なんとなく体調がすぐれない、疲れが取れない、といった不調が続いているのに、病院の検査では異常ないといわれることがあります。そのつらい症状は、もしかすると自律神経失調症が原因かもしれません。自律神経のバランスが乱れることで、全身にさまざまな症状が現れるこの状態は、ストレスや生活習慣の乱れなどが背景にあります。本記事では、自律神経失調症の原因や症状から、症状を和らげるセルフケア方法、そして病院で受けられる治療法までを解説します。
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
自律神経失調症の原因と症状

なぜ自律神経失調症になるのですか?
自律神経失調症の最大の原因はストレスです。過剰な仕事や人間関係のプレッシャーなど精神的ストレスだけでなく、過労や睡眠不足、暑さ寒さの差といった身体的ストレスも重なることで、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
私たちの脳はストレスに弱く、強いストレス状態が長く続くと不安などの神経症状が生じ、その影響が自律神経にも波及します。このように、精神的および身体的ストレスや生活習慣の乱れが重なり、脳と身体の両面で疲労が蓄積することが、自律神経失調症を引き起こす原因です。
自律神経失調症の主な症状を教えてください
自律神経は全身の臓器をコントロールしているため、バランスが乱れると
身体のさまざまな部位にさまざまな症状が現れます。自律神経失調症の症状は下記のとおりです。
- 動悸
- 立ちくらみやめまい
- ほてりと止まらない発汗
- 血圧の変動
- 下痢や便秘などの消化器症状
- 片頭痛や頭重感
- ひどい肩こり
- 手足の冷え・しびれ
- 原因不明の疲労感や倦怠感
- 不眠
これらの症状は自律神経失調症だけでなく、さまざまな病気の症状としても現れます。また、人によって症状の出方は異なり、複数の症状が同時に現れるのが特徴です。また、自律神経の乱れに伴って不安感や抑うつ気分、集中力の低下といった精神的な症状が出ることもあります。これらの症状が長期間続き、内科的な検査でも原因がみつからない場合には、自律神経失調症が疑われます。
自律神経失調症を治療しないとどうなりますか?
自律神経失調症そのものは命に関わる病気ではありませんが、放置して慢性化すると生活の質が大きく低下します。これらの症状が1日の間で何度も起これば、集中力が低下してしまい、仕事や学業に支障が出ることも考えられます。また、不安感や抑うつ気分などが長期化すれば、うつ病などの疾患を招くことも懸念されます。このように、自律神経失調症自体が命に関わらないとしても、日常生活に大きく影響しうる病気です。当てはまる症状あったり、強い症状があったりすれば、早めに医療機関を受診しておくとよいでしょう。
自律神経失調症のセルフケア方法

自律神経失調症を自分で治すことはできますか?
はい、適切なセルフケアによって自律神経失調症の改善は可能です。 軽度の不調であれば、病院での治療を受けなくても生活習慣の見直しによって、症状が楽になることもあります。特に、症状の原因となっているストレス要因を減らし、乱れた生活リズムを整えることが大切です。自律神経失調症はすぐに治るものではありませんが、ご自身のペースでセルフケアを続けることで少しずつ回復に向かうことが期待できます。ただし、症状が強く日常生活に支障をきたす場合や、セルフケアを一定期間試しても改善しない場合には、無理をせず医師の診察を受けることも大切です。
自律神経失調症の治し方を教えてください
自律神経失調症を改善するには、
規則正しい生活と
ストレス対策という基本を押さえましょう。具体的には以下のようなセルフケアを取り入れてください。
- 睡眠をしっかりとる
- バランスのよい食事を心がける
- 適度な運動を行う
- 深呼吸やヨガ、瞑想など、リラックスできる習慣を取り入れる
これらのセルフケアを実践することで、自律神経のバランス回復につながります。ただし、一度乱れた自律神経がもとに戻るには時間がかかるため、劇的な変化を求めずに少しずつ生活改善を続けることが大切です。
自律神経失調症の人が避けた方がよい生活習慣はありますか?
自律神経失調症の改善のためには、
悪影響を及ぼす生活習慣を避けることも重要です。以下のような習慣は自律神経の乱れを悪化させる可能性があるためできるだけ避けるようにしましょう。
- 睡眠不足・不規則な睡眠リズム
- 過度なストレスを放置する
- 栄養バランスが偏った食生活
- 運動不足
- 過度な飲酒・喫煙
すべての項目をすぐに修正するのは難しいでしょう。自分の日頃の生活を振り返り、心当たりがある習慣があれば少しずつあらためていきましょう。
市販薬で自律神経失調症の症状をやわらげることはできますか?
市販薬で自律神経失調症そのものを治すことはできませんが、一部症状がやわらぐことがあります。例えば、胃の痛みや胃もたれ、下痢、便秘など消化器系の症状に対しては、整腸剤が有効な場合があります。
ただし、市販薬でできることはあくまで対症療法であり、自律神経失調症の根本原因を取り除くものではありません。自己判断で市販薬に頼り過ぎると、実は別の病気が隠れているのに発見が遅れるリスクもあります。市販薬を試す際は薬剤師に相談し、用法用量を守って正しく使用してください。また、飲み合わせや副作用にも注意が必要です。市販薬を使用しても症状が改善しない場合や長引く場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
自律神経失調症の病院での治療法

病院では自律神経失調症を完全に治すことはできますか?
適切な治療と生活改善によって、自律神経失調症の症状は十分に改善し、健康な状態を取り戻すことが可能です。 ただし、即効性のある特効薬があるわけではなく、原因となるストレスや生活習慣に対処しながら段階的に治していく必要があります。症状や体質には個人差があるため、完治までの期間も人それぞれです。大切なのは医師の指示のもと根気強く治療とセルフケアを継続することです。仮に不調が長引いても悲観せず、少しずつでも前進していることを信じて治療を続けましょう。
自律神経失調症を根本的に治療する方法を教えてください
自律神経失調症を根本から改善するには、症状の原因となっているストレス要因や生活習慣の見直しが欠かせません。病院での治療も、まずは
ストレスを減らすことから始まります。仕事量を調整したり、人間関係の悩みを相談したりして精神的な負担を軽くし、夜型生活や運動不足など身体的ストレスを生む習慣を整えることが重要です。
必要に応じて抗不安薬などが処方され、過敏になった神経を落ち着かせるサポートを行います。さらに、カウンセリングや認知行動療法(CBT)といった心理療法も効果がある場合もあります。これらはストレスの受け止め方や考え方の癖を見直し、心の安定を取り戻す手助けになります。
薬に頼るだけでなく、ストレスケアと生活習慣改善、精神的なサポートを組み合わせることで、自律神経を整えます。
病院では自律神経失調症の症状に対してどのような治療を行いますか?
自律神経失調症の治療は、患者さんの症状や生活状況に合わせて行われます。治療の柱は、心理療法やカウンセリング、薬物療法です。心理療法では認知行動療法(CBT)などを通じて、ストレスに強い思考や生活習慣を身につけます。そして、薬物療法では抗不安薬、抗うつ薬、睡眠導入剤などが用いられ、頭痛や胃腸不調には鎮痛剤や整腸薬が処方されることもあります。これらの治療を医師と相談しながら、治療を進めていくことが大切です。
編集部まとめ

自律神経失調症はその原因や症状は人によってさまざまであり、治療も症状の程度や背景によって異なります。軽い段階であれば生活習慣を整えストレスを減らすだけで改善します。一方、深刻化すると長期の療養や薬物療法や心理療法が必要となり、社会生活への影響も大きくなります。「もしかして自律神経失調症かも」と感じたら、早めに対策を始めることが大切です。
まずは睡眠や食事、運動など基本的な生活習慣を見直し、それでもつらいときは我慢せず医師に相談しましょう。大切なのは、自分の心と身体に注意を払い、無理をしすぎないことです。日々のセルフケアと必要な治療を根気強く続けていけば、きっとつらい症状から解放されていくでしょう。