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【体験談】「まさか私が悪性リンパ腫に…」 若さと健康への過信は禁物

 更新日:2023/03/27
【体験談】「まさか私が悪性リンパ腫に…」 若さと健康への過信は禁物

「両鎖骨付近のリンパがゴルフボールくらいの大きさになっていた」と語るのは、大学在学中に、20歳で悪性リンパ腫の診断を受けた初夏(仮称)さん。彼女の病気が発覚するまでの経緯や当時の心境、実際に受けた治療内容や現在の体調など、闘病中のリアルを聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年10月取材。

初夏さん

体験者プロフィール
初夏(仮称)

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関東在住。2001年生まれ。大学の臨床検査学科に在籍。将来がん細胞を見つける細胞検査技師になるため勉強に励んでいた。2021年6月、20歳で「悪性リンパ腫」(ホジキンリンパ腫)と宣告される。心臓付近に巨大腫瘍、左右の鎖骨に4cm程度の転移腫瘍、計3箇所の腫瘍が見つかり、ステージ2限局期と医師から告げられる。治療に専念するために大学は休学中。現在は、Instagramで初夏(@uka_happyday)の名前で自身の闘病生活を発信している。

原田 介斗

記事監修医師
原田 介斗
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

まさかがんとは思ってもいなかった

まさかがんとは思ってもいなかった

編集部編集部

ご自身の病気「悪性リンパ腫」について、説明してもらえますか?

初夏さん初夏さん

悪性リンパ腫は血液のがんで、白血球の中のリンパ球ががんへと変化することでおこります。日本では10万人に10人の確率で発症するといわれる珍しい病気です。「悪性リンパ腫」はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分かれ、それぞれ1:9の割合です。手術で腫瘍を取り除くのではなく、化学療法と放射線治療で寛解を目指すことが多いです。

編集部編集部

悪性リンパ腫と判明した経緯について教えてください。

初夏さん初夏さん

2021年4月に、大学で年に一度の健康診断があったのですが、その1ヶ月後に健康診断の結果が届き「心臓の大動脈走行異常の疑い」と診断されました。2週間後に、近くの内科で診てもらいましたが「詳しいことは分からない」と言われました。

編集部編集部

怖いフレーズですね。

初夏さん初夏さん

その後大きな病院で検査をしました。すると心臓に覆いかぶさっている、約10cmもの縦隔腫瘍が見つかったのです。すぐに都内のより詳しく診てもらえる病院で検査をした結果、悪性リンパ腫と診断されました。4日後の20歳の誕生日に緊急入院をして、そのまま約3週間入院生活となりました。

編集部編集部

はじめにカラダに起きた異変、初期症状はどのようなものでしたか?

初夏さん初夏さん

悪性リンパ腫が見つかる10か月前(2020年8月)から、原因不明の猛烈な皮膚の痒みに襲われていましたね。色んな皮膚科や大学病院に行きましたが湿疹扱いでした。また2020年12月には39℃を超える原因不明の高熱が出たのです。PCR検査は陰性で、内科では風邪と診断されましたが、7日間連続で熱が続き、一度回復して2日学校へ行くも、8日間連続でまた高熱がでました。

編集部編集部

長い間大変な時期が続いたのですね。

初夏さん初夏さん

後に分かったのですが、高熱の正体は腫瘍熱でした。この頃から倦怠感があり、以前と睡眠時間は変わらないのに学校の授業で寝てしまうことが多くなりました。そして2021年4月に両鎖骨付近のリンパがゴルフボールくらいの大きさになり、脇下のリンパもビー玉程度の大きさに腫れました。毎日リンパマッサージしていましたが、日々大きくなっていくリンパに気付いていなかったんです。一度「あれ? 大きいな」と思ったことはあったのですが、みんなこんなもんだろうと思ってそのままにしてしまいました。

編集部編集部

悪性リンパ腫が判明したときの心境について教えてください。

初夏さん初夏さん

悪性リンパ腫と診断された時は頭が真っ白になって何も考えられませんでした。隣で母の足がガタガタと震え出すのが視界に入って、そこでやっとことの重大さに気づきました。「私はもう死ぬんだ」という恐怖でいっぱいになり、初めて「死にたくない」という感情で泣きました。診断後、5年生存率や予後、ステージなどをネットで沢山調べてより不安が増しました。人生で1番泣き、人生で1番悲しい日になりました。しかし「まだ腫瘍が見つかっただけで良性腫瘍かもしれない!」と期待していました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

初夏さん初夏さん

「BV-AVD療法」を6クール行い、その後1ヶ月放射線治療を行うとのことでした。悪性リンパ腫(特にホジキンリンパ腫)は予後も良く、適切な治療を行えばその後は基本的には生活に支障なく過ごせると説明を受け、安心しました。

闘病生活のリアル

闘病生活のリアル

編集部編集部

悪性リンパ腫になってから一番辛かったことを教えてください。

初夏さん初夏さん

周りの友達は夢に向かって頑張っていて、楽しく過ごしているのに、自分は抗がん剤の副作用で寝てばかり。ずっと同じ場所で立ち止まっているのが孤独で本当に辛かったです。

編集部編集部

悪性リンパ腫になってから、生活にはどのような変化がありましたか?

初夏さん初夏さん

「一分一秒を大切に生きよう」とより感じました。一度死にかけたことで、命の尊さをより実感しました。今日会った人がもしかしたら帰らぬ人になってしまうかもしれない。だからこそ、後悔のないように人と接していこう、毎日を大切にしていこうと思いました。

編集部編集部

薬の副作用などはありますか? ある場合、その薬名も教えてください。

初夏さん初夏さん

抗がん剤にドキソルビシンという薬があるのですが、投与後1週間程度は激しい気持ち悪さで寝込んでしまいました。また、副作用で免疫力が下がった後の身体が頑張っている時期には、背骨が数日痛くなりましたね。水が甘く感じたり、辛いものを食べても辛さを感じなかったり、味覚障害もあります。体調が悪い時は食欲も低下し、体重が3.5kg程減ってしまいました。

編集部編集部

セカンドオピニオン(担当医とは違う医療機関の医師に第2の意見をあおぐこと)は受けられましたか?

初夏さん初夏さん

セカンドオピニオンは受けていません。腫瘍が巨大だったこともあり、早く治したい気持ちでいっぱいだったのでセカンドオピニオンは考えませんでした。できるだけ早く治療をしたかったので。

編集部編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

初夏さん初夏さん

周りの人達の温かい言葉です。言葉の一つ一つに愛を感じ、治療を頑張ろうと前向きな気持ちになれます。病気で同じように苦しい経験をされている仲間からも熱いメッセージが届き、とても救われています。”苦しんでいるのは私だけじゃない”と強くなれます。

異変を感じたらすぐ受診してほしい

異変を感じたらすぐ受診してほしい

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

初夏さん初夏さん

「何か小さな異変を感じたらすぐに病院へ行って」と言いたいです。私は鎖骨のリンパが大きくなっている事に一度気づいたのに、気のせいだと思い、そのままにしてしまいました。あのとき異変を感じて病院に行っていれば、早期発見ができたかもしれません。自分の身体を過信せず、疑うことが大切だと思います。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

初夏さん初夏さん

現在は2週間に一度抗がん剤を外来で打っているのですが、その後1週間は体調が悪く寝込んでいます。副作用が切れると食欲も戻り、元気に過ごせているのですが。自分でもおどろくほどに、体調が悪いときと元気なときとの差が激しいです。抗がん剤を打った次の週の平日は毎日、副作用で低下している白血球を上げる注射を打ちに病院へ通っています。

編集部編集部

悪性リンパ腫を意識していない人にひとことお願いします。

初夏さん初夏さん

私の親戚にがんにかかった人はいません。しかも超健康家系で育ったので、まさか若い自分ががんになるとは思ってもいませんでした。悪性リンパ腫は若くして罹患する方も多く、遺伝で発症する訳はありません。「どんな人でもがんになるリスクがある」ということを知って欲しいです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

初夏さん初夏さん

私の血管が細かったため、注射時に抗がん剤が漏れ、左腕の肘と手首の曲げ伸ばしが出来なくなってしまいました。それは仕方の無いことだけれど、そのあとに看護師さんがCVポートを勧めてきたので「それなら初めからCVポートをつかっていれば左手に支障をきたすことはなかったのに」と思っています。もう少し未来のことを予測して行動していただきたかったです。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

初夏さん初夏さん

身体に少しでも異変を感じたら、すぐに病院へ行ってください。若い人も自分の身体に気を使ってほしいです。早期発見がその後の人生を左右します。異変に一度気づいたのに「どうせなんともないだろう」と思い、放っておくと後で必ず苦しい目に遭います。この記事を読んでいただいた方にこの思いが届きますように。私のような辛い思いをする方が少しでも減ることを願っています。

編集部まとめ

健康的な生活を送っていた初夏さんだからこそ、まさか自分が20歳で悪性リンパ腫になるなんて思ってもいなかったとでしょう。悪性リンパ腫の初期症状は、リンパの軽度の腫れやかゆみ、発熱など、日常でも起こりえる症状のため、発見が遅くなってしまいがちです。少しの異変を見逃さず、違和感を覚えたらすぐに受診すべきでしょう。

この記事の監修医師