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「一酸化炭素中毒発症から死亡までの時間」はどれくらい?初期症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/05/11
「一酸化炭素中毒発症から死亡までの時間」はどれくらい?初期症状も解説!【医師監修】

寒い季節になると、石油ストーブやガス機器を使用する機会が増えますが、一酸化炭素中毒の危険性をご存じでしょうか。一酸化炭素は無色・無臭のため気付きにくく、短時間で意識を失い、命に関わることもあります。

本記事では一酸化炭素中毒発症後から死亡までの時間について以下の点を中心にご紹介します。

  • 一酸化炭素中毒について
  • 一酸化炭素中毒の症状
  • 一酸化炭素中毒の検査・治療・予防法

一酸化炭素中毒発症後から死亡までの時間について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

一酸化炭素中毒について

一酸化炭素中毒について

一酸化炭素中毒とはどのような病気ですか?

一酸化炭素中毒とは、一酸化炭素(CO)を含む空気を吸入することで発生する中毒症状です。一酸化炭素は石油ストーブやガス給湯器、木炭・練炭の不完全燃焼、または車の排気ガスが逆流することで発生します。無色・無臭で気付きにくく、知らぬ間に中毒に陥る危険があります。

この気体は血液中のヘモグロビンと強く結合し、酸素の運搬能力を低下させるため、低濃度でも人体に深刻な影響を及ぼします。

一酸化炭素中毒が発生する状況について教えてください

一酸化炭素中毒は、空気中の一酸化炭素(CO)濃度が高まることで発生します。特に換気が不十分な環境で火気を使用するとリスクが高まります。

室内では、石油ストーブやガスストーブなどの暖房器具が不完全燃焼を起こすと一酸化炭素が発生します。密閉された空間では酸素濃度が低下しやすく、中毒の危険性が高まります。また、ガス給湯器や調理器具を使用する際も、換気が不十分だと一酸化炭素が蓄積する恐れがあります。

屋外でも、トンネル工事現場や密閉空間での発電機の使用、車内での排気ガスの逆流などが原因となることがあります。特に冬場は暖房のためにエンジンをかけたままにすると、一酸化炭素が車内に充満する危険があります。

事故を防ぐためには、定期的な換気を行い、不完全燃焼防止装置付きの機器を使用することが重要です。

一酸化炭素中毒になった場合の応急処置を教えてください

一酸化炭素中毒が疑われる場合、迅速な対応が必要です。
まず、救助者は自身の安全性を確保しながら、室内の窓や扉を開けて換気を行い、新鮮な空気を取り入れます。暖房器具やガス機器をすぐに停止し、一酸化炭素の発生を防ぎます。

次に、患者さんを速やかに屋外または換気のよい場所へ移動させ、新鮮な空気を吸わせます。意識の有無を確認し、意識がない場合は回復体位(嘔吐物を誤嚥しないための左側臥位)をとらせ、必要に応じて119番通報を行います。意識がある場合でも、頭痛や吐き気などの症状が続く場合は医療機関を受診してください。

また、一酸化炭素中毒は遅れて脳や神経に影響を及ぼすことがあるため、症状が軽減した後も医師の診察を受けることが重要です。事故を防ぐために、日頃から換気の徹底と正しい方法での機器の使用を心がけましょう。

一酸化炭素中毒の症状

一酸化炭素中毒の症状

一酸化炭素中毒の初期症状を教えてください

一酸化炭素中毒の初期症状として特に多くみられるのは頭痛です。
低濃度の一酸化炭素を吸入した場合でも、軽度の頭痛や耳鳴りが発生することがあります。さらに濃度が上昇すると、吐き気やめまい、疲労感、判断力の低下が現れ、視力の障害や痙攣へと進行することがあります。

一酸化炭素中毒は呼吸困難を伴わないため、初期症状が風邪と似ており、気付きにくい点が特徴です。そのため、症状が続く場合は、速やかに換気を行い、新鮮な空気を吸うことが重要です。

一酸化炭素中毒になった場合、死亡までの時間はどのくらいですか?

一酸化炭素中毒による死亡までの時間は、空気中の一酸化炭素(CO)濃度によって大きく異なります。低濃度であれば数時間かかることもありますが、高濃度ではわずか数分で意識を失い、短時間で死亡することもあります。

例えば、0.16%の濃度では20分程で頭痛やめまい、吐き気が現れ、2時間以内に死亡する可能性があります。0.32%の濃度では5〜10分で症状が進行し、30分で致命的になることがあります。さらに1.28%の濃度では、1〜3分で死亡するとされています。

一酸化炭素は無色・無臭のため気付きにくく、初期症状が風邪と似ているため注意が必要です。

一酸化炭素中毒の後遺症について教えてください

一酸化炭素中毒は、命を取り留めた場合でも後遺症が残ることがあります。
後遺症の発症は、一酸化炭素にさらされた時間や中毒の重症度によって異なりますが、重度の中毒を経験した患者さんでは、長期的な影響が見られることがあります。

典型的な後遺症として、記憶障害や認知機能の低下、抑うつ、運動障害、協調運動障害などが挙げられます。特に”間歇型一酸化炭素中毒”と呼ばれるケースでは、中毒発症から数週間後に精神・神経症状が現れることがあります。この場合、回復が難しく、社会復帰が困難になることもあります。

また、慢性的な頭痛や学習障害、知能障害が残ることもあり、リハビリテーションを通じて機能の回復を目指す必要があります。早期の診断と適切な治療が、後遺症のリスクを軽減するために重要です。

一酸化炭素中毒の検査・治療・予防法

一酸化炭素中毒の検査・治療・予防法

一酸化炭素中毒の検査を教えてください

一酸化炭素中毒の検査は、血液検査と画像検査を組み合わせて行います。
まず、動脈血液分析によって一酸化炭素ヘモグロビン(CO-Hb)の濃度を測定し、中毒の程度を診断します。

次に、脳組織への影響を調べるためにCTやMRI検査を実施することがあります。これは、重症の患者さんにおいて脳の損傷や後遺症の可能性を確認するために重要です。

さらに、診断の際には、患者さんの症状や発生状況も考慮され、暖房器具の使用環境や換気状況などが判断材料となります

早期の診断と適切な治療が後遺症を防ぐために重要であるため、疑わしい場合は速やかに医療機関を受診することが推奨されます。

一酸化炭素中毒の治療法を教えてください

一酸化炭素中毒の治療では、まず患者さんを一酸化炭素が発生している場所から速やかに移動させ、新鮮な空気を吸わせることが重要です。軽度の場合は、新鮮な空気を吸い続けることで症状が改善することがあります。

しかし、重症の場合は酸素投与が必要となります。高濃度の酸素を吸入させる治療が行われ、場合によっては気管挿管を行い、100%の酸素で人工呼吸を行うこともあります。また、遅発性の脳障害を防ぐため、高気圧酸素療法が適用されることもあります。
治療後も症状が残る場合は、定期的な診察を受けることが重要です。

一酸化炭素中毒の予防法を教えてください

一酸化炭素中毒を防ぐためには、こまめな換気と機器の適切な管理が重要です。
室内で石油ストーブやガス機器を使用する際は、1時間に1〜2回は換気を行い、新鮮な空気を取り入れることが推奨されます。窓を対角線上に2箇所開けると、換気できます。

また、暖房器具を使用中に頭痛やめまい、吐き気を感じた場合は、ただちに使用を中止し、換気を行うことが大切です。症状が続く場合は医療機関を受診し、一酸化炭素中毒の可能性を確認してください。

暖房器具や換気装置の定期点検も欠かせません。特に炎の色が赤くなっている場合は、不完全燃焼が発生している可能性があるため注意が必要です。さらに、キャンプ時や雪道での車内滞在時も排気ガスの逆流に注意し、適切な換気を心がけることが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

一酸化炭素中毒は、無色・無臭の気体によって知らぬ間に進行し、短時間で命に関わる危険な状態になることがあります。
暖房器具やガス機器を使用するためのポイントを知り、万が一の際に迅速な対応ができるよう備えましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで一酸化炭素中毒発症後から死亡までの時間についてお伝えしてきました。一酸化炭素中毒発症後から死亡までの時間の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 一酸化炭素中毒は、不完全燃焼により発生する無色・無臭の一酸化炭素を吸入することで起こり、酸素の運搬能力を低下させるため危険であり、換気の徹底と適切な機器の使用が重要である
  • 一酸化炭素中毒は、初期症状として頭痛やめまいが現れ、進行すると意識障害や痙攣を引き起こし、重症化すると死亡や後遺症のリスクが高まるため、早期の対処が重要である
  • 一酸化炭素中毒の診断は血液検査や画像検査で行い、治療は酸素投与が基本であり、予防には定期的な換気や機器の点検が重要で、異常を感じたらすぐに換気と医療機関の受診が必要である

一酸化炭素中毒は気付かぬうちに進行し、短時間で命に関わる危険な状態になることがあります。しかし、適切な知識を持ち、こまめな換気や機器の点検を徹底すれば、防ぐことが可能とされています。
万が一、中毒が疑われた場合は、速やかに換気し、新鮮な空気を取り入れることが大切です。

今回の記事が、一酸化炭素中毒を防ぐための参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師