「腸閉塞の前兆となる初期症状」はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!

腸閉塞とは、腸管の中を通る食べ物やガス、水分などの内容物が通過できなくなる状態です。腸がねじれたり、腫瘍で塞がれたり、手術後の癒着などで狭くなってしまうと、消化管の内容物がうまく流れず、腸管内にたまってしまいます。主な症状としては、激しい腹痛や吐き気・嘔吐、お腹のハリ(腹部膨隆)、便意やおならが出ない(排便・排ガス停止)などがあります。初期は「お腹が重い」「食欲がない」「お腹のハリ」など漠然とした不快感が起こることもあります。しかし、進行すると症状は急激に悪化し、腹痛や吐き気が強くなり、身体全体の脱水やショック症状に至ることもあるため注意が必要です。

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
腸閉塞の概要

腸閉塞とはどのような病気ですか?
医学的には腸管内容物の腸管内通過の機械的障害と定義されており、腸閉塞と似た言葉にイレウスがあります。イレウスは炎症などによる機能的な意味で腸の通過障害全般を示しますが、腸閉塞は特に内容物の流れが完全に止まっている状態に近いと考えてください。
腸閉塞の原因を教えてください。
次いで多い原因はヘルニア(脱腸)やがんなどの腫瘍で、これらも腸管の一部を塞いでしまいます。そのほか、憩室炎(大腸の壁の炎症)による狭窄、胆石などの異物、腸捻転(腸が捻じれる)、腸重積(腸管の一部が別の部位に入り込む)、便秘がひどいときの宿便なども原因になります。年齢が高く、婦人科手術(帝王切開など)歴がある方は癒着のリスクが高く、腸閉塞を起こしやすいので注意が必要です。
腸閉塞の見逃してはいけない前兆と症状

腸閉塞の前兆としてどのような症状が現れますか?
腸閉塞の初期症状を教えてください。
腹部不快感・ハリ
腸内に内容物がたまりはじめると、お腹全体が張って重い感じがすることがあります。
食欲低下、吐き気:軽いうっ滞や吐き気を感じることがありますが、胃腸炎と似た症状なので注意が必要です。
便秘や排ガス停止
初期は「お通じが減った」「おならが出にくい」といった変化から始まり、進行すると完全に便もおならも出なくなります。
軽い腹痛:閉塞の部位や程度によっては、断続的な腹痛を感じる場合もあります。
このように初期症状だけで腸閉塞と断定するのは難しいですが、特に、お腹の手術歴がある方は腸閉塞のリスクが高いので、少しでも違和感が続く場合は早めに受診してください。
腸閉塞が進行するとどのような状態になりますか?
進行した腸閉塞の特徴的な症状は激しい腹痛(冷や汗が出るほど)、持続する嘔吐、高熱などです。特に、少しの食事で吐いてしまう、発熱や全身の倦怠感が出る、脈が速くなるといった症状は、腸管が絞扼されている可能性が高い大変危険なサインです。このようなサインが現れたら、すぐに救急外来を受診するか救急車を呼んでください。
腸閉塞で受診を検討する目安

腸閉塞の前兆や初期症状がみられた場合は何科を受診すればよいですか?
休日や夜間に緊急受診すべき症状を教えてください。
急激で激しい腹痛
我慢できないほどの激痛で、冷や汗が出る場合は腸が絞扼されている可能性があります。
繰り返す激しい嘔吐
少しの食事や水分で何度も吐いてしまう場合は、腸が完全に塞がっている状態かもしれません。
高熱や全身症状
発熱が続く、意識がもうろうとするといった全身症状は、腸管壊死や腹膜炎を示唆します。
排便・排ガスの完全停止
何日も便通もおならもまったくなく、腹部膨満がひどい場合は要注意です。
腸閉塞が疑われる際に実施される検査と治療

腸閉塞が疑われるときはどのような診察、検査が行われますか?
次に、血液検査で脱水・電解質異常や炎症マーカーの上昇を調べます。診断に大変有用なのは画像検査で、まず行うのは腹部単純X線撮影です。直立と仰臥で撮ったX線画像により、拡張した腸管や空気水面(ガスと液体の境界)を確認します。腸閉塞では小腸や大腸の上流が膨らんで、排泄物が停滞している様子が写ります。
さらに確定診断や原因検索には腹部CT検査が有効です。CT検査では腸管の閉塞部位、原因となる腫瘍やヘルニアの状態、腸管壁の血流障害の有無などが詳細にわかります。必要に応じて、大腸閉塞が疑われる場合は造影レントゲン検査や大腸内視鏡検査を行うことがあります。これらの検査で腸管のどこが詰まっているか、絞扼していないかを慎重に調べます。
腸閉塞の治療法を教えてください。
保存的治療(手術以外の治療)で経過を見る場合は、腸閉塞の程度によって効果が期待できます。小腸が一部閉塞している場合は絶食・輸液・イレウス管(胃管)で1~5日間様子をみる治療(減圧治療)を行います。大半の部分閉塞(特に小腸閉塞)はこの方法で改善するといわれています。便秘や宿便が原因の場合は浣腸や薬物療法を試みることもあります。なお、大腸閉塞(特にS状結腸など)では、大腸内視鏡によるバルーン拡張やステント留置など、内視鏡的・血管内的処置が検討されることもあります。
一方、絞扼性イレウスや完全閉塞、保存的治療後の改善なしなどの場合は手術が必要です。手術適応となった場合は、閉塞している腸管を切開・除去したり、腫瘍やヘルニアを取り除いたりして腸の通過路を確保します。現在では、患者さんの状態や病態に応じて、開腹手術だけでなく腹腔鏡下手術を行うことも増えています。腹腔鏡手術は傷が小さく癒着しにくいという利点がありますが、強度な閉塞や癒着が激しい場合は開腹が安全です。
編集部まとめ

腸閉塞は、腸管の通過障害によって起こる急性疾患であり、早めの対応が生命に関わる重大事態を防ぎます。初期は軽い腹部不快感や食欲低下などで見過ごしやすいものの、進行すると激しい腹痛、嘔吐、便通停止などの典型的症状が現れます。特に、冷や汗が出るほどの痛みや少量の食事でも吐いてしまう場合、高熱がある場合などは緊急性が高く、すぐ救急外来に向かう必要があります。疑わしい症状があるときは、消化器内科・外科への受診や救急受診を迷わず選択しましょう。


