緑内障は、視神経が障害されることで、視力低下や視野が狭くなっていく病気です。何らかの原因で眼圧が高くなると、視神経が障害され、視野が少しずつ減っていきます。
視神経が障害されると回復は難しく、見えなくなった視野も元には戻りません。そのため、早期の発見と治療が必要です。
しかし、緑内障は自覚症状に乏しく、気付いたときには進行していることが少なくありません。以下では、緑内障になりやすい人の特徴や原因、初期症状や治療法を紹介します。
プロフィールをもっと見る
東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。
緑内障になりやすい人の特徴・原因
緑内障の種類について教えてください。
緑内障には、原発緑内障と続発緑内障があります。原発緑内障は、原因となるような疾患や症状が認められない緑内障です。続発緑内障は、全身疾患や眼疾患など何らかの原因で眼圧が高くなって発症します。また、緑内障は、閉塞隅角緑内障と開放隅角緑内障に分けられます。目の中にある水の出口を隅角(ぐうかく)、目の中の水を房水(ぼうすい)と呼びます。房水の役割は、角膜や水晶体などに酸素や栄養を供給し、老廃物を隅角から出すことです。閉塞隅角緑内障になると、隅角が狭くなったり塞がったりするため、水の排出がうまくいかず眼圧が上昇します。開放隅角緑内障では隅角は開いているものの、房水が流れる通路が詰まり眼圧が上昇します。
緑内障になりやすい人の特徴を教えてください。
緑内障は、
40歳以上の約5%が罹患しています。特に、以下のような特徴を持つ方が発症リスクが高いとされています。
- 高齢
- 家族歴
- 偏頭痛
- 高血圧
- 低血圧
- 糖尿病
- 近視
- 睡眠時無呼吸症
睡眠時無呼吸症候群は、無呼吸発作時に気道が閉塞するため息が吸えなくなるのが特徴です。息が吸えなくなるため、胸腔内圧は下がり、平常時よりも眼圧が下がります。同時に血中の酸素飽和度も下がるため、脳内が低酸素状態になり視神経が障害されると考えられています。
緑内障の原因はどのようなものでしょうか?
緑内障の
確かな原因はわかっていません。眼圧が高くない方でも緑内障になっている患者さんはいます。眼圧の高さ以外に考えられている原因は以下のとおりです。
- 視神経が弱い
- 血流が少ない
- 免疫の異常
- 全身疾患
- 眼疾患
- 薬物
緑内障は眼圧が高い状態が続くことで、視神経が障害されて徐々に症状が現れます。眼圧は目のなかの圧力のことで、房水が一定量作られて排出されることで眼圧は保たれます。しかし、房水が作られ過ぎたり排出量が減ったりすると、房水が増えるため眼圧が上昇するのです。一般的に眼圧は10〜20mmHgです。しかし、緑内障では上記のような原因で20mmHgを超えるような眼圧が続き、視神経に影響がおよぶと考えられています。
緑内障になりやすい目の形・構造はありますか?
緑内障になりやすいのは、角膜が薄い目や隅角が狭い目です。角膜が薄いと目の疾患になるリスクが上がるとされています。また、隅角が狭い目も房水の排出量が少なくなる可能性があるため、緑内障になりやすいと考えられます。
緑内障の初期症状・治療法
初期症状にはどのようなものがありますか?
初期は自覚できる症状が乏しいため、知らない間に症状が進行している場合が少なくありません。開放隅角緑内障は、眼圧が正常値より少し高くなる程度のため、症状を自覚する方は少ないでしょう。進行が初期や中期の頃に視野検査を行った場合でも、検査で見えにくい部分はわかります。しかし、見えにくい部分があることを自覚している患者さんは少ないです。閉塞隅角緑内障の眼圧も、ほとんど正常な場合が多いため、自覚症状はほとんどないでしょう。しかし、急性に発症するものでは、眼圧が40〜80mmHgまで急激に上がることがあります。その際には、視力低下・霧視・虹視症・眼痛・頭痛・充血・かすみ・嘔吐などの症状が生じます。この状態が続くと、視野障害が急速に進んでしまうため、すぐに治療を受けるようにしましょう。
緑内障の検査方法を教えてください。
視力検査・細隙灯顕微鏡検査・眼圧検査・隅角検査・眼底検査・視野検査などが行われます。視力検査は、遠視・近視・乱視の有無を調べる検査です。細隙灯顕微鏡検査は、眼球に細隙灯を照射し角膜や水晶体、網膜などの異常がわかる検査です。眼圧検査では、目の硬さを調べます。隅角検査は、開放隅角か閉塞隅角かの判断や隅角に堆積物がないかを調べる検査です。眼底検査は網膜を診て、視神経の状態を判断するために行います。眼圧が正常な緑内障では、眼底検査による視神経の障害所見が緑内障発見のきっかけになっているケースが少なくありません。視野検査は見える範囲を調べ、緑内障の進行状況を判定する検査です。
緑内障の治療はどのように行いますか?
緑内障の治療には、薬物治療・レーザー治療・手術治療の3つがあります。開放隅角緑内障の治療では、薬物治療が第一選択です。薬物治療は、眼圧を下げるための点眼薬を使った治療法です。眼圧を下げる点眼薬は数多くありますが、まずはプロスタノイド受容体関連薬の一種類から始めます。有効性が乏しい場合には、点眼薬を追加したり点眼薬を変更したりして、適宜状態を観察していきます。点眼薬で眼圧が下がらない場合や視野障害が進行している場合には、レーザー治療や手術が行われるでしょう。手術では、房水を排出する通路を開いたり、別の出口を作ったりします。手術で眼圧は下がりますが、合併症も少なくないため、注意が必要です。
セルフチェックの方法を教えてください。
視力と視野のセルフチェック法を紹介します。新聞や本などの文字を読みにくいと感じた場合、視力が低下している可能性があります。視力のセルフチェック法では、視力検査で使う視力表で片目ずつ視力検査を行ってみましょう。視力表は、インターネットからダウンロードできます。また、視野のセルフチェック法では、アムスラーチャートを用いた検査があります。アムスラーチャートは、方眼紙のように碁盤の目になっている表の真ん中に丸い点が書いてあるシートです。眼鏡やコンタクトレンズを装用している方は、かけたまま行いましょう。片目ずつ行い、もう片方の目は閉じたり手で隠したりして見えないようにします。そして、シートとは30cmほど離れた所から、中央の丸い点を見つめます。見た際に線が歪む・中心が見えない・一部が欠けるなど、見え方に異常がある場合には、眼科を受診して詳しく検査してもらいましょう。インターネット上にも、セルフチェックが行えるサイトがあり、視力・視野ともに簡易的にチェックが行えます。気軽に行えるため緑内障の早期発見のためにも一度行ってみることをおすすめします。
緑内障の予防方法
緑内障を予防する方法はありますか?
現在のところ、緑内障の発症を予防する方法はないため、発症した際に進行させないことが重要です。緑内障は少しずつ視野が狭くなるため、気付いたときには進行しているケースが少なくありません。進行させないためには、早期の発見と治療が大切です。緑内障は40歳以上の5%が罹患しており、70歳以上では10%の方が罹患しています。緑内障は失明する可能性がある疾患です。そのため、視力の低下や見え方に違和感を覚えた際は、早めに眼科を受診しましょう。また、40歳を超えると緑内障になる方が増えるため、40歳を超えたら眼底検査を含んだ各種検査を受けることをおすすめします。人間ドック・定期検診・自治体の特定健診などで眼底検査は受けられます。ただし、眼底検査はすべての健診で行っている検査ではないため、眼底検査を行ってくれる健診を受けるようにしましょう。緑内障はゆっくり進行するため、頻繁に検査を受ける必要はありません。ただし、定期的な検診や違和感を覚えた際に眼科を受診すると、緑内障を発見するきっかけになる可能性はあります。健診で異常がみつからなかった場合も、定期的に検査を受けるようにしましょう。
緑内障のリスクが高くなる生活習慣を教えてください。
緑内障のリスクが高くなる生活習慣は、明らかになっていません。ただし、喫煙・糖尿病・高血圧・肥満などは、眼圧を上げる可能性があるため注意が必要です。糖尿病・高血圧・肥満などは、生活習慣を見直すことで改善が望めます。バランスのよい食事・適度な運動を心がけ、眼圧の上昇を抑えられると、緑内障の予防につながるでしょう。
編集部まとめ
緑内障は、視神経が障害されることで、視野や視力に異常が出る疾患です。高齢・家族歴・偏頭痛・高血圧・糖尿病・近視・睡眠時無呼吸症候群などの方が、緑内障になりやすいと考えられています。
緑内障は自覚症状に乏しく、気付いた際には進行していることが少なくない疾患です。そのため、早期発見・早期治療が重要になり、早期発見のためにセルフチェックや健診があります。
気になる症状や見え方に違和感を覚えた際には、早期に眼科を受診しましょう。