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「ノロウイルスに特効薬」はある?治療で使用される薬についても解説!【医師監修】

 公開日:2025/11/07
「ノロウイルスに特効薬」はある?治療で使用される薬についても解説!【医師監修】
ノロウイルスは、食中毒や感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。1年を通して発生しますが、特に冬季に流行しやすく、感染すると激しい下痢や吐き気などのつらい症状を引き起こします。感染力がとても強く、家庭や施設で大流行することもあります。

ノロウイルスに感染すると、どのような治療を受けられるのでしょうか。この記事では、ノロウイルス感染症の治療薬や、自宅で行えるケアの方法を解説します。
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

ノロウイルスの特効薬

ノロウイルスの特効薬

ノロウイルス感染症に特効薬はありますか?

残念ながら、現在のところノロウイルス感染症に対する特効薬はありません。 インフルエンザにはオセルタミビルリン酸塩やザナミビル水和物、新型コロナウイルスにはエンシトレルビルフマル酸やモルヌピラビルといった抗ウイルス薬が存在します。これらの薬は、ウイルスの増殖を抑えることで症状を軽減し、回復を早める効果があります。

ノロウイルスに対しても、約半世紀にわたって特効薬の開発が試みられてきました。しかし、ノロウイルスは培養がとても難しく、研究が思うように進みませんでした。近年になって、いくつかの研究施設で培養に成功したという報告はありますが、実用的な抗ウイルス薬の開発には至っていません。

参照:『ヒトノロウイルスの in vitro 培養系』(ウイルス 第 73 巻 第 1 号,pp.9-16,2023)

ノロウイルス感染症の発症を防ぐ薬はありますか?

特効薬と同様に、ノロウイルス感染症の発症を予防する薬は現在ありません。現在も開発が続けられていますが、実用化にはいたっていません。

ノロウイルスへの感染を防ぐ予防注射や薬はありますか?

予防注射には、感染予防と発症予防の目的があります。ノロウイルスに関しては、発症予防の薬も感染を防ぐ予防注射や薬もありません。そのため、感染を防ぐためには、日々の生活で以下のような対策が有効です。

  • 調理前やトイレ使用後の手洗いを徹底する
  • 食材の中心部を85〜90度以上の温度で90秒間以上加熱する
  • 吐瀉物や排泄物の処理には手袋やマスクを使用する
  • 消毒には次亜塩素酸ナトリウム亜塩素酸水を使用する

こうした対策により感染リスクを下げることができます。

ノロウイルス感染症の治療で使用される薬

ノロウイルス感染症の治療で使用される薬

ノロウイルス感染症による吐き気にはどのような薬が用いられますか?

ノロウイルス感染症では、激しい吐き気や嘔吐に苦しむことが多いです。この症状を和らげるために、制吐剤(吐き気止め)が処方されることがあります。

よく使用される薬には、プリンペラン(メトクロプラミド)ナウゼリン(ドンペリドン)があります。これらは、脳内で吐き気を感じるセンサーの働きを抑えることで、症状を軽減します。また、胃腸の動きを改善する効果もあるため、食べ物の消化を助ける働きも期待できます。

ただし、これらの薬(特にプリンペラン)には副作用もあります。まれに手足の震えや動きにくさといったパーキンソン病のような症状や、不整脈が現れることがあります。医師の指示にしたがって適切に使用しましょう。

ノロウイルス感染症の下痢に有効な薬を教えてください

ノロウイルス感染症の下痢に対して有効なエビデンスのある薬はありません。ノロウイルス感染症は通常1~2日で症状のピークを迎え、その後は自然に回復に向かいます。薬を使わなくても身体の免疫力で治っていく病気です。

ただし、症状がつらい場合には、対症療法として整腸剤や漢方薬(五苓散、柴苓湯、桂枝加芍薬湯など)を使用することがあります。

ノロウイルスの下痢に対する治療として重要なことは、下痢止めは使用しないことです。下痢は身体がウイルスを外に出そうとする大切な反応です。下痢を止めてしまうと、ウイルスが体内に留まり、かえって回復が遅れる可能性があります。

ノロウイルス感染症による発熱は薬で下げることができますか?

はい、ノロウイルス感染症で出た熱は、適切な解熱剤を使用することで下げることができます。解熱剤には主に以下の2種類があります。

  • NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
  • アセトアミノフェン

発熱のメカニズムとしては、体内に侵入したノロウイルスを排除しようとする免疫機構が関係しています。ウイルスを排除する過程でサイトカインという物質が放出され、これがPGE2(プロスタグランジンE2)という物質を作ります。このPGE2が脳の視床下部に「体温を上げて!」という指示を出すため、発熱が起こります。 NSAIDsはこのPGE2を減少させることで解熱作用をもたらします。アセトアミノフェンにも解熱作用がありますが、機序は解明されていません。

ノロウイルスの処方薬が手に入らないときの自宅でのケア方法

ノロウイルスの処方薬が手に入らないときの自宅でのケア方法

ノロウイルス感染症の諸症状に対して市販薬を使用してもよいですか?

基本的には、医療機関で処方される薬を使用することが望ましいです。しかし、休日や深夜など、すぐに受診できない場合もあるでしょう。 そのような場合、以下の市販薬なら使用を検討できます。

  • 整腸剤(新ビオフェルミン S など)
  • 漢方薬(五苓散など)
  • 解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン系)

効果が期待できる制吐剤は市販薬にはありません。 吐き気が強くて水分も取れないような場合は、市販薬では対応が難しいため、早めに医療機関を受診しましょう。

下痢や嘔吐が辛いけれど、処方薬や市販薬がないときの対処法を教えてください

薬がない状況では、以下の方法で症状をやわらげることができます。

  • 一度に大量に飲まず、少量ずつこまめに摂る
  • 冷たすぎない常温の水や経口補水液(OS-1 など)がおすすめ
  • 無理に食事を取ろうとせず、安静を保つ
  • 吐き気が落ち着いてきたら、おかゆやうどんなど消化のよいものから始める

ノロウイルス感染症は通常1〜2日で症状のピークを越えます。薬がない場合には上述したような対応でこの期間を乗り切りましょう。

ノロウイルス感染症で受診をすべき目安を教えてください

ノロウイルスによるウイルス性胃腸炎の場合、健康な成人であれば、受診は必須ではありません。水分摂取を心がけ安静に過ごすことで、症状は1〜2日目をピークにし、徐々に改善します。

しかし子どもや高齢の方など、脱水状態に陥りやすい方が感染した場合には、重症化リスクがあります。体力を消耗するようなときや、食事や水分がほとんど摂取できないときはすぐに受診し治療を行う必要があります。また、基礎疾患がある方も、医療機関を受診することが望ましいです。脱水による腎臓や心臓などの疾患が悪化するリスクや、がんなど免疫力が低下している場合に重篤化する危険性があります。

また、実はノロウイルス感染症ではない場合もあります。ノロウイルス以外にも下痢や嘔吐を認める疾患はほかにもあります。代表的な疾患は以下のとおりです。

  • ロタウイルス感染症
  • アデノウイルス感染症
  • カンピロバクターやサルモネラといった細菌性感染症
  • 寄生虫感染症

ロタウイルスやアデノウイルスはウイルス性感染症のため特効薬はありませんが、細菌性感染症や寄生虫感染症には特効薬があります。そのため、早期に診断がつけば症状を抑えることができます。

したがって、症状が2〜3日経過しても改善しない場合や、便に血が混じっているなど、ノロウイルス感染症の典型的な経過をたどらない場合は、正確な診断のためにも受診を検討してください。

編集部まとめ

編集部まとめ ノロウイルス感染症は、特効薬がないため症状がとてもつらい病気です。しかし、適切な対症療法と十分な水分補給、安静を保つことで、多くの場合は2〜3日で回復に向かいます。 治療では、症状に応じて制吐剤整腸剤漢方薬などを使い分けます。大切なことは、下痢止めを使わないことと、脱水を防ぐことです。

健康な成人であれば自宅療養で回復することも多いですが、小さなお子さんや高齢の方、持病のある方は重症化するリスクがあります。また、ノロウイルスだと思っていても別の感染症の可能性もあるため、症状が強い場合や改善がみられない場合は、迷わず医療機関を受診してください。日頃からの手洗いや食品の加熱など、予防対策を心がけることも大切です。正しい知識を持って、ノロウイルスから自分と家族の健康を守りましょう。

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