「胃腸炎の原因」はご存知ですか?かかりやすい時期も解説!【医師監修】
公開日:2025/09/23

胃腸炎は、ウイルスや細菌などが原因で胃や腸に炎症が起こる病気で、下痢や嘔吐、腹痛などのつらい症状を引き起こします。特に冬場に流行しやすく、家庭内や学校などでの感染にも注意が必要です。
本記事では胃腸炎の原因について以下の点を中心にご紹介します。
- 胃腸炎の原因
- 胃腸炎の症状
- 胃腸炎の治療法
胃腸炎の原因について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
上田 莉子(医師)
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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医
目次 -INDEX-
胃腸炎とは
胃腸炎にはどのような種類がありますか?
胃腸炎には主にウイルス性、細菌性、寄生虫性の3種類があります。
ウイルス性胃腸炎はノロウイルスやロタウイルスなどが原因で、冬場に流行しやすく、少量のウイルスでも感染しやすいのが特徴です。
細菌性胃腸炎はサルモネラ菌やO157などによるもので、汚染された食品や水から感染し、夏季に見られることが多いとされています。
寄生虫性胃腸炎にはアメーバやアニサキスなどが関与し、海外渡航歴のある方や魚介類の生食をした場合に発症することがあります。
いずれも発熱、嘔吐、下痢、腹痛などの症状があり、重症化を防ぐためにも早期の対応が重要です。
胃腸炎の症状を教えてください
胃腸炎の症状は、原因となるウイルスや細菌、寄生虫などの種類や感染の程度、個人の体力や免疫力によって異なります。
主な症状には、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、発熱、食欲不振、倦怠感などがあり、突然現れる傾向にあります。
ウイルス性では水様性の下痢が多いとされ、細菌性では高熱や血便を伴うこともあります。
寄生虫性では症状が長引く傾向があり、慢性的な疲労や体重減少につながることもあります。
重度になると脱水症状や電解質異常を起こすこともあるため、症状が激しい場合や長引く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
胃腸炎はどのような原因で引き起こされますか?
先に述べたように、胃腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫、性感染症など、さまざまな病原体によって引き起こされます。
代表的なウイルスにはノロウイルスやロタウイルスがあり、冬季に流行しやすく、少量でも強い感染力を持ちます。
細菌では、サルモネラやカンピロバクターが有名で、加熱不足の食品や汚染された水の摂取によって感染します。
また、アメーバやアニサキスなどの寄生虫も原因となり、海外渡航や生魚の摂取が感染リスクとなることがあります。
さらに、性感染症による胃腸炎もあり、通常の抗生物質では効果が得られないことがあるため、正確な診断が重要です。
感染経路や病原体ごとに症状や治療法が異なるため、原因に応じた対処が求められます。
胃腸炎の診断と治療
胃腸炎の検査はどのように行われますか?
胃腸炎の検査では、まず問診で症状や食事内容、渡航歴などを確認し、便検査や血液検査が行われます。
便検査では、ウイルスや細菌などの病原体を迅速に特定できる抗原検査や培養検査が用いられます。
血液検査では炎症の程度や脱水、電解質バランスを調べます。
症状が長引いたり、診断が困難な場合には、胃カメラや大腸カメラで消化管の粘膜を直接確認し、必要に応じて組織を採取します。
また、腹部CTや超音波検査で腸の炎症の広がりや腹水の有無を確認することもあります。原因を明確にすることで、適切な治療と感染予防に役立ちます。
胃腸炎にはどのような治療が行われますか?
胃腸炎の治療は原因や症状の程度に応じて行われ、基本は水分補給と対症療法が中心です。
下痢や嘔吐による脱水を防ぐために、経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分を補給します。吐き気や腹痛が強い場合は、制吐剤や鎮痛剤を使用することがあります。細菌性の場合には、原因菌に応じた抗生物質が処方されることもあります。
消化に優しい食事(おかゆ、うどん、白身魚など)を少量ずつ摂取し、安静を保つことが回復の鍵です。重症例や脱水が強い場合には点滴による治療や入院治療が必要になることもあります。
また、必要に応じて胃薬や整腸剤、漢方薬(五苓散、六君子湯など)が使われることもあります。早期に適切な対応を取ることが大切です。
胃腸炎はどのくらいで治りますか?
胃腸炎の回復期間は原因となる病原体や患者さんの体調によって異なります。
ウイルス性胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルスなど)の場合、症状は2〜3日で軽快し始め、1週間程で体調が戻るといわれています。ただし、免疫力の低下している方や高齢者では回復が遅れることがあります。
細菌性胃腸炎は、適切な抗生物質治療を受けたうえで5〜7日程度で改善することが多いようですが、症状の重さによっては長引くこともあります。
寄生虫が原因の胃腸炎では、治療開始後1〜2週間で症状が落ち着くことが多いとされるものの、完治が見込める日数には数週間かかる場合もあります。
いずれにしても、水分補給と安静が回復の鍵となります。
胃腸炎の予防と対策
胃腸炎にかかりやすい時期を教えてください
胃腸炎は一年中見られる病気ですが、冬と夏に流行のピークを迎える傾向があります。
冬場はノロウイルスやロタウイルスなどによる感染性胃腸炎が多いとされ、例年11月から徐々に患者数が増え、1月から3月頃にかけてピークを迎えます。気温の低下とともにウイルスが活性化しやすくなるため、この時期は注意が必要です。
一方で、初夏から真夏にかけては、食中毒や細菌性胃腸炎が増える季節でもあり、5月下旬から8月にももう一つの流行の波があります。
季節ごとに異なる原因によって発症するため、それぞれの特徴に合わせた予防対策が求められます。特に流行時期を知ることは、感染を防ぐための重要な手がかりとなります。
手洗いの徹底や食材の衛生管理を心がけましょう。
胃腸炎の感染予防のためにできることはありますか?
胃腸炎の感染を防ぐためには、日頃からいくつかのポイントに注意することが大切です。
なかでも手洗いは重要で、トイレの後や調理や食事の前には、石鹸を使って丁寧に洗う習慣をつけましょう。ノロウイルスなど一部のウイルスにはアルコール消毒が効きにくいため、流水と石鹸が有効とされています。
また、食材は十分に加熱調理し、調理器具や食器も清潔に保つよう心がけてください。さらに、生野菜や果物は流水でよく洗いましょう。
公共の場では多くの方が触れる箇所に注意し、接触後は手洗いや消毒を忘れずに行いましょう。
ロタウイルスに対しては、乳幼児を対象としたワクチンも感染予防に有効とされています。
これらを意識することで、感染リスクを減らすことができます。
家庭内で誰かが胃腸炎になった場合、ほかの家族にうつさないためにはどうしたらよいですか?
家庭内で感染性胃腸炎が出た際は、徹底した衛生管理が感染拡大を防ぐ鍵となります。
まず、嘔吐物や便の処理は迅速に行い、塩素系消毒液で拭き取り、消毒をすることが重要です。手洗いは流水と石けんで丁寧に行い、特にトイレの使用後や食事前などのタイミングを徹底しましょう。
タオルや食器の共用は避け、できればトイレや洗面所も別に使用するのが望ましいです。吐いた場所や汚染された衣類も速やかに処理することが重要ですが、色柄物の消毒には注意が必要です。加えて、室内の換気や小さな子どもが触れる物の消毒も忘れずに行いましょう。
あらかじめ必要な物品を準備しておくことで、落ち着いて対応できます。
症状が治まっても数日はウイルスが便に排出されることもあるので注意が必要です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
胃腸炎は誰にでも起こりえる身近な病気ですが、原因や対処法を正しく知っておくことで重症化や感染拡大を防ぐことができます。
日常の衛生管理や体調の変化に気を配ることが、予防への第一歩です。万が一症状が現れた場合は、無理をせず早めに医療機関を受診しましょう。
ご自身やご家族の健康を守るためにも、正しい知識を日頃から身につけておくことが大切です。
編集部まとめ
ここまで胃腸炎の原因についてお伝えしてきました。 胃腸炎の原因について、要点をまとめると以下のとおりです。
- 胃腸炎の原因には、ウイルス、細菌、寄生虫、性感染症などがあり、感染経路や病原体によって症状や治療法が異なるため、原因に応じた適切な対応が重要
- 胃腸炎の症状は腹痛や下痢、嘔吐、発熱などさまざまで、原因や体調によって異なる。重症化すると脱水を引き起こすため、早めの受診と適切な対処が重要
- 胃腸炎の治療は水分補給と安静が基本で、症状に応じて整腸剤や胃薬、必要に応じて抗生物質を使用する。重症時は点滴治療や入院治療が必要になることもある
胃腸炎は、原因によって症状や対処法が異なるため、正しい知識を持つことが大切です。日常的な予防や早期の対応を心がけることで、重症化を防ぐことができます。体調に異変を感じたら無理をせず、早めに医療機関を受診しましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。参考文献




