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「緑内障」かどうか「見た目」でわかるの?自覚症状や緑内障の見え方も解説!

 公開日:2025/11/13
「緑内障」かどうか「見た目」でわかるの?自覚症状や緑内障の見え方も解説!

緑内障は日本人の40歳以上の約5%、60歳以上では約10%が患っているとされ、中途失明原因の第1位にも挙げられる病気です。自覚症状が乏しいまま進行するため、気付かないうちに視野が欠けてしまうこともあります。しかし一方で、早期に発見し治療を開始すれば、一生涯にわたって日常生活に支障ない視力と視野を維持できる可能性がある病気です。本記事ではそんな緑内障の症状や種類、原因、受診の目安や治療法を解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

緑内障の見た目と自覚症状

緑内障の見た目と自覚症状

緑内障は見た目でわかりますか?

多くの場合、緑内障は外見上の変化が基本的にはありません。目が赤くなったり白く濁ったりといった症状は通常なく、鏡で自分の目を見たり他人から見てもらったりしても緑内障かどうか判断することはできません。急激に眼圧が上昇する急性緑内障発作では、目の充血や角膜の濁り、瞳孔拡大などの症状が現れることもあります。しかし、主な緑内障にはそのような症状はなくゆっくりと進行し、外見上は異常がないまま進む場合がほとんどです。そのため、見た目に問題なくても、40歳を過ぎたら年に一度は定期検診を受けることが推奨されています。見た目では判断できないからこそ、検査による早期発見が重要なのです。

参照:『よくわかる緑内障―診断と治療―』(日本眼科医会)

緑内障の自覚症状を教えてください

初期の緑内障には自覚症状がないことが多いです。特に、視力は良好に保たれ、痛みや充血もないため、自分で異常に気付くことが難しいのが特徴です。緑内障では、まず視野の周辺部から欠けていくため、両目で見ていると変化に気付きにくくなります。

こうした理由から緑内障がある程度進行するまでは自覚症状が出ないことが多く、視野の欠損がかなり進んでから自覚することも少なくありません。

一方、急性緑内障発作の場合は激しい目の痛み、頭痛、吐き気、かすみ目などの強い症状が突然あらわれます。これらの症状を我慢できる方はほとんどいません。また、放置すると失明の危険もあるため、緊急での治療が必要です。

緑内障になると見え方は変化しますか?

はい、緑内障が進行すると見え方に特徴的な変化が生じます。初期から中期には自覚しにくいものの、病状が進むと視野の一部に見えにくい箇所(暗点)が現れたり、周辺の視野が狭くなったりします。例えば、日常生活では人混みでぶつかりやすくなったり、横から来る自転車や車に気付きにくくなったりすることがあります。さらに緑内障が進み、末期の状態になると、視野の中心部も欠け始めます。その結果、視野だけでなく、視力も下がってしまい、日常生活に支障が出てきます。さらに、一度このように失われた視野はもとに戻らないため、早期発見と治療によって進行を食い止めることがとても重要です。

緑内障の種類と症状、原因

緑内障の種類と症状、原因

緑内障の種類を教えてください

緑内障にはいくつかの種類があります。主な種類は以下のとおりです。

  • 原発開放隅角緑内障
  • 原発閉塞隅角緑内障
  • 正常眼圧緑内障
  • 先天緑内障
  • 続発緑内障

緑内障は以上のように種類が分かれています。これらは眼圧や目の中の水(房水)の出口の状態、発症年齢や併発疾患によって分類されます。特に、日本では正常眼圧緑内障という種類の緑内障が多いとされ、人種間でも発症率の違いがあるとされています。

参照:『よくわかる緑内障―診断と治療―』(日本眼科医会)

緑内障になるとどのような症状が現れますか?

先述したとおり緑内障になると、視野の一部が見えにくくなったり、それが中心に及べば視力を下げたりすることがあります。しかし、進行はゆっくりなため、自覚症状を感じづらいのが特徴です。一方、緑内障の特殊型である急性緑内障発作の状態になると、目の痛みや充血、見えにくさなどの症状が現れることがあります。急性緑内障発作による症状は突然発症するため、自覚症状を強く感じやすくなります。このように、緑内障と名前が付いていても、その症状の出方には差があることに注意が必要です。

緑内障が進行するとどうなるのか教えてください

緑内障を治療せず放置すると、視野障害がどんどん進行し、やがて失明する可能性があります。実際に、緑内障は成人の中途失明原因の第1位であり、一度失った視野をもとに戻すことはできません。

実際には、緑内障患者さん全員が失明してしまうわけではありませんが、きちんと治療を受けることが失明を防ぐためには大切です。ただし、緑内障そのものを完治させる治療法はなく、あくまで進行を抑えることしかできません。そのため、少しでも早期に発見し適切な治療を続けることが重要です。

現在、日本眼科医会などは40歳以上に眼科検診を受けるように推奨しています。これには緑内障などの目の病気を早期発見し、必要であれば治療を開始することで失明などを防ぐ目的があります。

なぜ緑内障になるのですか?

緑内障はさまざまな要因が絡んで発症します。そのなかでも特に、目の中の圧力(眼圧)が視神経を傷つけることが主な原因とされています。

私たちの目の中には房水と呼ばれる透明な液体が循環しており、房水の産生と排出のバランスによって眼圧が一定に保たれています。しかし、房水の排出口が詰まったり、塞がったりすると房水がうまく排出されず、眼球内に液体が溜まり、眼圧が上昇します。眼圧が高い状態が続くと、目の奥で視神経繊維が集まる視神経乳頭という部分が圧迫され、次第に視神経がダメージを受けていきます。これが緑内障を発症する仕組みです。

なお、眼圧が正常範囲内でも緑内障になる正常眼圧緑内障の場合は、視神経の血流不足や脆弱性など眼圧以外の要因で視神経障害が起こると考えられています。

緑内障で眼科を受診する目安

緑内障で眼科を受診する目安

どのようなときに眼科を受診するべきですか?

視野の一部に見えにくさがあったり、視力の低下を自覚したりしている場合は眼科を受診するようにしてください。しかし、先述のとおり緑内障の初期は自覚症状を感じづらいため、症状の有無に関わらず定期的な眼科検診を受けることが望ましいです。特に、40歳を過ぎた方は、一度は眼科で緑内障の有無をチェックしてもらうことが推奨されています。

また、家族に緑内障患者さんがいる方強度近視の方などリスク因子をお持ちの方は40歳を待たずに早めに眼科受診することをおすすめします。そうした方は若いうちから発症する可能性があり、症状がなくても検査で初期の緑内障が見つかることもあります。

眼科で行われる緑内障検査の内容を教えてください

眼科では緑内障の診断のためにさまざまな検査が行われます。主な検査項目は次のとおりです。

  • 屈折検査
  • 視力検査
  • 眼圧検査
  • 隅角検査
  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 眼底検査
  • 光干渉断層計(OCT)
  • 視野検査

以上のように眼科では複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。これらの検査結果から、緑内障の有無と種類、進行状況を評価します。

緑内障が発見された場合の治療法を教えてください

上記の検査で緑内障が見つかった場合、まずは目薬を用いて治療を行います。緑内障では一度失った視野はもとに戻すことはできません。そのため、治療の目的はこれ以上視野を失わないよう、進行を止めることです。

眼圧を下げる目薬にはさまざまな種類があります。それらを組み合わせて、毎日決められた回数を忘れずに点眼し、継続的に眼圧をコントロールすることで視野障害の進行を抑えます。点眼治療で目標とする眼圧まで十分下がらない場合や、目薬だけではなお視野が悪化する場合にはレーザー治療手術を検討します。

編集部まとめ

編集部まとめ

緑内障は加齢とともに誰にでも起こりうる身近でありふれた目の病気です。しかし、その多くは初期症状や外見上の変化に乏しく、自分で気付かないうちに進行してしまいます。「年だから仕方ない」と見過ごされがちですが、放置すれば徐々に視野が失われ、最終的には失明につながる可能性があります。一方で、早期に発見して適切な治療を受ければ緑内障の進行を遅らせることが可能で、多くの患者さんは生涯にわたり生活に支障ない視力を保つことができています。そのためには定期的な眼科検診と、必要に応じた速やかな受診と治療開始が欠かせません。「最近なんとなく見えにくい」「視界が狭い気がする」と感じたら、それを放置せず眼科を受診してください。大切な視力を守る第一歩として、ぜひこの機会に目の検診を考えてみてください。

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