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「ノロウイルスの検査方法」はご存知ですか?費用や予防法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/11/23
「ノロウイルスの検査方法」はご存知ですか?費用や予防法も解説!【医師監修】

ノロウイルスは感染性胃腸炎の1つで、嘔吐・下痢・発熱などが生じます。多くの場合、軽症ですが、乳幼児や高齢者では重症化する恐れもある病気です。

ノロウイルスは1年を通して発生しますが、特に冬場に感染者が増加します。症状や感染状況などから診断を下すことは少なくないですが、検査でウイルスを特定する場合もあります。

以下で、ノロウイルスの検査方法や検査方法による感度の違い、費用などを紹介します。ノロウイルスの検査を受ける際の参考になれば幸いです。

眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
 

ノロウイルス検査方法

検便に使用する採便容器

年齢によってなりやすさはありますか?

ノロウイルスによって嘔吐や下痢などが生じる病気です。食品中では増加せず、人にのみ感染するのが特徴です。ウイルス自体の感染力は強く、一年を通して感染する可能性があります。特に、11〜2月の冬の時期に感染者が増加する傾向にあります。ノロウイルスは経口感染や接触感染、飛沫感染で広がっていくのが特徴です。ノロウイルスに汚染された手指や食品などから経口感染し、人の体内で増殖します。感染した方の下痢や嘔吐物にはウイルスが多く含まれており、これを直接触ってしまい感染するのが接触感染です。また、感染者が排便後に感染対策を行わずに触れたものを通して感染する場合もあります。感染者が嘔吐した際に、近くにいてウイルスを含んだ飛沫を吸ってしまい感染するのが飛沫感染です。経口感染が主な原因とされています。

ノロウイルス検査方法について教えてください。

検査には、抗原検査と遺伝子検査があります。抗原検査は、検査キットで糞便に含まれているノロウイルスを検出する方法です。医師が検査を必要と判断した場合に行われます。ノロウイルスに感染している場合にも陽性と出ることがあるため、注意が必要です。ほかには、以下のようなウイルス学的な検査があります。

  • RT-nested PCR
  • RT-リアルタイム PCR
  • ELISA法
  • 電子顕微鏡

RT-nested PCRは、増幅がうまくいかないときや似た配列が多いときなどに行われる方法です。PCRを2段階行うため、高い特異性が得られます。RT-リアルタイム PCRは、PCRで増幅させたDNAを発光させ、それを光学機器で検出する方法です。感度が高く、定量分析が行えます。ELISA法は、対象のウイルス粒子を構成しているたんぱく質の抗体を使って、ウイルスを検出する方法です。多くの分野で使われています。電子顕微鏡では、ウイルスの表面や断面の状態、内部構造の観察などが可能です。感度はほかの検査に比べ低くなりますが、迅速な診断が行えます。一般的に、これらの検査は行政機関や研究機関などで原因究明のために行われるでしょう。

検査方法によって感度の違いはありますか?

検査方法によって感度は違います。上記で挙げた検査法は、陽性と出るために必要な検体のウイルス量が異なります。検体1mL中にRT-nested PCRでは100〜1000個、RT-リアルタイムPCRでは100〜1万個程必要です。ELISA法・電子顕微鏡は100万個程必要です。必要なウイルス量が少ない検査の方が感度は高くなります。

ノロウイルス検査の費用はいくらかかりますか?

一般的な病院ではまずは抗原検査の対応となります。病院によって費用は微妙に異なりますが、数千円程かかります。保険が適用される方は負担額に応じて異なります。保険適用になる方は以下のとおりです。

  • 3歳未満の方
  • 65歳以上の方
  • 悪性腫瘍の診断が確定している方
  • 臓器移植した後の方
  • 抗がん剤や免疫抑制剤など、免疫抑制効果のある薬を投与中の方

以上に該当しない方は、全額自己負担となり、3,300〜5,500円(税込)程かかります。検査料以外にも、診察料・薬代・診断書が必要な方は文書料なども全額自己負担です。

ノロウイルスの症状・治療方法

トイレで嘔吐する女性

ノロウイルスの原因について教えてください。

原因は、ノロウイルスに感染した食品や水などの摂取が考えられます。食品を扱っている方を介しての感染や食品自体の加熱不足が原因の場合があります。食品自体からウイルスを検出するのは困難で、ノロウイルスの食中毒では、7割程のケースで原因の食品が特定できていません。特定されている食品に牡蠣やあさりなどの二枚貝があります。これらの食品がノロウイルスに汚染される原因は、ノロウイルスに感染した方が排泄したノロウイルスの一部が河川に流れ込むためです。植物性プランクトンを餌にしている二枚貝が、ノロウイルスが付着しているプランクトンを食べることで、内臓にノロウイルスが溜め込まれます。この二枚貝を生や加熱不十分な状態で食べることで、ノロウイルスに感染します。

ノロウイルスの症状にはどのようなものがありますか?

吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・発熱などが生じます。感染後、24〜48時間で今挙げた症状が現れ、1〜2日で治癒するでしょう。感染しても症状が出ない方や軽い症状で済む方もいます。ただし、乳幼児・高齢者・持病がある方は重症化する場合もあるため、注意が必要です。

ノロウイルスはどのように診断しますか?

症状や感染状況、検査などから総合的に判断し、ノロウイルスが原因と仮定して診療が行われます。検査は、検査方法で挙げたノロウイルス抗原検査やRT-リアルタイム PCR法などが使われます。確定診断は、RT-リアルタイム PCR法で行われるでしょう。

ノロウイルスの治療方法を教えてください。

治療方法は対症療法です。ノロウイルスに対する特効薬はなく、症状に応じた対症療法が行われます。嘔吐や下痢が続くと脱水症状になる可能性が高くなるため、注意が必要です。乳幼児や高齢者では、喉の渇きを自覚しにくいために脱水症状や体力が消耗します。ノロウイルスに罹患すると、飲食をする気持ちにはなりにくいですが、こまめな水分摂取や食べられる食品で栄養摂取を心がけましょう。脱水症状がひどい場合には、医療機関で点滴を行うなどの治療が必要になってきます。また、下痢が続く際に下痢止めを服用してしまうとウイルスが体外に排出されないため、症状がなかなか改善しない場合もあります。下痢止めの服用は自己で判断せず、下痢や嘔吐などノロウイルスを疑う症状が出た際には、医療機関で受診しましょう。

ノロウイルスの流行時期・予防方法

手洗い消毒イメージ

ノロウイルスが流行する時期はいつですか?

11〜2月の冬の時期に感染者が増加する傾向にあります。ノロウイルスによる食中毒は1年を通して発生しています。11月頃から増加し、12月・翌年の1月がピークです。

ノロウイルスの予防方法を教えてください。

予防のポイントは以下の4点です。

  • 持ち込まない
  • つけない
  • やっつける
  • ひろげない

持ち込まないとは、調理した方からの感染を防ぐため調理場にノロウイルスを持ち込まないことを指します。調理をする方は普段から手洗いや健康状態に気を遣い、体調が優れない際には調理を行わないなど、持ち込まないように心がけましょう。次に、つけないは食器や調理器具などにノロウイルスをつけないことです。そのためにも、調理前や作業が変わる際には手洗いを行い、衛生管理を徹底しましょう。やっつけるとは、食品や調理器具などに付着したノロウイルスを死滅させることです。ウイルスは熱に弱いため、食品の中心温度を85〜90度で90秒以上加熱すると、ウイルスの感染性が失われるとされています。使った調理器具は、洗剤で洗った後に85度以上の熱湯で1分以上加熱、もしくは塩素消毒液で消毒するのが効果的です。ひろげないは、二次感染が起こらない対策を指します。感染者が使用した食器や環境などの消毒、嘔吐物の処理の対策が重要です。感染者が使った食器や嘔吐物が付着したものは、個別に洗浄し消毒します。ほかにもカーテンや衣類などの洗濯も熱水や高温の乾燥機などを使うことで、殺菌効果が高くなります。また、ドアノブの消毒も忘れずに行いましょう。加えて、嘔吐物やおむつの処理にも注意が必要です。処理する際には、直接触れないように使い捨てのガウンや手袋、マスクなどを着用しましょう。嘔吐物が乾燥する前に除去し、その場も塩素消毒液で消毒して拭き取ります。処理が終わったら、空気の流れに注意して部屋内の換気を行いましょう。

編集部まとめ

診察をする医師
ノロウイルスの検査方法や検査方法による感度の違い、費用などを紹介しました。

ノロウイルスでは、抗原検査・RT-PCR・ELISA法・電子顕微鏡などの方法で検査が行われ、各検査で検出感度は異なります。

ノロウイルスでは、症状や感染状況で診断するケースが多く、必ずしも検査を行うわけではありません。

集団感染による原因の確定や仕事や学校などの都合で確定診断が必要な際には検査を行います。ノロウイルスの症状が出た際には、病院を受診し、確定診断が必要であれば医師に相談しましょう。

この記事の監修医師