「胃腸炎」のときに避けた方がいい「食べ物」はご存知ですか?【医師監修】

胃腸炎になると、吐き気や下痢、腹痛などで食事をとるのがつらくなることがあります。しかし、消化をよくする食事を選ぶことで症状の悪化を防ぎ、回復を早めることが期待できます。
本記事では胃腸炎の食事について以下の点を中心にご紹介します。
- 胃腸炎とは
- 胃腸炎中の食事
- 胃腸炎にかかってしまったら
胃腸炎の食事について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
上田 莉子(医師)
目次 -INDEX-
胃腸炎とは
胃腸炎になるとどのような症状が現れますか?
例えば、ノロウイルスによる場合、吐き気や嘔吐、下痢、発熱、腹痛などの症状が現れ、1〜2日程度続きます。子どもは嘔吐が多く、大人は下痢が目立つ傾向があります。
一方、ロタウイルスの場合は、嘔吐や下痢、発熱などの症状が5〜6日程度続くことが多い傾向にあり、乳児ではけいれんを起こすこともあるため注意が必要です。
なお、感染しても無症状だったり、軽いかぜのような症状で済む場合もあります。
胃腸炎の原因を教えてください
ウイルスではノロウイルスやロタウイルス、細菌ではカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌などが挙げられます。
感染経路は主に口からの感染です。
感染は、汚染された食品や水を摂取することで起こり、病原体が付着した手で口に触れることで広がります。
その他、加熱不十分な二枚貝や肉・卵の摂取、病原体を保有する動物と接触した手を口に運ぶことが原因になることもあります。
特にノロウイルスは、嘔吐物の飛散による飛沫感染や、乾燥した便や嘔吐物から舞い上がったウイルスを吸い込むことで感染する可能性があるため、処理時には十分な注意が必要です。
胃腸炎の検査方法を教えてください
必要に応じて、以下のような検査が行われます。
ウイルス性胃腸炎が疑われる場合:
→ 迅速診断キットによる抗原検査
細菌性胃腸炎が疑われる場合:
→ 血液検査(白血球数や炎症反応の確認)
→ 便検査(細菌や寄生虫の有無を調べる)
寄生虫(例:アニサキス)が疑われる場合:
→ 内視鏡検査(胃カメラ)で胃内部の状態を確認
なお、検査には数日を要することもあるため、症状や流行状況などから総合的に判断し、検査を行わずに治療を開始することもあります。
胃腸炎中の食事
胃腸炎のときはいつも通り食事をしてもいいですか?
嘔吐直後は胃が敏感なため、1〜2時間程は食事を控えるのが望ましく、症状が落ち着いてきたら、ティースプーン1杯程度の水を5〜10分おきに摂るなど、少量から水分を補いましょう。
症状が和らいできたら、おかゆやスープなどの消化によい食べ物を少しずつ再開して構いません。何も口にしない時間が長くなると、体力の低下や回復の遅れにつながるため、無理のない範囲で食事を摂ることが大切です。
胃腸炎のときにおすすめの食事を教えてください
【ステップ1:症状が強いとき】
まずは水分補給を兼ねて、コンソメスープ、くず湯、具なしのみそ汁、ゼラチンゼリーなどの流動食から始めましょう。
【ステップ2:症状が落ち着いてきたら】
次に、三分粥、煮込みうどん、卵豆腐、かき玉汁など、やわらかくて消化のよい半固形食に進みます。
【ステップ3:回復期】
さらに体調が安定してきたら、五分粥、豆腐、高野豆腐、オムレツ、りんごのコンポートなどを取り入れて、徐々に食事の形を整えていきます。最終的には全粥や白身魚の煮物、鶏肉の蒸し煮、煮野菜など、日常に近い食事に戻していきます。
食材は、脂肪や食物繊維が少なく、やわらかく調理されたものを選ぶとよいでしょう。
胃腸炎のときに避けた方がいい食べ物を教えてください
まず、消化に時間がかかる食物繊維の多く含まれている食品は控えましょう。
ごぼう、れんこん、たけのこ、こんにゃく、きのこ類、海藻類などがこれにあたります。
また、玄米やそば、豆類(大豆・枝豆・ピーナッツ)も消化しにくいため、避けた方がよいでしょう。
さらに、脂肪が多く含まれている食品や揚げ物(ベーコン、フライドチキン、ステーキなど)は胃に負担をかけやすく、香辛料を使った料理(カレー、とうがらし、こしょう)や刺激物(わさび、からし)も控えるのが望ましいとされています。
その他、乳製品(チーズ、バター、ヨーグルト)、酸味の強い果物(みかん、キウイ、いちごなど)、コーヒーやアルコール類、甘いお菓子なども、胃腸を刺激しやすいため避けましょう。
胃腸炎にかかってしまったら
胃腸炎にかかったら職場や学校はどのくらい休むべきですか?
ノロウイルスやロタウイルスなどによる感染性胃腸炎の場合、特に中学校や高校では「学校保健安全法」に基づき、出席停止(登校禁止)となることがあります。この場合は、医療機関が「感染の恐れがない」と判断するまで登校を控えることが推奨されます。
一方、ストレスやアレルギーが原因の非感染性胃腸炎では、首位の方に感染する心配がないため、出席停止の対象にはなりません。ただし、体調がすぐれないときは、無理せず休養をとることが大切です。
出席停止の日数は明確に定められていませんが、下痢、嘔吐、発熱などの症状が治まり、普段どおりの食事がとれるようになったことが復帰の目安とされています。登校や出勤に迷う場合は、医療機関に相談しましょう。
胃腸炎をまわりにうつさないためのポイントを教えてください
1.嘔吐物・便の処理
処理の際は使い捨ての手袋、マスク、エプロンを着用し、使い捨てペーパーで拭き取った後に塩素系漂白剤で消毒します。処理後は石鹸で丁寧に手を洗いましょう。
2.手洗いの徹底
感染者の便には、下痢が治まっても1〜2週間ウイルスが含まれることがあります。トイレの後や調理・食事の前には、30秒以上かけて指の間や爪のなかまでしっかり洗いましょう。
3.生活の工夫
タオルや食器の共用を避け、洗濯物も別にすることが大切です。入浴は感染者を最後にし、浴室も清掃しましょう。
4.食中毒予防
食材や調理器具は加熱、洗浄、消毒を徹底してください。特に肉類は中心部まで75度以上で1分以上加熱するのが目安です。
これらの対策を徹底することで、家庭内での感染拡大を防げるでしょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
症状が落ち着いてきたら、おかゆやスープなど、消化のよいものを少しずつ取り入れていきましょう。
焦らず、無理せず、今はご自身の身体をゆっくりいたわってお過ごしください。
編集部まとめ
ここまで胃腸炎の食事についてお伝えしてきました。胃腸炎の食事の要点をまとめると以下のとおりです。
- ノロウイルスによる胃腸炎の場合、吐き気や嘔吐、下痢、発熱、腹痛などの症状が現れ、ロタウイルスの場合は、嘔吐や下痢、発熱などの症状が現れるとされているが、感染しても無症状だったり、軽いかぜのような症状で済む場合もある
- 胃腸炎のとき、絶食する必要はないが、吐き気や嘔吐が強い場合は、無理に食べずに水分補給を優先することが大切
- 感染性の胃腸炎の場合は、嘔吐物・便の処理、手洗いの徹底、生活の工夫、食中毒予防を心がけよう。その他の原因の胃腸炎については、都度医療機関に相談が望ましい
胃腸炎は症状に応じた食事や生活の工夫が回復の鍵となるため、無理をせず休養をとりながら、段階的に消化によい食事を取り入れましょう。
今回の記事が、胃腸炎の食事について知りたい方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。