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「胃腸炎の家族感染」は何日くらい注意が必要?看病する場合の注意点も解説!

 更新日:2025/11/18
「胃腸炎の家族感染」は何日くらい注意が必要?看病する場合の注意点も解説!

感染性胃腸炎は、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス、あるいは細菌や原虫などの病原体によって引き起こされる消化器の感染症です。 なかでもノロウイルスはとても強い感染力を持ち、保育施設や学校、家庭内などで集団感染を引き起こすことが少なくありません。 この記事では、感染性胃腸炎の主な原因や症状、家族内感染を防ぐための注意点も併せて解説します。 ご自身や家族を感染性胃腸炎から守るために、正しい知識を身につける一助になれば幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

感染性胃腸炎の原因や症状

吐き気

感染性胃腸炎の原因となるウイルスや細菌を教えてください。

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などの病原体が消化管への感染によって起こる病気です。主に、ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎に分けられます。ウイルス性胃腸炎の原因ウイルスは、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、サポウイルス、アストロウイルスなどです。ノロウイルスは感染力がとても強く、わずか数個のウイルスでも発症します。ロタウイルスやアデノウイルスは、主に乳幼児や小児に多くみられるウイルスです。サポウイルス、アストロウイルスは、ノロウイルスと似た症状を起こしますが、感染力はやや低い傾向にあります。細菌性胃腸炎の原因細菌は、カンピロバクター、サルモネラ属菌、腸管出血性大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌やセレウス菌などの毒素型細菌などです。ほかにも、ジアルジア、クリプトスポリジウムなどの原虫による感染もあります。原虫による感染は、日本では稀で、海外渡航先では注意が必要です。

感染性胃腸炎の感染経路を教えてください。

感染性胃腸炎の感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気感染です。なかでも代表的な感染経路は経口感染で、病原体が付着した食品や水を体内に取り入れると感染します。感染性胃腸炎を引き起こす病原体の代表的な原因食品は、次のとおりです。
  • ノロウイルス:生ガキなどの二枚貝
  • カンピロバクター:加熱不十分な鶏肉や食肉
  • 腸管出血性大腸菌:汚染された水や野菜、生肉
  • サルモネラ菌:加熱不十分な鶏肉、生卵
  • 腸炎ビブリオ:生の魚介類
接触感染は、病原体が付着した手や物に触れた後、その手で口や鼻に触れることで感染します。ノロウイルスは感染性がとても強いウイルスです。ウイルスがわずかでも感染するため、感染者の嘔吐物・便の処置後やトイレの後の手洗い不十分が、感染拡大の原因になります。飛沫感染や空気感染の主な病原体はノロウイルスです。ノロウイルスに感染した人が嘔吐や下痢をしたときに、目に見えないほどの小さいウイルスが空気中に飛び散ることがあります。ウイルスの微粒子を吸い込んで感染するケースがあるため、注意が必要です。

感染性胃腸炎にはどのような症状が出ますか?

感染性胃腸炎は、原因となるウイルスや細菌によって症状や重症度に違いがあります。共通する代表的な症状は、下痢、嘔吐、腹痛、発熱、倦怠感、食欲不振などです。ノロウイルスが原因の胃腸炎では、突然の激しい嘔吐や水のような下痢がみられます。熱はあっても軽度で、症状は2〜3日で回復する場合が多いです。ロタウイルスが原因の場合、嘔吐や発熱に加えて、白っぽい便が出ることもあります。ロタウイルスは特に乳幼児に多く、脱水になりやすいので注意が必要です。アデノウイルスが原因の胃腸炎は、下痢が数日から1週間続くことがあります。発熱やのどの痛み、結膜炎を伴うことがあります。

感染性胃腸炎の家族感染は何日くらい注意が必要?

ウィルス

感染性胃腸炎の潜伏期間はどのくらいですか?

感染性胃腸炎は、原因となるウイルスや細菌によって潜伏期間が異なります
  • ノロウイルス:1〜2日
  • ロタウイルス:2〜4日
  • サポウイルス:1〜4日
  • アデノウイルス:3〜10日
  • 腸炎ビブリオ:10〜24時間
  • カンピロバクター:2〜5日
  • サルモネラ:12〜72時間
  • 病原大腸菌(腸管出血性大腸菌以外):12〜72時間
  • 腸管出血性大腸菌:2〜9日

症状が出る前から家族に感染させる可能性はありますか?

ノロウイルスやロタウイルスは潜伏期間中にも、少量のウイルスを排出している可能性があります。特にノロウイルスは感染力がとても高いウイルスです。わずかな量でも感染するため、家族のなかに一人でも胃腸炎の症状が出たら、こまめな手洗いや消毒を心がけましょう。

感染性胃腸炎の家族感染は何日くらい注意が必要ですか?

感染性胃腸炎は、症状が治った後でも、身体の中からウイルスや菌が排出されることがあります。ノロウイルスは、回復後も1週間から1ヶ月近くはウイルスが排出されるといわれ、1週間以上は家族感染に注意が必要です。ロタウイルスの場合は、3週間以上にわたり排出されることがあります。回復後1〜2週間は、オムツ交換や排泄物の処理に注意が必要です。カンピロバクターやサルモネラなどの細菌性胃腸炎の場合でも、症状が治っても数日〜1週間程度は、便中から菌が排出されます。

感染性胃腸炎の治療法や注意点

マスク

感染性胃腸炎で医療機関に行く目安を教えてください。

感染性胃腸炎は、多くの場合、自然治癒がほとんどです。しかし、次のような重い症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう
  • 水分がほとんどとれない
  • 半日以上おしっこが出ていない
  • ぐったりして元気がない
  • 強い腹痛や血便が出た
  • 意識がぼんやりしている、反応が鈍い
  • 嘔吐や下痢が何度も続く
  • 38.5度以上の発熱
乳児ではけいれんを起こす場合があります。乳幼児や高齢者、基礎疾患がある方や妊娠中の方は重症化するリスクが高いため、軽度でも早めの受診が適切です。

医療機関ではどのような治療を行いますか?

感染性胃腸炎の治療は、原因がウイルスか細菌かによって違います。ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性胃腸炎では、抗菌薬は使用しません。治療は原則、症状を和らげる対症療法です。下痢に伴う脱水を起こしている場合には、点滴を行います。下痢止めや鎮痙剤は、病原体が腸内に停滞し毒素を吸収する可能性があるため、使用しません。腸内細菌叢を回復するために、整腸剤や乳酸菌製剤が処方されます。細菌性胃腸炎では、軽症なら対症療法のみですが、症状が重い場合は抗菌薬を使用します。

感染性胃腸炎の家族を看病する場合の注意点を教えてください。

感染性胃腸炎の家族を看病する場合は、感染を広げないようにする対策と、家族の体調管理に注意をする必要があります。ノロウイルスやロタウイルスなどは、感染力がとても強く、家庭内で感染が広がりやすいです。嘔吐物や下痢の処置を行うときは、手袋、マスク、使い捨てのエプロンを着用します。嘔吐や便で汚れた場所は、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が効果的です。家庭では塩素系漂白剤で代用できます。掃除機はウイルスを舞い上がらせてしまうため使用しません。嘔吐物や便を拭き取ったペーパータオル、オムツ類はビニール袋に密封し、速やかに廃棄します。便や嘔吐物が付着した衣類やリネン類は、85度以上の熱水洗濯か、次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)や塩素系漂白剤での消毒が有効です。便や嘔吐物を処置した後や、オムツ交換をした後は、石けんと流水で手をしっかり洗いましょう。タオルや食器類の共有を避けることも重要です。トイレや洗面所を共有する場合はこまめに消毒を行い、定期的に換気しましょう。感染性胃腸炎は数日で自然回復しますが、脱水や重症化に注意が必要です。ぐったりしている、半日以上尿が出ていない、発熱が続く、水分がとれない、血便が出たなどの症状は、脱水や重症化している可能性があるので、医療機関を受診しましょう。

感染しないための手洗いのポイントを教えてください。

ノロウイルスは感染力がとても強く、少量でも感染が広がる可能性があります。石けんと流水による手洗いは、感染予防に有効です。調理を行う前、食事の前、トイレに行った後、感染者の下痢や嘔吐を処理した後、オムツ交換の後、外出から帰宅したときは、しっかりと手洗いを行いましょう。手袋をして処置をした場合でも、手洗いは必要です。感染予防のために、次のポイントを押さえて手洗いを行います。
  • 爪は常に短く切っておく
  • 指輪や時計などの装飾品を外す
  • 石けんを十分に泡立て、ブラシなどを使用して洗う
  • 指先、指の間、爪の間、親指の周り、手首、手の甲など汚れが残りやすいところをしっかりと洗う
  • 流水でしっかりすすぐ
  • 清潔なタオルやペーパータオルで拭く
石けん自体にはウイルスを死滅する効果はありません。石けんや流水による手洗いは、手の皮脂や汚れを落とし、ウイルスが手からはがれやすくなるため感染予防に有効です。

編集部まとめ

医者

感染性胃腸炎は、原因となるウイルスや細菌によって回復後も一定期間、体内から病原体が排出されます。 ノロウイルスは回復後も1週間から1ヶ月程度、ウイルスが便中に排出されるケースがあり、症状が治ってからも1週間は感染に注意が必要です。 特に乳幼児や高齢者と同居している場合は、家族感染を防ぐためにも慎重な対応が求められます。 家庭内での感染を防ぐためには、回復後もしばらくは感染対策を続ける意識を持ちましょう。

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