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「動脈硬化に自覚症状」はあるの?発症しやすい人の特徴も解説!【医師監修】

 公開日:2025/11/21
「動脈硬化に自覚症状」はあるの?発症しやすい人の特徴も解説!【医師監修】

動脈硬化が進行すると、血管は全身で硬くもろくなり、やがて深刻な合併症を引き起こします。代表的なものとしては、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気、脳梗塞や脳出血といった脳の病気など、多岐にわたります。 本記事では、動脈硬化がどの程度進んでいるかを確認する検査方法や、医療機関を受診する目安を解説します。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

動脈硬化の概要と血管で起きていること

動脈硬化の概要と血管で起きていること

動脈硬化とは何ですか?

私たちの身体には、血管という血液の通り道がはりめぐらされています。血管の中には血液という液体が満ちていて、その液体に含まれる赤血球という細胞が、身体のあちこちに酸素を運んでいます。なかでも、動脈という心臓から血液を全身の臓器に送るための血管は、必要に応じてしなやかに伸び縮みします。

しかし、動脈硬化が進むと、本来しなやかに伸び縮みする動脈の血管の壁が傷んで、弾力を失い、厚く硬く、狭くなってしまいます。こうなると、狭窄の程度によって全身の臓器に赤血球を届け酸素を運搬させることができなくなってきます。その結果、全身の臓器にさまざまな影響が及びます。

動脈硬化になると血管はどのような状態になるのか教えてください

動脈硬化が起きると、いくつかの要因が組み合わさって血管の内側の壁が傷み、そこに脂肪や炎症反応が蓄積していきます。動脈硬化は次のように進みます。

  • 血管の壁が高血圧や糖尿病、脂質異常症、加齢などの要因で傷む
  • 傷んだ血管壁にLDLコレステロールが入り込み、脂質の塊(プラーク)として沈着する
  • 血管内に入り込んだ脂質や傷んだ組織に免疫細胞が集まり、さらにプラークが大きく成長する
  • できたプラークが大きくなると、血管の内腔を狭めて血流が悪くなる
  • さらにプラークが破れて血小板が集まると血栓(血の塊)ができ、一気に血管が詰まる

なぜ動脈硬化が起きるのですか?

動脈硬化は、血管が傷つくことで起こります。動脈硬化は加齢で進行しますが、基礎疾患があるとさらに発症、進行しやすいです。動脈硬化を進展させる代表的な基礎疾患は次のとおりです。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肥満・メタボリックシンドローム
  • 慢性腎臓病

これらの疾患をお持ちの方は、疾患の治療を継続することが重要です。

参考:『疫学研究から探る 動脈硬化性疾患リスクとは? ~動脈硬化性疾患を エンドポイントとした 久山町研究のスコアについて~』(日本内科学会雑誌第112巻第2号)

動脈硬化の自覚症状とチェックポイント

動脈硬化の自覚症状とチェックポイント

動脈硬化になる可能性があるのはどのような人ですか?

動脈硬化になりやすい方は、高齢の方や男性、閉経後女性など年齢や性別の特徴があるほか、先述の特定の基礎疾患などが、動脈硬化の原因になることが知られています。

さらに、動脈硬化を起こしやすい方には、いくつか共通する生活におけるリスク因子があります。

  • 喫煙
  • 高脂肪・高カロリーの食事
  • 運動不足
  • 過度の飲酒
  • 慢性的なストレス

また、両親や兄弟姉妹に心筋梗塞や脳卒中の既往があると、遺伝的に動脈硬化を起こすリスクが高いといえます。

参考:『疫学研究から探る 動脈硬化性疾患リスクとは? ~動脈硬化性疾患を エンドポイントとした 久山町研究のスコアについて~』(日本内科学会雑誌第112巻第2号)

動脈硬化に自覚症状はありますか?

動脈硬化自体に自覚症状はほぼありません。このため、進行に気が付きにくく合併症にいたってしまう例もあります。

動脈硬化で自覚症状を感じにくい理由を教えてください

動脈硬化で自覚症状を感じにくい理由は、動脈が硬くなることで生じる痛覚がないためです。また、動脈は全身に存在し、動脈硬化自体に特異的な症状もありません。

血液検査の結果で動脈硬化の可能性の有無を確認できますか?

血液検査の結果で動脈硬化の可能性の有無を確認することは難しいです。ただし、腎臓など細い血管の集合体である臓器の障害が血液検査の結果とらえられることがあり、その場合はこの限りではありません。

病院での動脈硬化の検査と診断

病院での動脈硬化の検査と診断

病院で行われる動脈硬化の検査の内容を教えてください

病院で行う動脈硬化の検査は下記のとおりです。

  • 頸動脈超音波
  • 足関節上腕血圧比(ABI)・CAVI検査
  • CTによる血管評価
  • 血管造影検査

頸動脈超音波検査では、首の動脈を超音波で観察し、血管の壁の厚さやコレステロールの沈着であるプラークの有無を確認します。身体への負担が少ないため、早期の動脈硬化を調べる方法として広く用いられています。

ABI・CAVI検査もよく行われる方法です。ABI検査では手足の血圧を測定し、その比率を算出することで下肢動脈に狭窄や閉塞がないかを調べます。一方でCAVI検査は、血管の硬さを数値として客観的に評価できる検査です。年齢や血圧の影響を補正できる点に特徴があります。

さらに、CTを用いた検査では、心臓の血管を評価する冠動脈CTが代表的です。冠動脈CTでは心臓の血管に石灰化や狭窄が存在しないかを調べられるほか、冠動脈石灰化スコアを算出することで、動脈硬化の進行度を数値で把握し、リスク評価に役立てることができます。

より精密に血管の状態を確認したい場合には、血管造影検査が行われます。冠動脈造影や下肢血管造影といった方法があり、造影剤を用いてX線で血管を直接映し出すことで、狭窄や閉塞の有無を正確に確認することが可能です。ただし、この検査は侵襲性が高いため、通常は狭心症や下肢閉塞性動脈硬化症などが強く疑われるケースに限って行われます。

動脈硬化の診断基準を教えてください

動脈硬化は、複数の検査を組み合わせて血管の硬さ・狭さ・血流障害の程度を評価し、総合的に診断します。 血管の硬さをみる基準としては、以下の検査があります。

  • 脈波伝播速度
  • ABI

また、血管の狭さをみる基準は以下のとおりです。

  • 頸動脈超音波
  • 冠動脈CT
  • カテーテル検査

さらに、下肢や頸動脈、脳血管などの血流障害の度合いを考慮にいれることもあります。

動脈硬化の方がすぐに受診をした方がよい症状

動脈硬化の方がすぐに受診をした方がよい症状

動脈硬化が進行するとどのような病気になりますか?

動脈硬化が進むと、全身にさまざまな病気を引き起こします。

脳では、血管が詰まって脳の一部が壊死する脳梗塞が代表的です。脳梗塞は、麻痺や言語障害、さらには認知機能の低下といった重い後遺症を残すことがあります。その前触れとして一時的に脳の血流が途絶える一過性脳虚血発作(TIA)が起こることも少なくありません。また、細い血管の動脈硬化が慢性的に進むと血管性認知症を発症し、記憶力や判断力の低下につながります。

心臓では、冠動脈が狭くなることで労作時に胸の痛みを生じる狭心症、さらに血管が完全に詰まって心筋の一部が壊死する心筋梗塞が起こります。いずれも命に関わる重大な病気であり、放置すれば心臓のポンプ機能が低下して心不全を引き起こし、息切れやむくみといった慢性的な症状につながります。

足の血管が障害されると閉塞性動脈硬化症が起こり、歩くと足が痛む間欠性跛行が現れます。進行すると足の組織が壊死し、切断を余儀なくされることもあります。さらに、動脈の壁そのものが弱くなると大動脈瘤大動脈解離が発症し、突然の破裂によって命を落とす危険もあります。

加えて、腎臓も動脈硬化の影響を受けやすい臓器の一つです。腎動脈が硬く狭くなる腎硬化症が進むと腎機能が低下し、慢性腎臓病から透析が必要になるケースもあります。

このように動脈硬化は、脳、心臓、腎臓、末梢血管といった全身に重大な病気をもたらし、ときには命に直結します。早期の段階で気付き、予防や治療につなげることが極めて重要です。

動脈硬化の人がすぐに病院に行った方がよい症状を教えてください

動脈硬化による合併症を放置すると命に関わることもあるため、以下のような症状があれば迷わず救急外来を受診してください。

脳に関連する症状(脳梗塞やTIAのサイン)
  • 急に片方の手足や顔がしびれる、力が入らない
  • 急に言葉が出にくい、ろれつが回らない、理解できない
  • 視力が突然かすむ、片眼が見えにくい
  • 急な強い頭痛やめまい、ふらつき

心臓に関連する症状(狭心症・心筋梗塞のサイン)
  • 胸の痛みや圧迫感(数分以上続く、冷や汗・吐き気を伴う)
  • 背中・肩・顎・左腕に広がる痛み
  • 動いたときや安静時に突然出現する胸部不快感
  • 息切れ、呼吸困難、極端な動悸

下肢血管に関連する症状(末梢動脈閉塞のサイン)
  • 足が急に冷たくなる、蒼白になる
  • 歩行時の強い足の痛み、安静時も持続する痛み
  • 足先のしびれや感覚低下、傷が治らない

そのほかの危険な症状
  • 意識がぼんやりする、突然倒れる
  • 冷や汗を伴う吐き気や全身の強い倦怠感
  • 急激な呼吸困難

このような血管の閉塞サインがあれば、早期治療が重要です。後回しにせず、すぐに病院を受診しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

動脈硬化は、年齢を重ねると誰にでもある程度は進んでしまう避けられない変化です。ですが、そのスピードを遅らせ、悪化を防ぐことは十分に可能です。 日常生活のなかでできる工夫、例えば適度な運動を続けることや、血圧や血糖、コレステロールといった基礎疾患やリスク因子をきちんと管理することによって、動脈硬化の進行を抑えることができます。 健康な血管を守ることは、心臓や脳、腎臓など大切な臓器を守ることにつながります。今日からできることを少しずつ取り入れて、より安心で元気な毎日を目指していきましょう。

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