目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「PTSDの治療法」はご存知ですか?治療中に気を付けることも解説!【医師監修】

「PTSDの治療法」はご存知ですか?治療中に気を付けることも解説!【医師監修】

 公開日:2026/02/26
「PTSDの治療法」はご存知ですか?治療中に気を付けることも解説!【医師監修】

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、命に関わる体験や極度の精神的ショックの後に心身の不調が長く続く障害です。災害や事故、暴力被害、虐待などの経験がきっかけとなり、強いフラッシュバック、不眠、過覚醒などの症状が日常生活に大きな支障をきたすことがあります。日本でもPTSDの診断と治療の重要性が高まっており、近年では日本人に適した治療法の研究も進んでいます。ここでは、エビデンスに基づいたPTSDの治療法と、その選択肢について詳しく解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

プロフィールをもっと見る
・和クリニック 院長
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。

PTSDの基礎知識

PTSDの基礎知識

PTSDとはどのような病気ですか?

PTSDは、生命の危機を感じるような強いストレス体験(トラウマ)をきっかけに発症する精神疾患です。心的外傷後ストレス障害とも呼ばれます。トラウマ体験から数週間~数ヶ月後に発症し、再体験、回避、過覚醒、否定的認知などの症状が現れます。

PTSDの症状を教えてください

再体験症状
心的外傷となった出来事の記憶が、本人の意思とは無関係にフラッシュバックとして突然よみがえることがあります。映像や音、匂いなどが強烈によみがえり、当時の恐怖や無力感を再び体験するような感覚に襲われることがあります。また、悪夢として繰り返し出現し、睡眠の質を大きく損なうこともあります。

回避行動
トラウマ体験を連想させる人・場所・会話・報道・物音などを無意識に避ける傾向があります。回避行動が強まると、日常生活の範囲が狭まり、社会的孤立や職場・学校への不適応を招くこともあります。

過覚醒
常に神経が張り詰めている状態になり、些細な物音や刺激に過剰に反応してしまいます。睡眠障害(入眠困難・中途覚醒)、集中力の低下、怒りっぽさや過剰な警戒心がみられることがあり、周囲との人間関係に影響を及ぼすこともあります。

否定的認知や気分の変化
自分を責め続けたり、「世界は危険だ」「誰も信用できない」といった否定的な信念を持つようになります。これにより感情が鈍くなり、喜びや愛情などの肯定的な感情を感じにくくなったり、孤独感・虚無感が強まることもあります。うつ症状を伴うことも珍しくありません。

PTSDは治療をしないと悪化しますか?

はい。PTSDを放置すると、慢性化して長期間にわたって症状が持続することがあります。また、うつ病やアルコール依存、不安障害などほかの精神疾患を併発するリスクも高くなるため、できるだけ早期の受診と治療開始が重要です。

PTSDの治療法と効果

PTSDの治療法と効果

PTSDの治療法を教えてください

PTSDの治療には主に以下のようなアプローチがあります。複数の治療法を併用することで、それぞれの限界を補い合い、回復率を高めることが報告されています。治療は一律の方法ではなく、患者さんごとの症状や希望に応じたカスタマイズが重要です。

精神療法(心理療法)
トラウマに焦点を当てた認知行動療法(CBT)や持続エクスポージャー療法、認知処理療法(CPT)などが中心です。これらの治療は、トラウマ記憶の意味づけや過剰な警戒心の修正に効果的であり、患者さん本人の納得感や自信の回復を促すことができます。

薬物療法
抗うつ薬(SSRI)が第一選択薬として広く使用されており、特にセルトラリンやパロキセチンなどが一般的です。薬物療法は睡眠障害や過覚醒、不安症状を和らげる目的で導入されることが多く、心理療法の効果を補完する役割もあります。

必要に応じて入院や集中的なケア
症状が強く、日常生活が著しく制限されている場合や、自傷・自殺リスクが高い場合は、専門施設での入院治療が検討されます。集中的な治療環境では、安全確保とともに精神療法や薬物療法を短期間で組み合わせながら進めることができます。

PTSDの薬物療法ではどのような薬を使いますか?

PTSDの治療には主に以下のような薬剤が検討されます。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
セルトラリンやパロキセチンなどが代表的で、日本の臨床でも第一選択薬とされています。気分の落ち込みや過覚醒、不安症状の改善が期待でき、PTSD治療のベースとして使用されます

SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
SSRIが効果不十分な場合や副作用が強い場合に検討されます。注意力や活力の改善に役立つこともあり、うつ症状が強い場合に選択されることがあります。

抗不安薬や睡眠薬
強い不安感や不眠がある場合に、短期的に併用されることがあります。ベンゾジアゼピン系薬物は効果が早い一方で依存のリスクがあるため、使用は慎重に判断されます。

PTSDの精神療法の内容を教えてください

PTSDの精神療法には主に以下のような手法があります。

認知行動療法(CBT)
トラウマによってゆがんだ思考パターンや行動習慣を見直す治療法です。「自分のせいだ」「世界は危険だ」といった否定的な思考に働きかけ、安心できる現実的な認知へと変えていきます。

持続エクスポージャー療法(PE)
トラウマ記憶を避けず、安全な環境で徐々に思い出す訓練を行います。繰り返し向き合うことで、記憶への過剰な反応が弱まり、日常生活への支障が減っていくことが期待されます。

認知処理療法(CPT)
トラウマ体験にまつわる思い込みや信念を丁寧に検討し、柔軟で建設的な考え方を取り戻す治療です。JAMAなどの海外研究でも有効性が高く、日本でもCPTの実施例が増えています。

PTSDの治療効果の統計はありますか?

日本国内の研究によると、認知処理療法(CPT)を12回受けた患者さんのうち、約6〜7割が症状の大幅な軽減を実感したと報告されています。特にフラッシュバックや過覚醒、不安感の改善が顕著でした。また、複数の国際的なメタ分析では、精神療法と薬物療法を組み合わせた治療が、いずれか単独で行うよりも効果が高い傾向が一貫して示されています。治療法の選択と併用が、回復の鍵となります。

PTSDの治療中に気を付けること

PTSDの治療中に気を付けること

PTSD治療中の注意点を教えてください

治療途中で一時的に症状が悪化することがあります。これは治療のプロセスでよくある現象です。症状がぶり返すことに戸惑うかもしれませんが、焦らずに治療を継続することが重要です。

薬の自己判断による減量・中断は避けましょう。副作用が気になる場合でも、自分の判断で服薬をやめたり減らしたりしないようにしましょう。変更が必要な場合は、必ず主治医と相談してください。

医師やカウンセラーとの信頼関係を築くことが大切です。治療の効果を高めるためには、遠慮せずに現在の気分や症状を率直に伝えることが重要です。小さな不安でも共有することで、適切なサポートにつながります。

PTSDの患者さんが避けたい行動、状況はありますか?

トラウマ体験に関係する映像・音声・場所などに接することで、再体験や不安症状が強まる場合があります。無理に触れるのではなく、距離を保つ工夫をしましょう。

飲酒や薬物使用は控えましょう。一時的に気が紛れるように感じることもありますが、症状の慢性化や依存のリスクを高めるため避けるべきです。

睡眠不足や不規則な生活リズムを改善しましょう。疲労やストレスが蓄積すると、再体験や不安が悪化しやすくなります。一定のリズムで生活を整えることは、回復を支える基本になります。

PTSDを改善するためにできることを教えてください

規則正しい生活を保つ
特に睡眠は心身の回復に直結します。決まった時間に寝起きする習慣を意識しましょう。

信頼できる人との交流を大切にする
孤立は回復の妨げになります。家族や友人、支援者と話す機会を持つことが精神的な支えになります。

呼吸法やマインドフルネス、軽い運動などのストレス軽減法を取り入れる
症状を和らげるセルフケアとして、取り組みやすい方法を日常に取り入れましょう。

日々の気持ちや症状の変化を記録する
「前より眠れるようになった」「今日は不安が強かった」などを簡単に書き残すことで、回復の道筋が見えやすくなりますし、診察時の情報共有にも役立ちます。

編集部まとめ

編集部まとめ

 PTSDは深刻なトラウマ体験をきっかけに発症し、長期間にわたり生活に影響を及ぼす可能性がある疾患です。しかし、適切な治療によって多くの方が回復へと向かうことができます。精神療法や薬物療法は有効性が確立されており、早期介入が予後を改善するとされています。 治療の途中であっても、不安や疑問があれば医師や支援者に相談しながら進めることが大切です。つらい体験を一人で抱え込まず、専門家の支援を受けながら、少しずつ安心できる日常を取り戻していきましょう。

この記事の監修医師