高血圧はサイレントキラーと呼ばれ、自覚症状がないまま進行することが多いとされています。治療をせずに放置すると、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。一方で、高血圧は食生活や運動などの生活習慣を整えることで、改善できる可能性があります。本記事では、高血圧の原因と身体への影響、具体的な食事療法や運動による改善策をわかりやすく解説します。
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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医
高血圧改善のために知っておきたい原因と影響

高血圧の原因を教えてください
高血圧には大きく
本態性高血圧と
二次性高血圧があります。
本態性(ほんたいせい)高血圧は原因となる病気を明確に特定できないもので、さまざまな要因が重なって発症すると考えられています。本態性高血圧の原因には、加齢や遺伝的な要因、生活習慣などがあります。具体的な生活習慣には、食塩を過剰に摂取すること、肥満、運動不足、ストレスなどがあります。
一方、二次性高血圧は特定の病気や薬剤が原因で高血圧が引き起こされる状態を指します。主な原因として腎臓の病気、内分泌の病気(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など)、薬剤性(薬によって引き起こされること)などがあります。
高血圧が身体にもたらす悪影響を教えてください
高血圧を治療せずにそのままにしておくと、動脈硬化が進行し、心臓の病気や脳卒中、腎臓病など重大な健康への影響がみられるようになります。血圧が120/80mmHgを超えて高くなるほど、心臓や脳、腎臓の病気のリスクと死亡のリスクが高くなることがわかっています。
日本では、毎年およそ10万人が高血圧を原因とした脳や心臓の病気で亡くなっていると推定されています。高血圧は、脳や心臓の病気で亡くなる方の原因のなかで特に多いといわれており、命に関わる重大な影響をもたらします。
高血圧の改善方法|食生活編

高血圧を改善するためにどのような食事を心がけるとよいですか?
高血圧の予防に効果がある食生活として、まず食塩の摂取を減らす(減塩)が最も重要です。減塩は高血圧の予防に効果があるだけではなく、心臓の病気や脳卒中、腎臓病へもよい効果があるとされています。日本人は世界的にみても塩分の摂取量が多く、減塩の効果は大きいとされています。高血圧のある方は1日6g未満を目標とします。また、子どもの頃から食塩の摂取をなるべく少なくすることで、高血圧になる危険性を低くすることができるといわれています。
高血圧を改善できる食事の摂り方、食べ方を教えてください
高血圧を改善できる食事の摂り方、食べ方として、まずは塩分摂取量を減らすポイントをみてみましょう。
- 香辛料を味付けに利用する(こしょう、七味など)
- 香味野菜、果物の酸味を味付けに利用する
- 塩分の少ない調味料を使う(酢などを上手に利用する)
- 漬物は控える(自家製の浅漬けにして食べる量も少量にする)
- しょうゆやソースはかけるのではなく、つけて食べるようにする
- 具だくさんのみそ汁にする
- 外食や加工食品を減らす、控える
- 麺類の汁は残す
上記のような工夫を普段の生活に取り入れることで、塩分を減らすことができます。なかでも、しょうゆやソースを食べ物にかけていたのをつけるように変えたり、麺類の汁を残したりすることは、すぐにでも実践できます。
また、減塩とともに、野菜、果物を積極的に食べるようにしましょう。これは野菜や果物に含まれるカリウムが、血圧を下げるように働くためです。ただし、腎臓病がある方は身体からのカリウム排泄の能力が落ちているため、野菜や果物を取り過ぎない方がよいことがあります。必ず主治医に確認して取り組むようにしましょう。
高血圧の改善に効果的なメニューはありますか?
国立循環器病研究センターが公式に紹介しているレシピは、高血圧の改善に効果的です。かるしおレシピと呼ばれ、塩分を抑えつつおいしさを引き出す工夫が詰まっています。今回は国立循環器病研究センターのかるしおレシピを参考に、具体的なメニューを紹介します。
朝食には、野菜や魚を活かしたこんなメニューがおすすめです。
- 鮭と野菜の具だくさんみそ汁(減塩味噌を使用し、野菜の甘みで旨味を補強する)
- ブロッコリーのごま和え(だしとからしを味付けに使用する)
昼食には、だしを活かした次のようなメニューがおすすめです。
- だしを活かした筑前煮(だしと野菜の旨味を活かし、醤油を控えめにする)
- 季節野菜の酢の物(米酢とわずかな塩で味付けをする)
夕食には、塩分を抑えながらも満足感のある、主菜と副菜の組み合わせがおすすめです。
- 白身魚の煮付け(だしベースで上品な味わいに仕上げる)
- 根菜類の煮物(だしベースで煮含める)
- 海藻サラダ(ポン酢は少量にする)
このように、だしを活用することで、塩分を抑えながら深い味わいを目指します。また、そのほかの調理法の工夫としては、蒸し煮で野菜の水分を活かし、調味料を最小限にすることができます。
高血圧の改善方法|運動習慣編

高血圧と運動習慣にはどのような関係がありますか?
運動習慣は高血圧の発症や予防に有用であることが、たくさんの研究でわかっています。運動を行うと、血管の内皮と呼ばれる部分の機能が改善されて血圧が下がりやすくなるとされています。実際、運動療法を行うと収縮期血圧を2~5mmHg、拡張期血圧を1~4mmHg程度低下させることが報告されています。逆に、運動不足や身体活動量の低下は、血圧上昇の要因となるため、普段から身体を動かす習慣が血圧管理には不可欠です。
高血圧の改善が期待できる運動量を教えてください
高血圧の改善のための運動療法として、有酸素運動やレジスタンス運動(筋力を維持するための運動)が推奨されています。時間は毎日30分以上、週180分以上が目安となっています。一度に長時間できなくても、1回10分以上の運動を繰り返して合計1日40分以上を目指します。週に数回しか運動できない場合も、掃除や洗車、買い物を自転車で行うなど、日常生活のなかで身体を動かす機会を増やすだけでも効果があります。
高血圧の改善に効果的な運動法はありますか?
高血圧の改善には、有酸素運動が特に効果的です。ウォーキング(速歩)、軽いジョギング、階段昇降、水泳、サイクリングなどがよいとされています。
ほかには、筋力トレーニングも効果的です。運動強度は、ややきついと感じる程度で十分です。無理をせず体調に合わせ、毎日同じように続けることが大切です。
高血圧の改善がみられないときは

生活習慣を見直しても血圧に変化がみられない場合はどうすればよいですか?
生活習慣を見直しても血圧に変化がみられない場合は、必ず医療機関を受診しましょう。高血圧は自覚症状がほとんどないといわれているため、定期的に健診や家庭血圧の測定を行い、必要に応じて医師の指導を受けることが重要です。場合によっては、運動や食事療法だけでは下がりにくい原因が隠れている(腎臓病や内分泌異常など)こともあるため、必要に応じて二次性高血圧の有無を調べる検査をします。
病院では高血圧に対してどのような治療を行いますか?
病院では、生活習慣の改善(減塩や運動など)と並行して降圧薬による治療が行われます。使用される薬剤にはカルシウム拮抗薬などさまざまな薬があり、医師は患者さんの年齢や血圧の値、合併症の有無などを総合的に判断し、適切な薬を選択します。複数の薬を組み合わせることもあります。ただし、薬物治療は生活習慣の改善とセットで行うことで最大の効果が得られるため、両者を並行して続けることが望まれます。
編集部まとめ

高血圧の改善には、減塩を中心としつつ、野菜や果物を十分に摂り、バランスのよい食事を心がけることが大切です。同時に、適度な運動習慣を続けることで、血圧が改善する可能性があります。これらの生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合は、必ず医師に相談し、必要に応じて降圧薬などの治療を受けましょう。日々の食事や運動、定期的な受診を通じて高血圧をしっかりと管理していきましょう。