同じ汗なのに、なぜワキの汗だけが強く臭う人がいるのか、臭う人と臭わない人がいるのはなぜなのか気になっていませんか。
ワキガの原因は汗だけではありません。ワキガの臭いはアポクリン汗腺から出る汗と皮膚の細菌が反応すると発生します。遺伝や生活習慣など、複数の要因が関係しているため、単純に汗だけが原因ではありません。
この記事では、ワキガの原因を詳しく解説しながら、臭いを防ぐ方法や治療法もご紹介します。ワキガかもしれないと悩む方に大いに役立ちますので、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科
ワキガについて
ワキガとはどのようなものですか?
腋臭症(えきしゅうしょう)、いわゆるワキガとは、腋(わき)の下から特有の臭いが発生する状態のことです。この臭いはアポクリン汗腺という汗を出す部分が原因とされ、分泌される汗に含まれる脂質やたんぱく質が皮膚表面の細菌によって分解すると、特有の臭いが生じます。臭いは酸っぱいとか、玉ねぎのようなどと表現されることが一般的です。ワキガは遺伝と深い関係があります。アポクリン汗腺の数や活動の強さが遺伝によって決まるため、親がワキガの場合、子どももその傾向を引き継ぐ可能性が高いです。また、体質によって汗腺の働きが強くなりやすい人もいます。思春期にはホルモンの影響でアポクリン汗腺が活発化し、臭いが目立つようになる場合があります。脂っこい食べ物や香辛料を多く摂ると臭いが強まるなど、生活習慣や食事内容も関係するので注意しましょう。清潔を保ち、適切なケアを心がければ、臭いを軽減することが可能です。
ワキガはどのような臭いがしますか?
ワキガの臭いは、約9割の方が次の順に分けられます。
- ミルク様臭(M型)
- 酸様臭(A型)
- カレースパイス様臭(C型)
個人差があるものの、一般的には酸っぱいとか玉ねぎのよう、スパイシーなどと表現されることがほとんどです。この臭いは、アポクリン汗腺から分泌される汗に含まれる脂肪酸やたんぱく質が、皮膚表面の細菌によって分解される過程で発生します。湿度が高い環境や運動後など、汗を多くかく状況では臭いが強くなりやすいです。また、食事の内容やストレスの影響も臭いの強さに関係しています。ワキガの臭いは自分自身では認識しづらいこともあり、周囲から指摘を受けるまで気付かない場合もあります。このような特性を理解し、適切なケアを行うことが大切です。
ワキガは自分では気付きにくいと聞いたのですが……。
ワキガは自分自身では気付きにくいとされています。主な理由は、長時間同じ臭いを嗅ぎ続けて感覚が麻痺してしまい、自分の体臭に気付けなくなる嗅覚疲労です。ワキガの臭いは、運動後や緊張時には汗の分泌量が増えるため臭いがより強くなり、リラックスした状態では臭いが目立ちにくいなど状況やタイミングによって強さが変化します。自分で判断するのが難しいため、周囲の人に気付かれるまで放置されるケースも少なくありません。自己チェックを行いたい場合は、市販されているワキガ検知キットを使用するのもよいでしょう。定期的なセルフケアとともに、第三者の意見を参考にして、早めに対処しましょう。
ワキガの原因
ワキガの原因を教えてください。
ワキガの主な原因は、アポクリン汗腺から分泌される汗と、その汗を分解する皮膚表面の細菌の相互作用です。アポクリン汗腺の分泌物には脂質やたんぱく質などの成分が多く含まれ、皮膚上の細菌により分解される際に、特有の臭いが発生します。また、アポクリン汗腺の数や働きは遺伝的要因や、ホルモンバランス・食生活・ストレスなどの外的要因も臭いの強さに関与します。
アポクリン汗腺がワキガと関係あると聞いたのですが……。
アポクリン汗腺はワキガの主な原因の一つです。この汗腺は腋の下や耳の周辺など、特定の部位に集中して存在しており、汗とともに脂質やたんぱく質が分泌されます。汗そのものは無臭ですが、汗に含まれる脂質やタンパク質が皮膚上の細菌に分解される過程で、ワキガ特有の臭いが発生します。アポクリン汗腺の活動が活発になるのは思春期以降です。ホルモンの変化が働きに影響を与えます。アポクリン汗腺の数や大きさには個人差があり、臭いの強弱に関係しています。
清潔にしていないとワキガになりますか?
清潔にしていないこと自体がワキガの原因ではありません。しかし、不潔にしていると皮膚表面の細菌が増殖しやすくなり、結果的に臭いが強くなることがあります。ワキガの原因となるアポクリン汗腺の分泌物は、細菌によって分解されることで臭いを発生させるため、臭いを軽減する対策は細菌の量を減らすことです。ワキガの対処法は、定期的な入浴や制汗剤の使用、衣類のこまめな交換が効果的です。また、脂っぽい食事を減らす食生活やストレスをためないことも、臭いを抑えるのに役立ちます。清潔な状態を保つことは、ワキガの臭いを防ぐための基本的な対策です。
後天的にワキガになる可能性はありますか?
一般的には、ワキガは遺伝的要因が大きく影響します。ただし、ワキガ体質ではない場合でも、稀にワキガ臭が強くなることがあります。これが
後天性ワキガです。後天性ワキガの原因は次のとおりです。
- ストレスや疲労
- 脂質や香辛料が豊富な食生活
- 頻繁な飲酒・喫煙
- 運動不足
ホルモンバランスの変化・生活習慣・ストレス・香辛料や脂質を多く含む食事などにより、アポクリン汗腺の活動が活発になり、突然ワキガになることがあります。また、不適切な清潔習慣や感染症も臭いの強さの要因の一つです。また、年齢とともに皮脂の分泌が増えることで汗と皮脂が混ざり合い、臭いが悪化する場合もあります。後天性ワキガは、これらの原因を解消することで症状を軽減することができます。
ワキガの臭いを防ぐには?
ワキガの臭いを防ぐ対処法を教えてください。
ワキガの臭いを防ぐには、皮膚表面の細菌を減らすために、身体を清潔に保ちましょう。入浴時には殺菌効果のある石鹸を使用し、特に汗をかきやすい部位を丁寧に洗います。また、制汗剤やデオドラント製品を活用すると、汗の分泌や細菌の繁殖を抑えられるので積極的に利用しましょう。ワキの汗はこまめに拭いて臭いを抑え、ワキの毛は常にきちんと処理して細菌が繁殖しないようにしましょう。衣類は通気性のよいものを選び、汗を吸収しやすい素材を着用すると効果的です。
ワキガにならないために注意することを教えてください。
ワキガを予防するには、体質的な要因以外に生活習慣を整えることが必要です。脂質や香辛料が豊富な食品は汗腺の働きを活発にし、臭いの原因となる成分を増やす可能性があるので控えましょう。アルコールやニコチンは汗腺を刺激するため、飲酒や喫煙も控えた方がよいです。規則正しい生活リズムを維持し、十分な睡眠を取って、ホルモンバランスを整えることも予防につながります。適度な運動で代謝を促進して体内の老廃物をスムーズに排出し、ストレスを溜めないのも大切です。ストレスは汗の質が悪化するため、リラクゼーションや趣味の時間を持ちましょう。生活習慣を見直し、小さな改善を積み重ねて、ワキガを予防しましょう。
ワキガの完治には手術が必要ですか?
ワキガの完治には手術が必要となる場合がありますが、症状の程度や個人の状態によって異なります。手術の必要性や方法は、形成外科の医師の自覚症状と他覚症状による総合的な判断です。自覚症状とは、患者さん自身が感じる臭いや不快感のことであり、日常生活に支障をきたすレベルかどうかがポイントです。他覚症状は、医師や家族、第三者が確認できる臭いの強さや範囲を指します。自覚症状が強い場合でも他覚症状が軽度であれば、レーザー治療や生活改善など、手術以外の治療法で十分なケースもあります。他覚症状が強い場合には、根本的な治療を目指して手術を検討することが望ましいでしょう。医師と十分に相談し、症状の程度やライフスタイルに合った治療法を選ぶことが大切です。自己判断に頼らず、医師の診断を受けて、適切な治療法を見つけましょう。
編集部まとめ
ワキガの原因は、アポクリン汗腺から分泌される汗と、汗を分解する細菌が関係しています。
大半は遺伝的要因ですが、ホルモンバランスや生活習慣、食事内容も臭いの強さに影響を与えます。自分で臭いに気付くことが難しいため、症状が気になる場合は形成外科や皮膚科などの医療機関を受診しましょう。
臭いを防ぐには、身体を清潔にして制汗剤やデオドラント製品を使い、通気性のよい衣類を着用するようにしましょう。脂っこい食品や香辛料を控えた食生活も効果的です。
治療は、軽度なら生活習慣の改善や非手術的な方法で対応できますが、根本的に解消するには手術が必要になることがあります。適切な治療法は、医師による自覚症状と他覚症状の総合的な判断です。適切なケアと治療で悩みを軽減できるので、まずは医師に相談してみましょう。