になるのですか?
腸閉塞の原因で多いのは癒着です。過去にお腹の手術を受けた方では、腸が周囲の臓器や腹壁にくっついてしまうことがあり、腸がねじれたり折れ曲がったりして通りが悪くなります。そのほか、腸のなかに腫瘍やポリープができたり、ヘルニアで腸が外に押し出されたりすることで通過障害が起こることもあります。高齢の方では、便秘や脱水、内服薬(特に鎮痛薬や抗コリン薬など)によって腸の動きが弱くなり、腸閉塞を起こすこともあります。
腸閉塞の予防に効果的な生活習慣
腸閉塞の予防に効果がある食べ物や調理方法を教えてください
腸閉塞の再発を防ぐには、腸に負担をかけず、通りを妨げない食事を心がけることが大切です。消化のよい食材を選び、やわらかく調理することが基本です。お粥ややわらかく煮たうどん、豆腐、白身魚、卵料理、温かいスープなどは腸を通りやすくおすすめです。野菜やきのこ、海藻、豆類などは細かく刻み、よく煮込んで消化を助けましょう。ごぼう、たけのこ、こんにゃく、ナッツ類などの繊維が多い食材は詰まりの原因になりやすいため、食べる場合は少量に抑えます。脂っこい料理や香辛料の強い食事、炭酸飲料、アルコールは腸の動きを乱すことがあるため控えめにし、冷たい飲み物よりも温かい食事を中心にすることが望ましいです。
腸閉塞を起こりにくくする食べ方や食習慣はありますか?
一度に多く食べると腸に急な圧力がかかり、癒着部分で詰まりやすくなるため、腹八分目を意識し、少量ずつゆっくりよくかんで食べることが基本です。
食後にお腹のハリや違和感を覚えたときは、無理に食べ続けず一食抜くか量を減らして腸を休ませましょう。冷たい食事ばかりでは腸の動きが鈍るため、温かい汁物や煮込み料理を取り入れることがすすめられます。便秘は腸の通過を悪くするため、排便リズムを整え、便をため込まないようにすることも大切です。
腸閉塞の予防に効果的な運動や生活習慣を教えてください
腸の働きを保つには、無理のない範囲で身体を動かし、血流を促すことが有効です。軽い散歩や体操を日課にすることで腸の蠕動運動が整いやすくなります。長時間同じ姿勢を続けると腸の動きが滞るため、こまめに立ち上がったり軽く身体を伸ばしたりすることが予防につながります。冷えは腸の働きを弱めるため、入浴で身体を温めたり、腹部を冷やさないように衣服を調整したりすることも大切です。
腸閉塞が疑われる症状と緊急受診の目安
腸閉塞には前兆や初期症状はありますか?
腸閉塞は突然強い痛みが起こることもありますが、初期にはお腹のハリや膨満感、食欲の低下、吐き気などの軽い不調から始まることが多いとされています。腸の通過が悪くなると、便やガスが出にくくなり、時間とともに腹部が膨らんで硬く感じられるようになります。
初期の段階では、腸の一部で通過が滞っているだけのこともあり、しばらく食事を控えると症状が落ち着く場合もあります。ただし、痛みが周期的に強まったり、ハリが増してくる場合は進行している可能性があります。特に腹部手術後で癒着がある方は、少しの変化でも腸閉塞の再発につながることがあるため、慎重に経過観察をしましょう。
夜間や休日でも受診をした方がよい症状を教えてください
腸閉塞が進行すると、腸の血流が障害されて壊死や穿孔を起こす危険があります。次のような症状がある場合は、夜間や休日でも救急外来を受診してください。
- 我慢できないほどの強い腹痛が持続する
- 腹部が極端に張って硬くなる
- 吐き気や嘔吐が止まらず、吐いたものに便のようなにおいがある
- 発熱や冷や汗、顔面蒼白、脈の上昇などの全身症状を伴う
腸閉塞が疑われるものの、平日日中の受診でも問題がないケースはありますか?
お腹の軽いハリや食欲の低下、ガスや便の出にくさがある程度で、強い痛みや嘔吐、発熱がない場合は、急を要さないことがあります。
このようなときは、無理に食べずに腸を休ませ、温かい水分を少しずつ取りながら安静に過ごしましょう。半日から1日でお腹のハリが軽くなるようであれば、腸の動きが一時的に滞っていただけの可能性があります。
ただし、症状が続く、または以前より頻繁に起こる場合には、日中の外来で相談し、検査や治療の必要性を確認しておきましょう。日常的に軽い腹部の不調を繰り返す方は、主治医と食事内容や排便のリズムを見直しながら、再発を防ぐ工夫を続けることが大切です。
編集部まとめ
腸閉塞は、腸の通り道が一時的または完全にふさがれることで起こり、腹痛やお腹のハリ、嘔吐、排便・排ガスの停止などが主な症状です。手術後の癒着や腸のねじれ、腸の動きの低下などが原因となり、再発を繰り返すこともあります。食生活は、やわらかく煮た消化のよい食事を心がけ、食べすぎず、ゆっくりよくかんで食べることが予防の基本です。
お腹のハリや違和感などの軽い不調がある場合は、無理をせずに腸を休ませ、症状が続くときは外来で相談しましょう。強い腹痛、嘔吐、発熱、著しい膨満感などがある場合は、夜間や休日でもためらわず受診することが大切です。



