「緑内障の目薬」はどんな目的で処方される?副作用となる症状も解説!【医師監修】

緑内障と診断されて不安に感じていませんか?緑内障は40歳以上の約20人に1人がかかるとても身近な病気で、日本では失明原因の第1位です。しかし、早期発見・適切な治療により生涯にわたって視野や視力を保つことが可能な病気です。大切なのは、これから継続して治療を受けていくこと。緑内障はゆっくり進行し、自覚症状が乏しいため戸惑うかもしれません。本記事では、主な治療法である目薬(点眼薬)について、その役割や使い方を解説します。目薬での治療に不安がある方も、そうでない方も目薬のことを深く知ることで、治療の継続につながります。

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
緑内障治療が作用するメカニズムと効果

なぜ緑内障治療で目薬を使うのですか?
たとえ眼圧が正常範囲で発症する正常眼圧緑内障の場合でも、さらに眼圧を下げる治療は有効です。そのため、現在の眼圧より数値を下げた方が緑内障の進行を抑制することが期待できます。このように、目薬で眼圧を下げることは緑内障の進行予防にとても重要です。
緑内障の目薬が作用するメカニズムを教えてください
緑内障治療に使用される目薬の種類

緑内障治療の目薬にはどのようなものがありますか?
- プロスタグランジン関連薬(PG製剤)
- β遮断薬
- α2作動薬
- 炭酸脱水酵素阻害薬
- Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)
- 配合点眼剤:2種類の有効成分を1本にまとめた目薬
このほかにも、ピロカルピンなどの副交感神経作動薬もありますが、瞳孔が極端に小さくなるため見えにくさや頭痛を起こしやすく、現在は特殊な場合を除きほとんど使われません。
それぞれの目薬の特徴と効果を教えてください
プロスタグランジン関連薬
眼内の房水の排出を促進して眼圧を下げる薬で、現在最も広く使われる第一選択薬です。1日1回の点眼で強力に眼圧を下げる効果が期待できます。ただし、まぶたの色素沈着やまつ毛が伸びるなどの作用があり、長期使用でまぶたがくぼむこともあります。
β遮断薬
房水の産生を抑制して眼圧を下げる薬です。PG製剤に次いで頻用されます。1日に1~2回の点眼が必要で、全身に吸収されると心拍数を下げたり喘息を悪化させたりする可能性があります。そのため、重い心臓病や喘息のある方には使用できません。
α2作動薬
房水の産生抑制と排出促進の両方の作用を持つ薬です。1日に2~3回の使用が必要です。点眼時に一時的に目がしみる感じがあることがあります。また、長期使用でアレルギー性結膜炎(充血やかゆみ)を起こしやすい点にも注意が必要です。
炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)
房水の産生を抑える点眼薬です。1日2~3回の使用が必要です。また、点眼後に薬液が喉に流れると苦味を感じる方もいます。ブリンゾラミドは懸濁液なので点眼後に一時的に見えにくくなることがあります。
Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)
線維柱帯など主経路からの房水排出を促進する薬です。1日2回使用します。点眼後は充血(目の赤み)が強く出る傾向がありますが、一過性とされています。まれにアレルギー性の目の充血やかゆみが出ることもあります。
緑内障の目薬に副作用はありますか?
また、上記のように薬ごとに特有の副作用もあります。主治医とよく相談し、副作用がつらいと感じたら、我慢せずに遠慮なく主治医や薬剤師に相談しましょう。無理に治療を中断するより、薬を変更したり対策したりすることで解決できる場合があります。
緑内障の目薬とうまく付き合うために

緑内障の目薬はいつまで使い続けるのですか?
逆に、点眼をやめてしまえば眼圧が再び上がり、緑内障が進行してしまうおそれがあります。特に、初期から中期の緑内障では自覚症状がないため、なかには通院や目薬をやめてしまう方もいます。これはとても危険です。点眼治療は患者さん自身が行う治療なので、続けなければ効果がありません。
目薬の上手な差し方を教えてください
- 手を石けんできれいに洗います。
- 顔を上に向け、下まぶたを指で軽く引き、1回1滴だけを点眼します。
- 点眼後はまぶたを閉じ、1~5分ほど静かに目をつむります。
- 可能であれば目頭を軽く押さえます。
- あふれ出た薬液は清潔なティッシュで優しく拭き取ります。
以上が基本的な手順です。大切なのは1回1滴を守ることです。それ以上さしても結局あふれて無駄になるだけでなく、まぶたの皮膚に付着して色素沈着など副作用が出やすくなります。目薬の底を押すようにさすと、1滴がゆっくりと出てきます。複数の種類の目薬を使っている場合は、5分以上間隔をあけてから次の薬を点眼してください。間隔をあけずに連続でさすと、先に入れた薬が涙と一緒に洗い流されてしまいます。
緑内障の目薬を差し忘れたらどうすればよいですか?
それでも忙しい日や旅行中など、誰しもうっかり忘れることはあります。たまに1回忘れた程度で急激に悪化する心配はありませんので落ち着いて対処しましょう。ただし、頻繁に忘れてしまうと十分な眼圧コントロールができず治療効果が下がってしまいます。よく忘れてしまう場合は、主治医に相談してみてください。
緑内障の目薬を忘れないための工夫を教えてください
- スマートフォンのアラームやリマインダーを活用する
- カレンダーや点眼チェック表を使う
- 目薬を決まった場所に置く
- ご家族に協力をあおぐ
このようにさまざまな工夫で、点眼を続けやすい環境作りをすることが大切です。自分なりの工夫で、なんとか継続できる方法を見つけていきましょう。
編集部まとめ

緑内障治療の原則は眼圧を下げて視神経を守ることです。そして、点眼薬による治療はその第一選択であり、多くの場合は目薬で病気の進行を抑えることができます。患者さんは正しい方法で毎日点眼を続けることが大切です。途中で中断せず、何か気になることがあればすぐ医師に相談してください。わからないことがあれば遠慮なく医療スタッフに質問し、納得しながら治療を続けましょう。



